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2006年10月30日
 ■ 「不動産鑑定士調停センターの開設」 小谷芳正

 平成18年7月1日より、社団法人日本不動産鑑定協会は、不動産鑑定士調停センターを開設し、東京において業務を開始した。平成19年4月より裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律が施行される予定であり、その後法務大臣の認証を受けられれば、時効の中断、訴訟手続の中断、調停前置に関する特則などが受けられることになる。
(金融法務事情1784号1頁)

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2006年10月27日
 ■ ワンクリック詐欺損害賠償請求事件

 「本件は、相手方に契約締結意思がないにもかかわらず、サイトの画面の写真画像をクリックしただけで、会員登録が終了したとして不当に利用料金を請求する、いわゆるワンクリック詐欺による不当請求事案であるが、その手口は、いきなり画面を暗転させえ数字や文字を羅列させた後、個人情報取得終了との表示を行い、いかにも相手方のパソコン内にスパイウェアを侵入させ個人情報を窃取したかのような不安感を与えつつ、IPアドレスによってパソコンが特定でき、自宅や勤務先に直接請求するとともに、延滞料も請求することがあるなどと威圧的に請求を行うもので、しかも、羞恥心から泣き寝入りし、支払いに応じる者もあることを見込んでランダムに多数のメールを送りつけるというものであって、極めて悪質である。原告は、弁護士であり、かかる請求に対して支払義務のないことは理解していたが、自らのパソコンにスパイウェアを侵入され、またパソコン内の個人情報を窃取されたかもしれないとの疑念を抱き、パソコンの点検が済むまでの間パソコンの利用を差し控えたほか、自らの権利救済のために時間と費用をかけて本訴を提起しており、被告の行為により看過し難い精神的苦痛を負ったことは明らかである。本件の関する上記のような諸般の事情を総合勘案すると、本件における損害賠償金として30万円が相当であると思料する。」
(判例時報1939号52頁)

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2006年10月26日
 ■ 「インターネットを利用した支払督促申立ての運用開始」 最高裁判所事務総局民事局第1課吉田浩司、中室秀子

 平成18年9月1日より、インターネットにより支払督促の申立てを受け付ける督促手続オンラインシステムが東京簡易裁判所において運用開始されたことが報告されている。申立書式としては、貸金、立替金、求償金、売買代金、通信料金及びリース料金の6類型を基本とした合計38種類が用意されているという。
(金融法務事情1783号8頁)

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2006年10月22日
 ■ 株式会社譲渡につき賃貸借の脱法的無断譲渡に該当しないとされた事例

 「賃借人である法人の構成員や機関等に変動が生じても、法人格の同一性が失われるものではない。」「本件における被告の株券譲渡、商号、役員変更等が本件特約条項が規定する脱法的無断賃借権の譲渡に当たると解することはできない」として、本件解除に基づく本件建物明渡等の請求を認めなかったものである。
(判例時報1938号90頁)

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2006年10月13日
 ■ 全国八葉物流不当利得返還請求事件

 「本件各取引システムは、商品の連鎖販売取引を仮装しているが、その実質は法により刑罰をもって禁止されている無限連鎖講に当たる上に、早晩破綻することが必至であるにもかかわらず、その事実を隠蔽しつつ極めて高率の配当金等をもって新規会員を募るという著しく射幸性の強いもので、それ自体として強い反社会性を有するものと評価される」とした上で、「民法708条による不法原因給付者による返還請求が許されないとされるのは、自ら不法は給付をなした者が、当該違法行為を理由として法の保護を求めることの非難性に対する制裁の趣旨と解される。しかるところ、破産管財人は、破産債権者全体の利益を代表して、総債権者に公平な配当を行うことを目的として、破産者に帰属する財産について、破産者に代わって管理処分権を行使する独立の法主体であると解されるから、破産管財人が破産者の権利を行使する場合には、民法708条の趣旨は当てはまらないというべきであり、同条は適用されない」として、管財人の請求を認めたものである。
(判例時報1937号102頁)

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2006年10月11日
 ■ 矢沢永吉パチンコ機事件

 「本件パチンコ機の内容、その中における本件人物絵の位置付け及び使用の態様などからすると、被告平和は原告の顧客吸引力を用いる目的で本件パチンコ機に本件人物絵を使用したものとは認められず、また、現実にも原告の顧客吸引力の潜用あるいはその毀損が生じているとは認めがたい。人格的利益についても、本件においては、肖像権の対象となるような原告の容姿の写真、ビデオあるいは詳細な写実画が使用されたものではなく、使用された漫画絵である本件人物絵は、その制作に当たって原告の肖像のイメージはあったにせよ、原告との類似性はそれほど高くなく、またことさら醜悪あるいは滑稽に描かれておらず、さらにパチンコ遊技中に識別可能性に乏しいものであり、被告平和においても積極的に本件人物絵をパチンコ情報誌等に提供しているものではないことからすると、原告に対して法的な救済を必要とする人格的利益の侵害が生じているとは認められない」と判示した。
(判例タイムズ1217号310頁)

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2006年10月09日
 ■ モデル引抜き行為不法行為事件

 モデルの有料職業紹介事業に関する労働者の引抜き行為につき、東京地裁は、「被告らが多数の原告モデル等に対し、原告会社のモデル資料から得たモデルに関する情報を利用し、原告会社や原告淺井に対する批判を交えて、一定期間に集中し、また退職後かなりの長期間にわたって、原告会社との契約解消及び被告会社との契約締結を勧誘したことが認められるが、このような方法と態様による勧誘行為は、著しく社会的相当性を欠くといわざるを得ず、不法行為に該当すると認めるのが相当である」と判示した。
(判例時報1936号87頁)

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2006年10月02日
 ■ 所有権留保特約付売買において代金債権が再生債権であるとされた事例

 東京地裁は、自動車販売業者が有していた売買代金債権につき、「本件売買契約は、所有権留保特約付売買契約の形式を採っているものの、実質的には、債権担保の目的のために締結されたものであり、本件においては、本件各自動車を被告会社に売却した上で、本件各自動車について非典型の担保権(いわゆる所有権留保)を設定したものと認めることが相当である」とした上で、「本件売買契約において、売主が買主に対して負担する本件各自動車について所有権移転登録手続をする債務は、買主が売主に対して負担する残代金債務とけん連関係に立つとはいえないと解するのが相当・・・共益債権とすべき事由は見出せない」「設定された担保権について別除権を行使することができ、担保を失うものではないのであるから、再生債務者である買主の立場にある者と比較して、格別保護に欠けるとはいえない。」と判示した。
(金融法務事情1781号64頁)

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