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2007年08月30日
 ■ ライセンス契約におけるランセンシーの地位保全

「ライセンシーの地位の保全とライセンス契約の安定性強化について」
          大阪商業大学主任研究員 梅林 勲氏

特許や著作権に関するライセンス契約においてライセンサーが倒産した場合に、ライセンシーの地位が不安定になるというのは以前から指摘されていた点であるが、その問題点の検討の他、パテントプールの場合における倒産隔離の問題や、経済産業省の登録制度について紹介されている。知的財産権に関するライセンスの保護については、予防法務という観点においても重要と言えよう。

(判例タイムズ1243号50頁)

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2007年08月27日
 ■ コンピュータ・ソフトウェア審査基準

「コンピュータ・ソフトウェア審査基準の再考察」    太田司弁理士

プログラム発明に関し、主に「コンピュータ・ソフトウェア関連発明の審査基準」において、ソフトウェア関連発明が”自然法則を利用した技術的思想”足り得るためには、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されていることを要するという点についてわかりやすく解説されている。
そして、”ハードウェアとの関連性”を完全になくしてしまうとそれはもうアルゴリズムであり、「アルゴリズム自体は保護対象にしない」という前提に立つ以上、プログラムとアルゴリズムとの境界を定める必要があり、その方法論としては現状のソフトウェア審査基準が示すような”ハードウェアとの関連性”によるもの以上のものは存しないように思われるとしています。

(パテント Vol.60 P.16)

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2007年08月22日
 ■ うつ病による自殺につき会社の責任が認められた事例

自動車メーカーに勤務していた中間管理職がうつ病になり、飛び降り自殺をした事件につき、裁判所は、「使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負担等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことのないよう注意し、もって、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務(安全配慮義務)を負っていると解するのが相当であるところ、本件においては、被告は、雇用主として、その従業員である一郎に対し、同人の労働時間及び労働状況を把握・管理し、過剰な長時間労働などによりその心身の健康が害されないように配慮すべき義務を負っていたというべきである。」しかるに「被告は、一郎の労働時間や労働状況を把握管理せず、平成14年2月1日以降、月平均で約100時間もの時間外労働などの長時間労働をさせ、少なくとも平成14年4月には、上司も、一郎に活気がなくなったり、同人が意味不明の発言をしたことなどうつ病の発症をうかがわせる事実を認識していながら、一郎の業務の負担を軽減させるための措置を何ら採らず、一郎にうつ病を発症させて、自殺に至らしめたのであるから、被告には、安全配慮義務違反があったことは明らかである」と判示した。

(判例時報1970号82頁)

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2007年08月17日
 ■ 情報取引をめぐる裁判例

現代型取引をめぐる裁判例(190)          升田 純

情報管理の場面においてコンピュータ安全管理に関心が集まりがちであるが、コンピュータ管理されていない多量の情報もあり、企業全体の情報管理につき管理体制を構築することが重要となっている。また、従来は、企業における情報管理は、役員・従業員の企業に対する忠誠心に依存していた部分が相当に大きかったということができるが、そのこと自体、情報管理の面からは極めて問題である点が指摘されている。裁判例として、債務不履行や不法行為に基づく損害賠償請求の事案のみならず、窃盗罪や背任罪を構成するとした刑事事件も紹介されている。

(判例時報1969号3頁)

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2007年08月15日
 ■ イニシアル・トークによる名誉毀損

平成18年11月7日東京地裁判決

メールマガジンや雑誌におけるイニシャルによる記事につき、裁判所は、「原告の周囲において、原告とイベントサークルとの関連性が取りざたされていたことなどからすれば、原告と面識がある物や、原告の属性のいくつかを知る者が本件記事を見れば、「K・T」ないし「K」を原告と認識することは容易である。したがって、本件記事における「K・T」ないし「K」は原告を示すものと言える。」「この点、被告噂の真相及び同丙川は、一般読者の普通の注意と読み方とを基準にして、本件記事において一般の読者は、原告を同定しえないから原告の社会的評価を低下させないなどと主張する。しかし、原告の属性のいくつかを知る者は不特定多数に及ぶことは容易に推認できることからすれば、そうした者が本件記事を読んだ場合、「K・T」ないし「K」は原告であると認識できる以上、被告の主張は採用できない」と判示し、名誉毀損を肯定したものである。

(判例タイムズ1242号224頁)

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2007年08月06日
 ■ 建築設計・施工者等の不法行為責任

平成19年7月6日最高裁判決

「建物の建築に携わる設計者、施工者及び工事監理者(以下、併せて「設計・施工者等」という。)は、建物の建築に当たり、契約関係にない居住者等に対する関係でも、当該建物に建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負うと解するのが相当である。そして、設計・施工者等がこの義務を怠ったために建築された建物に建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵があり、それにより居住者等の生命、身体又は財産が侵害された場合には、設計・施工者等は、不法行為の成立を主張する者が上記瑕疵の存在を知りながらこれを前提として当該建物を買い受けていたなど特段の事情がない限り、これによって生じた損害について不法行為による賠償責任を負うというべきである。」「原審は、瑕疵がある建物の建築に携わった設計・施工者等に不法行為責任が成立するのは、その違法性が強度である場合、例えば、建物の基礎や構造く体にかかわる瑕疵があり、社会公共的にみて許容し難いような危険な建物になっている場合等に限られるとして、本件建物の瑕疵について、不法行為責任を問うような強度の違法性があるとはいえないとする。しかし、建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵がある場合には、不法行為責任が成立すると解すべきであって、違法性が強度である場合に限って不法行為責任が認められると解すべき理由はない。例えば、バルコニーの手すりの瑕疵であっても、これにより居住者等が通常の使用をしている際に転落するという、生命又は身体を危険にさらすようなものもあり得るのであり、そのような瑕疵があればその建物には建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵があるというべきであって、建物の基礎や構造く体に瑕疵がある場合に限って不法行為責任が認められると解すべき理由もない。」

(最高裁HP)

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2007年08月02日
 ■ 特許発明に係る装置の点検、修理及び部品交換

台車固定装置の点検、修理及び部品交換を行うことが本件特許権を侵害するかどうかについて争われた事件につき、大阪地裁は、「『使用』とは、発明の目的を達するような方法で当該発明に係る物を用いることをいうものと解するべきである」「本件特許発明の目的は、『例えば立体駐車場装置において自動車を載置させる台車をリフター中央および定位置で固定する台車固定装置に関するもの」であって、「台車を正確、かつ、確実に停止固定して台車の停止精度を向上することを目的とする」ものであることは認められる。この目的は、自動車等を載置した台車をリフター中央及び定位置に移動させて、台車固定装置を作動させて固定するという方法で達することができるものであって、単に、台車固定装置の点検、修理及び部品の交換をしただけでは、この目的を達することはできない。したがって、単に台車固定装置の点検、修理及び部品の交換をするたけの行為は、発明の目的を達するような方法で物を用いることには当たらないので、本件台車固定装置の『使用』に該当しない」と判示した。

(判例時報1968号164頁)

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