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2007年08月27日

コンピュータ・ソフトウェア審査基準

「コンピュータ・ソフトウェア審査基準の再考察」    太田司弁理士

プログラム発明に関し、主に「コンピュータ・ソフトウェア関連発明の審査基準」において、ソフトウェア関連発明が”自然法則を利用した技術的思想”足り得るためには、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されていることを要するという点についてわかりやすく解説されている。
そして、”ハードウェアとの関連性”を完全になくしてしまうとそれはもうアルゴリズムであり、「アルゴリズム自体は保護対象にしない」という前提に立つ以上、プログラムとアルゴリズムとの境界を定める必要があり、その方法論としては現状のソフトウェア審査基準が示すような”ハードウェアとの関連性”によるもの以上のものは存しないように思われるとしています。

(パテント Vol.60 P.16)

2007年05月06日

プログラムに関する特許につき、不服審判請求を不成立とした審決が違法とされた事案

平成19年4月26日知財高裁判決

 発明名称を「取引可否決定方法,取引可否決定システム,中央装置,コンピュータプログラム,及び記録媒体」とする特許出願につき,本件補正後の請求項1に係る発明は,特許法29条2項の規定により特許出願の際,独立して特許を受けることができるものではなく,特許法17条の2第5項で準用する同法126条4項の規定に違反するから,本件補正は,平成15年改正前特許法159条1項で準用する同法53条1項の規定により却下すべきものであり,本件補正前の請求項4に係る発明(以下「本願発明」という。)は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は特許を受けることができない,とした審決の取消しを求めたものである。
 知財高裁は,審決が認定した「業務の中で,一方の部署から,他方の部署へ書類を送付し,他方の部署で審査処理を行う場合に,その処理に要する時間を短くするために,一方の部署でできあがった書類を順に他方の部署に送付し,他方の部署では,それらの書類を順次受け取って処理を順次開始し進行させていき,最後に順次進行させた処理の総合的な結果に基づいて承認するか否かの結果を示すこと」は,たとえ周知技術であると認められるとしても,特許法29条1,2項にいう刊行物等に記載された事項から容易想到性を肯認する推論過程において参酌される技術ではなく,容易想到性を肯認する判断の引用例として用いているのであるから,刊行物等に記載された事項として拒絶理由において挙示されるべきであったものである。しかも,本件補正発明1が引用例1に記載された発明と対比した場合に有する相違点2の構成は,本願発明の出願時から一貫して最も重要な構成の一つとされてきたのであり,出願人である原告が,審査及び審判で慎重な審理判断を求めたものであるのに,審決は,この構成についての容易想到性を肯認するについて,審査及び審判手続で挙示されたことのない特定の技術事項を周知技術として摘示し,かつ,これを引用例として用いたものであるから,審判手続には,審決の結論に明らかに影響のある違法があるものと断じざるを得ない。したがって,拒絶通知をした理由と異なる理由に基づいてされた措置が原告の防御の機会を与えなかったなどとして違法であるとする取消事由2は,上記の趣旨を主張するものとして理由があるものというべきである。

(最高裁HP)