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2010年05月26日
 ■ 情報システム・ソフトウェア取引トラブル事例集

2010年3月、経済産業省より、「情報システム・ソフトウェア取引トラブル事例集」が公表された。
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/softseibi/trouble%20cases.pdf

判例集や文献にはあまり紛争事例が紹介されていないが、実際には、裁判にはなっていないシステム開発を巡る紛争は多く、まれに1億円を超える契約金額であっても、契約書を巻いていないケースも存する。

予防法務の観点から実務上参考になると言えよう。

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2010年05月24日
 ■ マス・メディアの媒体責任論

マス・メディアの性質論
 ある被害者や市民からのいわゆるマス・メディアに対するアクセス権につき検討する場合、マス・メディアに対する表現の自由の侵害や萎縮的効果(chilling effect)につき検討する必要がある。
また、新聞社、雑誌社、放送局、インターネット等には、自由な言論を支えるインフラとしての公共的な側面があるといえるが、他方、それぞれの媒体の性質の違いが存する。たとえば、訂正や謝罪を行う場合、新聞紙面や地上波の放送時間帯については物理的な制約があると考えられるが、たとえばCATV、衛星放送あるいはインターネットについては、物理的な制約につきあまり考える必要はないのではないか。

新聞社に対する反論文掲載請求
 1 問題の所在
  マス・メディアに対する自由の制約にならないか?
 2 反論権(アクセス権)の背景
  近代社会においては、表現の送り手と受け手の立場の互換性があったが、現代社会においては、少数のマス・メディアが報道をほぼ寡占しており、一般国民には、広い範囲の公衆に対して表現を行う機会が失われていると認識されるようになった(いわゆる表現の送り手と受け手の分離)。
  そこで、あらためて一般公衆に情報の送り手としての地位をさせようという見解が有力に主張されるようになってきた。
 3 反論権の概念
 (狭義)名誉毀損の成立を前提とし、名誉を回復する手段として、無料で反論の掲載等を求める権利(民法723条)
 (広義)必ずしも名誉毀損の成立を前提とせず、無料で反論の掲載等を求める権利(明文規定なし)
 4 狭義の反論権
  民法723条の「名誉を回復するのに適当な処分」に、反論文の掲載請求まで含まれるかどうかが問題となる。
 5 広義の反論権
  (1) 理論的根拠
 現代では、マス・メディアの集中・独占化が進み、多くの人々にとってマス・メディアへのアクセスが困難になっていることを問題視し、国家は、「自由な言論空間」を確保すべき責務を負っているとする。
  (2) 問題点
 広義の反論権を認めるということは、むしろ「自由な言論空間」を確保するという目的に反することになるのではないか。
 萎縮的効果(chilling effect)
 具体的な成文法が存在しない。
 6 サンケイ新聞事件判決(最高裁昭和62年4月24日)
  「反論権の制度は、民主主義社会に・・・に対し重大な影響を及ぼすもの」であり、たとえ新聞記事が「特定の者の名誉ないしプライバシーに重大な影響を及ぼすことがあるとしても、不法行為が成立する場合にその者の保護を図ることは別論として、反論権の制度について具体的成文法がないのに、反論権を認めるに等しい上告人主張のような反論文掲載請求権をたやすく認めることはできない。」
  上告人の名誉が毀損され不法行為が成立したとすることはできない。

掘…正放送請求
 1 問題の所在
 放送法第4条(訂正放送等)
 放送事業者が真実でない事項の放送をしたという理由によって、その放送により権利の侵害を受けた本人又はその直接関係人から、放送のあつた日から3箇月以内に請求があつたときは、放送事業者は、遅滞なくその放送をした事項が真実でないかどうかを調査して、その真実でないことが判明したときは、判明した日から2日以内に、その放送をした放送設備と同等の放送設備により、相当の方法で、訂正又は取消しの放送をしなければならない。
放送事業者がその放送について真実でない事項を発見したときも、前項と同様とする。
前2項の規定は、民法 (明治二十九年法律第八十九号)の規定による損害賠償の請求を妨げるものではない。
(問題点)
・被害者が放送事業者に対し、放送法4条1項の規定に基づく訂正または取消しの放送を求める私法上の権利を有するか否か。
・民法723条に基づく謝罪放送について、憲法19条や21条に反しないか。
Q 放送法4条3項をどのように解釈すべきであろうか。民法723条と放送法4条1項の関係につき、どのように考えるべきであろうか。
 2 学説
  否定説(多数説)の根拠
 ・裁判所が訂正放送等を命ずることができる旨の明文規定が存しない。
 ・立法の沿革
 ・放送事業者の番組編集の自由に対する重大な侵害となる。
 ・民法723条との均衡を失する。
 3 判例
 「生活ほっとモーニング」事件(最高裁平成16年11月25日)
 「放送事業者に対し、自律的に訂正放送等を行うことを国民全体に対する公法上の義務として定めたものであって、被害者に対して訂正放送等を求める私法上の請求権を付与する趣旨の規定ではない。」
 「法4条1項は・・・放送事業者が当該放送の真実性に関する調査及び訂正放送等を行うための端緒と位置づけているものと解するのが相当であって、これをもって、上記の私法上の請求権の根拠と解することはできない。」

検/景更告の媒体責任
 1 マス・メディアの媒体責任につき争われた事例
 ・全国紙に掲載された分譲マンションの広告に関して新聞社等の責任が問われた事件(下記判例)
 ・地方紙「大阪スポーツ」に掲載されたサラ金広告に関し、新聞社の責任が否定された事件(大阪地裁平成9年11月27日、判時1654号67頁)
 ・月刊誌「ニュー共済ファミリー」に掲載された分譲地の広告が悪用され、月刊誌の発行者の不法行為責任が肯定された事件(東京地裁昭和60年6月27日、判時1199号94頁)
 ・関西版「ぴあ」の広告の誤りにつき、不法行為責任が肯定された事件(大阪高裁平成6年9月30日、判時1516号87頁)
 ・投資ジャーナルグループがテレビ番組のテロップを悪用したケースにつき、テレビ神奈川の責任を否定した事件(東京地裁平元年12月25日、メ百選66)
 2 問題の所在
  新聞社は、単に紙面(広告すべき場所)を提供しただけであり、内容については一切関知していないとして責任を問われる場合はないと考えられるかどうか。
また、新聞記事の部分と広告の部分とで、注意義務の程度にどのような違いがあるであろうか。
 3 判例
 「日本コーポ」事件(最高裁平成元年9月19日)
 (1) 注意義務違反が存するか否か
 「掲載等をした当時、広告主であるAが広告商品である前記建物を竣工する意思・能力を欠く等、広告内容の真実性について社会通念上疑念を抱くべき特別の事情があって読者らに不測の損害を及ぼすおそれがあることを予見し、又は予見しえたのに、真実性の調査確認をせずにその掲載等をしたものとは認められない。」
 (2) 注意義務の程度
「広告掲載に当たり広告内容の真実性を予め十分に調査確認した上でなければ新聞紙上にその掲載をしてはならないとする一般的な法的義務が新聞社等にあるということはできない。」

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2010年05月21日
 ■ フランチャイズ契約における情報提供義務違反

フランチャイズ契約において、フランチャイザーが店舗の売上収支予測に関して不正確・不合理な情報を提供し、適切な経営指導を怠ったとして債務不履行に基づく損害賠償請求を行った事件につき、大津地裁は、「このような両者の関係にかんがみると、フランチャイザーが、フランチャイズ契約の締結に向けた準備段階において、フランチャイジー候補者に対し、売上予測等を提供する場合には、信義則上、十分な調査をし、的確な分析を行って、できる限り正確な売上予測等を提供する義務がある。」「被告は、過大なシェア率を設定して本件店舗の売上予測を誤り、原告に対しても、この誤った売上予測、さらには営業予測を提供していたものであるから、情報提供義務違反の責任を免れない。」と判示した。

極めて妥当な判決だと思われる。

(判例時報2071号76頁)

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2010年05月16日
 ■ マスメディアと肖像権・パブリシティ権

機‐啻権の概念
 1 定義
 肖像権とは、「人がみだりに他人から写真をとられたり、とられた写真がみだりに世間に公表、利用されることがないよう対世的に主張しうる権利」(大塚重夫)であり、一種の人格権であると解されている。
2 内容
 ,澆世蠅忙1討鬚気譴覆じ⇒        肖像権(人格権)
 ∋1討気譴深命拭∈鄒された肖像を利用されない権利  パブリシティ(財産権)
 肖像の利用に対する本人の財産的価値を保護する権利  〃
 3 最高裁(昭和44年12月24日、京都府学連デモ事件)
   刑事事件に関し、「個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態(以下「容ぼう等」という。)を撮影されない自由を有するものというべきである。これを肖像権と称するかどうかは別として、少なくとも、警察官が、正当な理由もないのに、個人の容ぼう等を撮影することは、憲法13条の趣旨に反し、許されないものといわなければならない。」と判示した。

供‐啻権に関する紛争
 1 肖像権を認めた裁判例
 ・東京地裁平成2年5月22日(判時1357号93頁)
 「何人も自己の容貌や姿態を無断で撮影され、公表されない人格的な権利、すなわち肖像権を有しており」と「肖像権」と定義した上で、要保護性を肯定した。
  その後も、「肖像権」と明確に判示した下級審が相次いでいる。
 2 写真撮影及び公表による侵害
 ・フライデー無断写真撮影事件(東京高裁平成2年7月24日、メ百選51)
 写真週刊誌が、居宅内における容貌・姿態を第三者が無断で写真撮影し、広く公表した事例。
 Q カメラマンの写真撮影行為は、被告Y(講談社)との関係において、どのような法的評価、法的構成がなされていると推察されるか。
 Q 塀越しの撮影ではなく、原告女性Xが早朝ゴミ出しする姿を撮影した場合でも、同様に結論になるであろうか。
 Q 撮影対象が原告女性Xではなく、井上ひさし氏であった場合は、どうか。
 Q 本件が写真週刊誌フライデーではなく、「肖像権侵害が認められた事例」として判例雑誌に当該写真が参考資料として掲載された場合はどうか。
 3 イラスト画掲載による侵害
 ・「新ゴーマニズム宣言」事件(東京高裁平成15年7月31日、判時1831号107頁)
  漫画「新ゴーマニズム宣言」に似顔絵を描かれた大学講師が漫画家に対し肖像権等の侵害を理由に損害賠償等を請求した事案。
 「絵画は、写真撮影又はビデオ撮影のように被写体を機械的に記録するものとは異なり、作者の主観的、技術的作用が介在するものであるから、肖像画のように写真と同程度に対象者の容貌ないし姿態を写実的に性格に描写する場合はともかく、少なくとも作者の技術により主観的に特徴を捉えて描く似顔絵については、これによってその人物の容貌ないし姿態の情報をありのまま取得させ、公表したとは言い難く、別途名誉権、プライバシー権等他の人格的利益の侵害による不法行為が成立することはあり得るとしても、肖像権侵害には当たらないと解すべきである。」
 ・和歌山カレー事件報道事件(最高裁平成17年11月10日、メ百選52)
  「人は、みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有する」「人は、自己の容ぼう等を撮影された写真をみだりに公表されない人格的利益も有すると解するのが相当である」
 Q 勾留理由開示手続が公開裁判で行われる理由は何であろうか。
 Q 最高裁が「みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益」があるとしながら、「肖像権」という言葉を使わなかったのは、なぜであろうか。
 Q 最高裁は、原審の〇実の公共性、¬榲の公益性、手段の相当性という3要件の判断枠組みをとらず、受忍限度論という立場をとったが、基準が曖昧になるということはないであろうか。
 Q 刑事訴訟法規則において、公判廷における写真撮影が制限されている制度趣旨な何であろうか。また、隠し撮りを行った場合にも、その制度趣旨との関係で不都合はあるであろうか。
 Q 原告Xが手錠、腰縄により身体拘束を受けてる状態を描いたイラストにおいて、テレビ撮影の場合と同様、モザイクを入れたり、黒塗りした場合でも、名誉毀損になると言えるであろうか。

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 1 発生経緯
  芸能人やスポーツ選手などの著名人の肖像や指名について、米国コモン・ロー上生成発展してきたもの。
 2 日本の裁判例
 ・おニャン子クラブ事件(東京高裁平成3年9月26日、メ百選54)
  著名な芸能人の氏名・肖像のもつ顧客吸引力に専ら依存して作成されたカレンダーの販売行為について、パブリシティ権の侵害を理由として差止及び損害賠償請求を認めた事例。
 Q 肖像権とパブリシティ権とは、どこに共通点があって、どこに違いがあると言えるか。
 Q 芸能人の肖像写真の利用態様や利用回数に応じての事後的金銭賠償だけでなく、将来の差止請求まで認める実質的根拠は何か。
 Q 特許や著作権等の知的財産権については存続期間が認められているが、パブリシティ権の場合の存続期間は、どう考えるべきであろうか。
 3 物に関するパブリシティ権
 ・「ギャロップレーサー」事件(名古屋高裁平成13年3月8日、判タ1071号294号)
 「『著名人』でない『物』の名称等についても、パブリシティの価値が認められる場合があり、およそ『物』についおてパブリシティ権を認める余地がないということはできない。また、著名人についてパブリシティ権は、プライバシー権や肖像権といった人格権とは別個独立の経済的価値と解されているから、必ずしも、パブリシティの価値を有するものを人格権を有する『著名人』に限定する理由はないものと言わなければならない。」とし、物に関するパブリシティ権を肯定した。
 ・「ダービースタリオン」事件(東京高裁平成14年9月12日、判時1809号140頁)
 物に関するパブリシティ権を否定した(上告棄却)。
  「競走馬という物について,人格権に根ざすものとしての,氏名権,肖像権ないしはパブリシティ権を認めることができないことは明らかである。また,控訴人らが本件各競走馬について所有権を有し,所有権に基づき,これを直接的に支配している(民法206条)ということはできるものの,単に本件各競走馬の馬名・形態が顧客吸引力を有するという理由だけで,本件各競走馬の馬名,形態等について,その経済的利益ないし価値を排他的に支配する財産的権利であるパブリシティ権を有している,と認め得る実定法上の根拠はなく,控訴人らの主張を認めることはできない。(仮に,社会情勢の変化等により,このような権利を認める必要が生じていると考える者があるとしても,権利として認めるべきか否か,認めるとしてどのような形で認めるべきかは,立法的手続の中で幅広く社会の意見を集約した上で,決するにふさわしい問題であるというべきである。)。」
 ・ギャロップレーサー事件最高裁判決(平成16年2月16日、判時1863号25頁)
  「競走馬の名称等が顧客吸引力を有するとしても,物の無体物としての面の利用の一態様である競走馬の名称等の使用につき,法令等の根拠もなく競走馬の所有者に対し排他的な使用権等を認めることは相当ではなく,また,競走馬の名称等の無断利用行為に関する不法行為の成否については,違法とされる行為の範囲,態様等が法令等により明確になっているとはいえない現時点において,これを肯定することはできないものというべきである。」
  「なお,原判決が説示するような競走馬の名称等の使用料の支払を内容とする契約が締結された実例があるとしても,それらの契約締結は,紛争をあらかじめ回避して円滑に事業を遂行するためなど,様々な目的で行われることがあり得るのであり,上記のような契約締結の実例があることを理由として,競走馬の所有者が競走馬の名称等が有する経済的価値を独占的に利用することができることを承認する社会的慣習又は慣習法が存在するとまでいうことはできない。」
 4 検討
  マスメディアとの関係では、報道目的を超えた顧客吸引力を利用した「引用」(著作権法32条)などが問題となり得る。

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2010年05月09日
 ■ プライバシー権に関する一考察

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 1 背景事情
 いわゆる Yellow Journalism(新聞の発行部数等を伸ばすために、「事実報道」よりも「扇情的である事」を売り物とする形態のジャーナリズムのこと。)が跋扈するメディア状況において、個人に関する事柄が公開されないように保護する必要があると考えられるにようになってきた。
 1890年、ウォーレン、ブランダイズは、その著書「The Right to Privacy」において、「ひとりでほっておいてもらう権利」(Right to be let alone)を提唱した。

 2 プロッサー教授による分類
 米国の判例を分析、整理し、次の4類型に分けられるとした(1960年、佐伯仁志「プライヴァシーと名誉の保護」、伊藤正己「プライバシーの権利」参照)。
   峪篝験茲悗凌入」
  ◆峪篁の公開」
  「誤認を生ずる表現」  ex.○○教の信者である、○○病である
  ぁ峪篁の営利的利用」

供テ本におけるプライバシー概念
 1「宴のあと」事件(東京地裁昭和39年9月28日)
 作家三島由紀夫のモデル小説「宴のあと」に関し、元外務大臣がプライバシー侵害を理由に、謝罪広告および損害賠償を請求する訴訟を提起した事件。 
 なお、「モデル小説」とは、実在の事実の枠組みを借用しつつ、それを換骨奪胎して著者個人の美意識や思想を表現する小説のことを言う。
「私生活をみだりに公開されないという法的保障ないし権利」と定義し、法的救済を与えるための要件を次の3つであるとした。
 (イ)私生活上の事実、または私生活上の事実らしく受け取られるおそれのあることがら
 (ロ)一般人の感受性を基準にして、当該私人の立場に立った場合、公開を欲しないであると認められることがら
 (ハ)一般の人々に、まだ知られていないことがらであること、(このような公開によって当該私人が実際に不快、不安の念を覚えたこと)
 プライバシーという表現は用いていないが、「前科及び犯罪経歴は、人の名誉信用に直接かかわる事項であり、前科等のある者もこれをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有する」と判示しており、ここにいうみだりに公開されない法律上の利益は、従来の名誉・信用の法概念とは別個の法律上の利益であり、少なくともプライバシーの一部を不法行為法の保護法益として容認したものと言える。

 2 表現の自由との調整
 ・一般的に、プライバシー侵害の場合、真実性の証明に基づく免責は認められないという見解。
 ・名誉毀損とプライバシー侵害につき、下記の同じ免責法理で考えてもよいという見解(佃克彦「プライバシー権・肖像権の法律実務」169頁)
  〔祥脊迷察▲廛薀ぅ丱掘漆害言論は、原則的には真実であっても言ってはならない。
  △靴し、公的言論であれば、それが「真実性」「相当性」を満たす限り言ってもよい。
  B省、「真実性」「相当性」がないことは言ってはならない。

 3 現代のプライバシー概念
  ・「社会がコンピュータ時代に入り、そこに収集される自己に関する情報について、個人がどのような権利をもち得るかがプライバシー保護の主要な関心事となり、アメリカをはじめとする諸外国でプライバシー保護立法が制定されつつある現在であれは、プライバシーの権利は、『ひとりにしておいてもらう権利』という消極的定義にとどまらず、同時に、『自己に関する情報の流れをコントロールする権利』という積極的な定義を必要とすると解されている」(竹田稔「名誉・プライバシー侵害に関する民事責任の研究」5頁)
  現代の積極国家化と技術の進歩により、行政や企業が膨大な情報を収集・保有・利用するシステムを構築している状態がプライバシーに対する脅威となっているという問題意識を背景にしている。
  ・情報コントロール権説(佐藤幸治)
「個人が道徳的自立の存在として、自ら善であると判断する目的を追求して、他社とコミュニケートし、自己の存在にかかわる情報を開示する範囲を選択できる権利」(憲法〔新版〕408頁)
  ・自己イメージのコントロール権説(棟居快行)
  ・社会的評価からの自由説(阪本昌成)

 4 社会的評価との関係
 私生活などをみだりに公開されないという点に重点を置き、社会的評価の低下があったか否かは問われない。 
 プライバシーは、「自分に関する」情報が他者に知られてしまった「段階」で害されるものであるが、それに対して、名誉は、自分に関する情報が社会に流布(つまり公開)された結果として「自分の社会的評価」が傷ついてしまった「場合」に害される」(小林節「名誉権・プライバシーの権とその保護」ジュリスト884号194頁)

 5 各法令におけるプライバシー保護
 信書開披罪、秘密漏泄罪、住居侵入罪、軽犯罪法違反、郵便法、電気通信事業法、ストーカー行為規制法、個人情報保護法 etc.

 6 プライバシーは、なぜ守られる必要があるのか?
  真実のことである限り、すべての情報をオープンにしてもよいはずと割り切れないのは、なぜであろうか?
  「人間にとって最も基本的な、愛、友情および信頼の関係にとって不可欠の環境の充足」(佐藤幸治)
  「人間そのものが大切なのではなく、人間関係が大切なのである。」

掘ド集修亮由とプライバシー保護との調整
 1 ノンフィクション事件
 ノンフィクションとは、ジャーナリズムの一種であり、細部に至るまで事実にこだわり、本質的に「事実に語らせる」ことによって、単なるニュース伝達の枠を超えて、時代や人間の本質に迫ろうという要素をもつ小説のことをいう。
  ・「逆転」事件(最高裁平成6年2月8日)
   被告が陪審員をしていた経験に基づき、ノンフィクション小説「逆転」を書いたことがプライバシー侵害になるかどうかが争われた事件。
   1審東京地裁は、「社会の構成員が一定の事実を知ることに正当な関心をもち、それを知ることが社会全体の利益になるような場合(=公共性のある場合)に公益を図る目的でその事実(私的事柄)を公表したときには、私的事柄の公表が公の利益になるものとして右の公表する行為は許容されるべきである」として、慰謝料50万円を認めた。
   2審東京高裁も、控訴棄却。
最高裁は、「その著作物の目的、性格等に照らした実名使用の意義及び必要性を併せて判断し、右に前科等にかかわる事実を公表されない法的利益がこれを公表する理由に優越するときは、右の者は、その公表によって被った精神的苦痛の賠償を求めることができる」として、原審を認容し、上告を棄却した。
いわゆる利益衡量論を採用した。

2 モデル小説事件
(1) 裁判例
 ・東京地判平成7年5月19日(判時1550号49頁)
  小説「名もなき道を」につき、「一般読者をして小説全体が作者の芸術的創造力の生み出した創作であって虚構であると受け取られるに至っている場合には、名誉・プライバシー侵害」とはならないとし、「実在人物の行為・性格がそのまま叙述されていて真実であると受け取る読み方をすることはないと考えられる」とした。
 ・大阪高判平成9年10月8日(判時1631号80頁)
 小説「捜査一課長」につき、「本件小説は、素材事実と虚構事実が渾然一体となり、その演繹的事実として、一般読者に対し、モデルとされた者が『甲山事件』をモデルとする本件小説の殺人事件の犯人であり、ひいては『甲山事件』の犯人であるとの印象を与え、右事実をその骨格的要素として摘示することにより、モデルとされた者の社会的評価を低下させ、その名誉を侵害するものである」として、約80万円の損害賠償を認めた。
 ・「石に泳ぐ魚」事件(最高裁平成14年9月24日、メ百選74)
  小説「石に泳ぐ魚」につき、東京地裁は、「読者にとって、右の記述が、モデルに関わる現実の事実であるか、作者が創作した虚構の事実であるかを截然と区別することができない場合においては、小説中の登場人物についての記述がモデルの名誉を毀損し、モデルのプライバシー及び名誉感情を侵害する場合がある」として、名誉毀損等の成立を認め、最高裁も上告棄却を行った。

 (2) 考慮要素
  a) 登場人物と実在人物との同定可能性
    著名ではなくても、実在人物を想起させる表現がなされれば、必ずその人物の周囲の一定の人間はその人物を想起するものであるから、同定可能性の要件は満たされる。
  b) 創作性・虚構性と社会的評価の低下
    一般的に、社会的評価の低下があったか否かは問われない。

3 プライバシー侵害の判断基準
 (1) 学説
 ・プライバシー侵害では、真実性の証明が言論を正当化することにはならず、一旦侵害されたプライバシーの回復が不可能であること、プライバシー侵害では市場の自由競争での自力救済手段を持ち得ないこと、一般的に価値が高くない性質の言論であることなどを根拠に、プライバシー侵害を名誉毀損の言論よりも厳しく制限すべきとする説も有力。 
 ・”集醜坩戮社会の正当な関心事であること、△修良集銃睛読集淑法が不当なものでないことの要件が満たされる場合には、表現行為は違法性を欠き、プライバシー侵害とはならない(竹田稔)。
 (2) 比較衡量のアプローチ
  ・東京高裁平成13年7月18日(判時1751号75頁)
   報道に関して、考慮すべき要素として、
    崚該報道の意図・目的(公益を図る目的か、興味本位の私事暴露が目的かなど)」
   ◆屬海譴箸隆愀犬濃篝験莨紊了実や個人的情報を公表することの意義ないし必要性(これをしなければ公益目的を達成することができないかなど)」
   「情報入手手段の適法性・相当性(例えば盗聴などの違法な手段によって入手したものかなど)」
   ぁ峙事内容の正確性(真実に反する記述を含んでいるかなど)」
   ァ崚該私人の特定方法(実名・仮名・匿名の別など)」
   Α嵒集淑法の相当性(暴露的・侮辱的表現か、謙抑的表現かなど)」
  プライバシーに関して、考慮すべき要素として、
    峺表される私生活上の事実や個人的情報の種類・内容(どの程度に知られたくない事実・情報なのか、既にある程度知られている事実・情報かなど)」
   ◆崚該私人の社会的地位・影響力(いわゆる公人・私人の別、有名人か無名人かなど)」
   「その公表によって実際に受けた不利益の態様・程度(どの範囲の者に知られたか、どの程度の精神的苦痛を被ったかなど)」
  等を考慮すべきとした。

 4 私見
  表現の自由につき、優越的地位が認められるのは、ー己統治の価値と⊆己実現の価値があるからであるが、政治的・公益目的の表現でない場合には、上記,硫礎佑惑Г瓩蕕譴此結局、上記△良集充圓痢崕颪たい」という自己欲求の価値と、その表現対象者の「書かれたくない」という静的利益との調整に帰着することになるが、公権力や他者からの干渉を排除することが基本的人権のベースであると考える場合、表現者は、他人の家に土足で入り込むような表現行為は避けなければならず、そう解しても、表現の自由に対する不当な制限にならないのではないか。

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