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2012年04月11日

日本IBM・スルガ銀事件の閲覧謄写制限

 2012年3月29日、勘定系システム開発の失敗は日本IBMにあるとして損害賠償を求めていた事件で、東京地裁は、日本IBMに対し、約74億円の損害賠償を命ずる判決を下した(新聞報道)。

 4月10日に東京地裁に問い合わせたところ、訴訟記録の謄写ができない制限が掛けられているとのことで、判決書の内容を直接検討することができない。一部報道によると、日本IBMの不法行為を肯定したとされているが、システム開発という本体的な請負契約の債務不履行の問題であるのか、説明義務違反あるいは同請負契約に附随する附随義務違反の問題であるのか、さらには、一般的不法行為の問題であるのか詳細が不明である。

 一般的に、システム開発を行う場合には、対象企業の組織、権限、業務内容、処理手順、システム、製品情報、顧客情報等極めて重要な機密事項を含めた業務分析が不可欠であり、その結果、判決書に同機密情報についても判示されている部分があるのは十分に想定される。
 しかしながら、システム開発を巡るトラブルは極めて多いものの、訴訟にまで至っているのは、極めて例外的なものである。同じ失敗が繰り返されないためにも、また、開発ベンダーとして尽くすべき注意義務の内容を明確化するためにも、閲覧謄写制限は同機密情報部分のみに限定し、それ以外の事実認定や法規範部分については、広く一般的に公開されるべきであり、それが裁判の公開原則の趣旨にも叶うものである。

 システム開発ベンダーとしてどうあるべきであるのか、また、発注者としてどう行動すべきであったか等を含め、法律家のみならず、学者や産業界を含め幅広い議論が行われ、また、叡知を結集するためにも、判決書の公開が是非望まれるものである。