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2005年10月28日
 ■ 大阪地方裁判所第6民事部における倒産事件処理の概況

破産、民事再生(個人再生)、会社更生、会社整理及び特別清算を取り扱う専門部に関する事件数や運用基準等に関する概要である。
平成17年1月より新破産法が施行されるようになり、従来「A管財」と言われていたものが「個別管財手続」と呼ばれ、「B管財」と呼ばれていたものが「一般管財」と呼ばれるようになり、その手続等に関する説明がなされている。
また、弁護士申立にかかる自己破産申立事件の予納金最低額(法人50万円、個人30万円)や、民事再生事件(監督委員選任型)の予納金基準なども紹介されている。
(民事法情報 No.229 26頁)

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2005年10月26日
 ■ 「録画ネット」著作隣接権侵害事件

本件は、海外などの遠隔地において、インターネット回線を通じてテレビ番組の録画・視聴を可能とするサービスの提供が著作隣接権を侵害するか否かが問題となった事案である。
裁判所は、「本件サービスにおける複製は、債務者の強い管理・支配下において行われており、利用者が管理・支配する程度は極めて弱いものである」とし、利用者による私的複製と評価することはできない」と判示し、著作隣接権の侵害を認めた。
著作権の侵害主体については、クラブ・キャッツアイ最高裁判決があり、その判断基準を踏襲したものと思われるが、結論においても妥当と言えよう。
(東京地裁平成16年10月7日決定(判例タイムズ1187号335頁))

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2005年10月25日
 ■ 「選撮見録」著作権等侵害事件

本件は、大阪市に所在するテレビ放送事業者である原告らが、被告が販売する別紙物件目録記載の商品(「選録見録」という名称のハードディスクビデオレコーダーシステム)が、原告らがテレビ番組の著作者として有する著作権(複製権及び公衆送信権)並びに原告らが放送事業者として有する著作隣接権(複製権及び送信可能化権)の侵害にもっぱら用いられるものであると主張し、上記各権利に基づいて、被告に対し、その商品の使用等及び販売の差止め並びに廃棄を請求した事案である。

大阪地裁は、著作権法にはいわゆる間接侵害規定がなく、「選録見録」の販売という「間接行為が、たとい直接行為と異ならない程度に権利侵害実現の現実的・具体的蓋然性を有する行為であったとしても、直ちにこれを、著作隣接権の侵害行為そのものであるということはできないから、被告商品の販売行為そのものを原告らの著作隣接権を侵害する行為とすることはできない。」しかし、「侵害行為の差止め請求との関係では、被告商品の販売行為を直接の侵害行為と同視し、その行為者を「著作隣接権を侵害する者又は侵害するおそれのある者」と同視することができるから、著作権法112条1項を類推して、その者に対し、その行為の差止めを求めることができるものと解するのが相当である。」

 著作権法規定の狭間となるようなケースにつき、112条の類推適用という手法によって新しい理論を示した判決と言えるでしょう。
H17.10.24 大阪地裁 平成17(ワ)488 著作権 民事訴訟事件(最高裁HP)

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2005年10月18日
 ■ 東京地裁保全部における仮差押命令申立事件の運用の変更点(上)

最高裁(平成15年1月31日)は、同一の被保全債権に基づく再度の仮差押は、保全の必要性の存する限り認められるとの新判断を示し、それに基づき、平成17年2月14日より、東京地裁保全部でも運用が変更された点につき解説している。
(金融法務事情1752号16頁)

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2005年10月13日
 ■ 敷引特約無効事件

家賃5万6千円、共益費6千円、保証金30万円の賃貸借契約について、25万円を敷引金として差し引いて残額5万円のみを返還した事例につき、控訴審の神戸地裁は、当事者双方に交渉力の差があり過ぎるとし、「本件敷引特約は、賃貸借契約に関する任意規定の適用による場合に比し、賃借人の義務を加重し、信義則に反して賃借人の利益を一方的に害するものであるから、消費者契約法10条により無効である」と判示した。
(判例時報1901号87頁)

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2005年10月08日
 ■ 記事見出し事件

インターネット向けに配信された記事の見出しが無断で使用されたとして読売新聞社がデジタルアライアアンス社を相手取って訴えていた事件で、10月6日、知的財産高裁は、営利目的で無断で反復使用することについて、創作性はないとして著作物性は否定したものの、「著作権法などで定めた厳格な意味での権利が侵害されなくても、民法709条の不法行為は成立する」と判示した。
法的保護利益が認められた事件として、自動車データベース事件(東京地裁平成14年3月28日、判例時報1793号133頁)においては、本件データベースの著作物性は否定したものの、「被告が本件データベースのデータを被告データベースに組み込んだ上,販売した行為は,取引における公正かつ自由な競争として許される範囲を甚だしく逸脱し,法的保護に値する原告の営業活動を侵害するものとして不法行為を構成するというべきである」と判示している。
同様に、オートくん事件(大阪地裁平成14年7月25日)においても、「他人のプログラムの著作物から、プログラムの表現として創作性を有する部分を除去し、誰が作成しても同一の表現とならざるを得ない帳票のみを抜き出してこれを複製し、もとのソフトウエアとは構造、機能、表現において同一性のないソフトウエアを製作することが、プログラムの著作物に対する複製権又は翻案権の侵害に当たるとはいえない・・・しかし、帳票部分も、・・・作成者がフォントやセル数についての試行錯誤を重ね、相当の労力及び費用をかけて作成したものであり、そのようにして作られた帳票部分をコピーして、作成者の販売地域と競合する地域で無償頒布する行為は、他人の労力及び資本投下により作成された商品の価値を低下させ、投下資本等の回収を困難ならしめるものであり、著しく不公正な手段を用いて他人の法的保護に値する営業活動上の利益を侵害するものとして、不法行為を構成する」と判示している。

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2005年10月05日
 ■ 特許専用実施権行使事件

特許専用実施権行使訴訟(平成17年6月17日最高裁第2小法廷)
平成16年(受)第997号 特許権侵害差止請求
「特許権者は、その特許権について専用実施権を設定したときであっても、当該特許に基づく差止請求権を行使することができると解するのが相当である。」
(判例時報1900号139頁)
この問題は、地上権を設定した土地の所有者が不法占拠者に対して自ら物権的請求権を行使できるかという問題と対比して論じられる場合があり、一般的には肯定されているものである。

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 ■ 平成16年度独禁法審決・判例研究(上)稗貫俊文教授

平成16年度の審決は72件であったと紹介し、本稿では、郵便区分機審決取消訴訟(平成16年4月23日)と防衛上タイヤ・チューブ談合事件(平成17年3月31日同意審決)について解説している。
(NBL818号48頁)

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2005年10月03日
 ■ 「一太郎」特許訴訟

「一太郎」特許訴訟(平成17年9月30日知的財産高等裁判所特別部)
平成17年(ネ)第10040号 特許権侵害差止請求控訴事件
「本件発明,すなわち,本件第1発明ないし本件第3発明は,乙18発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件発明に係る本件特許は,特許法29条2項に違反してされたものであり,特許無効審判により無効にされるべきものと認められるというべきである。したがって,特許権者である被控訴人は,同法104条の3第1項に従い,控訴人に対し,本件特許権を行使することができないといわなければならない。」
 本判決は、改正特許法(2005年4月施行)第104条の3(特許権者等の権利行使の制限)第1項「特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、当該特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるときは、特許権者又は専用実施権者は、相手方に対しその権利を行使することができない。」に基づき、進歩性がないものとして、本件特許に基づく請求を棄却したものである。

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