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2006年03月27日
 ■ 原状回復義務事件

 特定優良賃貸中だくの賃貸借契約において現状回復義務の内容について争われた事案であるが、最高裁は、「建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは、賃借人に予期しない特別の負担を課すことになるから、賃借人に同義務が認められるためには、少なくとも、賃借人が補修費用を負担することとなる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか、仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には、賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の特約(以下「通常損耗補修特約」という。)が明確に合意されていることが必要であると解するのが相当である。」と判示した。
(判例タイムズ1200号127頁)

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2006年03月24日
 ■ 「通報窓口設計の実務上の留意点について」 森原憲司弁護士

「内部通報システムの構築 ー課題と対策」 中原健夫弁護士
平成18年4月1日より、公益通報者保護法が施行されることになり、それに伴う通報窓口の設置や通報受理後の体勢作りについて解説されている。
内部通報システムの構築は、コンプライアンス経営や日本版SOX法ともかかわる重要な喫緊の課題であると言えよる。
(NBL829号20頁〜、43頁〜)

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2006年03月22日
 ■ 「倒産手続における非典型担保 ファイナンス・リース」 片山英二弁護士、中村閑弁護士

フルペイアウト方針のファイナンス・リース契約に基づいてリース物件の引渡を受けている場合に、ユーザーが倒産手続に入った場合の問題点について整理されている。共益債権説ではなく、担保付債権説の立場をとった最高裁判決(平成7年4月14日)後の実務の取扱について論じられている。
(金融法務事情1765号30頁)

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2006年03月20日
 ■ 訴訟活動における名誉毀損の成否が争われた事件

 「訴訟上の主張、立証活動を、名誉毀損、侮辱に当たるとして損害賠償を認めることについては、相手方の悪性主張のための正当な訴訟活動を萎縮させて民事訴訟の本来果たすべき昨日を阻害することもあるから、慎重でなければならい」「民事訴訟の本リアの機能を阻害しないように留意しながら判断していくほかないが、主要な同期が訴訟とは別の相手方に対する個人攻撃とみられ、相手方当事者からの中止の警告を受けてもなお訴訟における主張立証に名を借りて個人攻撃を続ける場合には、訴訟上の主張立証であることを理由とする違法性阻却は認められない。」「弁論の全趣旨によれば、前記被告らの行為は、民事訴訟上の準備書面あるいは書証(陳述書)においてなされたものであって、広く一般社会に流布することを目的としてされた表現行為ではなく、現実にも双方当事者の関係者の間で流布されたにとどまり、広く世間に流布されたことはない(今後も広く世間に流布される見込みはない)から、原告に生じた精神的損害の額を金銭的に評価すれば、20万円とするのが相当である」
(判例時報1934号65頁)

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2006年03月17日
 ■ 「システム開発委託契約において留意すべき問題」 上山浩弁護士

発注者としては、瑕疵担保責任の期間を伸長する規定を盛り込むことが必要であることや、損害賠償額の上限を定めないようにしなければならないことが論じられている。また、独占禁止法上の問題にも留意が必要であるとされている。
(NBL828号38頁)

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2006年03月16日
 ■ 架空請求違法提訴事件

 携帯電話用有料サイトを運営する業者が行った少額訴訟の提起につき、東京地裁は、「いわゆる架空請求について、一般的に、『相手にしないで放置するべき』と報道されていることに便乗し、提訴後も応訴することなく弁論期日に欠席させることで勝訴判決を取得できるとの計算のもとに提訴に及んでいるのではないか、、、被害予防のための報道や裁判制度をも悪用する極めて悪質ないわゆる訴訟詐欺に該当する可能性が高いものといわざるを得ない」と判示し、反訴原告(本訴被告)の慰謝料30万円を認めたものである。
一般的な慰謝料基準についても見直す時機に来ているのではないだろうか。
(判例時報1916号46頁)

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2006年03月14日
 ■ 高校生落雷重症事件

 「教育活動の一環として行われる学校の課外のクラブ活動においては,生徒は担当教諭の指導監督に従って行動するのであるから,担当教諭は,できる限り生徒の安全にかかわる事故の危険性を具体的に予見し,その予見に基づいて当該事故の発生を未然に防止する措置を執り,クラブ活動中の生徒を保護すべき注意義務を負うものというべきである。」
 「落雷による死傷事故は,平成5年から平成7年までに全国で毎年5〜11件発生し,毎年3〜6人が死亡しており,また,落雷事故を予防するための注意に関しては,平成8年までに,本件各記載等の文献上の記載が多く存在していたというのである。そして,更に前記事実関係によれば,A高校の第2試合の開始直前ころには,本件運動広場の南西方向の上空には黒く固まった暗雲が立ち込め,雷鳴が聞こえ,雲の間で放電が起きるのが目撃されていたというのである。そうすると,上記雷鳴が大きな音ではなかったとしても,同校サッカー部の引率者兼監督であったB教諭としては,上記時点ころまでには落雷事故発生の危険が迫っていることを具体的に予見することが可能であったというべきであり,また,予見すべき注意義務を怠ったものというべきである。このことは,たとえ平均的なスポーツ指導者において,落雷事故発生の危険性の認識が薄く,雨がやみ,空が明るくなり,雷鳴が遠のくにつれ,落雷事故発生の危険性は減弱するとの認識が一般的なものであったとしても左右されるものではない。なぜなら,上記のような認識は,平成8年までに多く存在していた落雷事故を予防するための注意に関する本件各記載等の内容と相いれないものであり,当時の科学的知見に反するものであって,その指導監督に従って行動する生徒を保護すべきクラブ活動の担当教諭の注意義務を免れさせる事情とはなり得ないからである。」
学校のクラブ活動中における担当教諭の注意義務を重くとらえた判決であり、時代の流れを象徴する注目すべき判断と言えよう。
(最高裁HP)

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2006年03月13日
 ■ マンホール用ステップ事件

 不正競争防止法2条1項1号の該当性につき争われた事件につき、東京地裁は、「商品の形態が商品の技術的な機能及び効用に由来する場合であっても、他の形態を選択する余地がある中から客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有する形態を採用し、その商品の形態自体が特定の出所を表示する二次的意味を有するに至る場合には、商品の技術的な機能及び効用に由来することの一事をもって不正競争防止法2条1項1号にいう『商品等表示』に該当しないということはできない」と判示した。
(判例タイムズ1199号269頁)

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2006年03月07日
 ■ 社会保険庁職員過労死事件

 社会保険庁の職員が自殺した事件につき、裁判所は、「課長は、通常の注意をもってすれば、電話相談係における被災者の超過勤務、担当業務及び職場環境の実態を正確に認識することができ、直ちにこれに対する具体的措置を講ずべきことが可能であった。・・・悪化しつつあった被災者のうつ病に配慮することなく、さらに過重な業務を強いられる人事係への配属換えをしたものと認められる」「被災者に心身の健康相談を実施して休暇と取らせたり、異動についての希望聴取を行い、心身の状態に適した配属先への異動を行うなどの対応を採るこてゃ容易であったといえるし、そのような対応を採っていれば、これにより被災者のうつ病の重症化とこれに基づく自殺という結果の発生を避けることは可能であった」と認定し、遺族らの請求を認めたものである。
過労自殺に関する使用者の安全配慮義務に関する一事例である。
(判例時報1915号108頁)

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