« 2005年12月 | トップページ | 2006年02月 »

2006年01月30日
 ■ 「改正独禁法の論点から(上)」 白石忠志教授

平成18年1月4日から施行された改正独禁法の減免制度を除いた課徴金制度に関わる論点、すなわち、?不当利得との関係、?対価要件の拡張、?支配型私的独占の課徴金対象化、?算定率等に関する簡略な解説がなされている。
(NBL825号14頁)

投稿時間 : 12:00 個別ページ表示

2006年01月26日
 ■ 「オレオレ詐欺」預金払戻代位請求事件

いわゆる「オレオレ詐欺」の被害者が口座名義人に対する不当利得返還請求権を保全するために、同口座名義人の有する預金の払戻請求権の代位行使の可否が争われた事件である。
東京地裁は、「C及びDは銀行口座の売買等を行い、一連のオレオレ詐欺グループと関わりを有する者であることが推認され、それによるならば、C及びDはオレオレ詐欺グループによって被害を被った多数の被害者に対して多額の不当利得返還債務等を負っている可能性が高く、その他本件に顕れた一切の事情を総合すると、同人らの無資力を推認することができると解される」として、不当利得返還請求権を保全するため、預金債権の払戻請求権を代位行使することを認めたものである。
正義にかなった妥当な判決である。
(金融法務事情1760号40頁)

投稿時間 : 12:00 個別ページ表示

2006年01月25日
 ■ NHK「武蔵 MUSASHI」事件

NHKの大河ドラマ「武蔵 MUSASHI」が黒澤明監督の「7人の侍」の著作権を侵害したものであるかどうかが争われた事件である。
本件に関し、知財高裁は、最高裁平成13年6月28日判決を引用した上で、「前記番組が前記映画との間で有する類似性ないし共通点は結局はアイデアの段階の類似点ないし共通点に過ぎないものであり、前記映画又はその脚本の表現上の本質的特徴を前記番組又はその脚本から感得することはできないというべきであるから、前記番組が黒澤明監督の有する前記著作権(翻案権)を侵害するものではない」と判示した。
(判例時報1911号138頁)

投稿時間 : 12:00 個別ページ表示

2006年01月23日
 ■ 「大阪地裁(本庁)における民事執行事件の概況」 後藤慶一郎判事

平成17年11月までの大阪地裁執行部(第14民事部)における事件処理の状況等につき紹介されている。財産開示制度については、法律施行後平成17年11月までの累計件数は212件であり、開示義務者の出頭率は5割を超えているとされている。過料事件については、平成17年、財産開示期日に債務者が出頭しなかった62件のうち、22件と、出頭しながら宣誓を拒絶した1件について立件されたと紹介されている。
(民事法情報 232号22頁)
より実効性ある制度にするための改正を考えるべきであろう。

投稿時間 : 12:00 個別ページ表示

2006年01月17日
 ■ 「裁判所専門部の事件処理の実情」 東京地裁判事他

知的財産高等裁判所、東京地裁商事部、東京地裁保全部、東京地裁医療部、東京地裁破産再生部、東京地裁執行部、東京地裁調停・借地非訟・建築部、東京地裁民事第25部(大合議部)、東京地裁労働部、東京地裁知的財産権部、東京地裁刑事租税部の実情につき、特集が組まれている。
(NBL824号6頁以下)

投稿時間 : 12:00 個別ページ表示

2006年01月16日
 ■ 三越株主代表訴訟事件

株式会社三越の株主である原告が、取締役に対し、千葉興銀等に対し損害賠償請求を行わなかったことにつき、善管注意義務違反の存否が争われた事件である。
本件に関し、東京地裁(平成16年7月28日)は、「会社が特定の債権を有し、ある一定時点においてその全部又は一部の回収が可能であったにもかかわらず、取締役が適切な方法で当該債権の管理・回収を図らずに放置し、かつ、そのことに過失がある場合において、取締役に善管注意義務違反が認められる余地があるというべきである」もっとも、債権管理・回収の具体的方法については、債権の存在の確度、債権行使による回収の確実性、回収可能利益とそのためのコストとのバランス、敗訴した場合の会社の信用毀損のリスク等を考慮した専門的かつ総合的判断が必要となることから、その分析と判断には、取締役に一定の裁量が認められると解するのが相当である」「取締役の裁量の逸脱があったというためには、取締役が訴訟を提起しないとの判断を行った時点において収集された又は収集可能であった資料に基づき、?当該債権の存在を証明して勝訴し得る高度の蓋然性があったこと、?債務者の財産状況に照らし勝訴した場合の債権回収が確実であったこと、?訴訟追行により回収が期待できる利益がそのために見込まれる諸費用等を上回ることが認められることが必要」「これに加えて、、、訴訟提起を行った場合に会社が現実に回収し得た具体的金額の立証も必要である」と判示し、本件においては勝訴し得る高度の蓋然性及び債権回収の確実性があったとは認められないとして、原告の請求を棄却したものである。なお、東京高裁も控訴を棄却し、最高裁も上告棄却したため、判決が確定した。
(金融法務事情1759号62頁)

投稿時間 : 12:00 個別ページ表示

2006年01月13日
 ■ 翻訳共同著作物事件

共同著作物(著作権法2条1項12号)に該当するかどうかが争われた事件であるが、京都地裁は、?原告が、口頭で本件原著作物の翻訳を語るという方法で行われているに過ぎないこと、?2行以上の部分に対する指摘については下線等による注意換気のみで具体的な修正の指摘がないものがほとんであること、?どのように翻訳に反映されたのかについて確認していないこと、?翻訳という作業は、翻訳原稿を作成し、同原稿について推敲や校正を繰り返すことによって完成されるものであるところ、本件原著作物の翻訳原稿の作成、推敲及び校正の作業を行ったのは被告であり、原告自らが翻訳原稿の作成等の作業を行ったことはない等の事実認定を行い、「原告の関与が、本件著作物一の表現において自己の思想又は感情を創作的に表現したといえる程度のものであったとは認められない」と判示した。
(判例時報1910号154頁)

投稿時間 : 12:00 個別ページ表示

 ■ 小学校記念文集編集著作物事件

小学校記念文集からの引用が問題となった事件であるが、東京地裁は、「編集著作物の著作者の権利が及ぶのは、あくまで編集著作物として利用された場合に限るのであって、編集物の部分を構成する著作物が個別的に利用されたにすぎない場合には、編集著作物の著作者の権利はこれに及ばないと解すべきである」「編集著作物はその素材の選択又は配列の創作性ゆえに著作物と認められるものであり、その著作権は著作物を一定のまとまりとして利用する場合に機能する権利にすぎず、個々の著作物の利用について問題が生じた場合には、個々の著作物の権利者が権利行使をすれば足りる」「編集物の一部分を構成する個々の著作物の利用に際しても編集著作物の著作者の権利行使を許したのでは、個々の著作物の著作者の権利を制限することにもなりかねず、著作権法12条2項の趣旨に反することになる」と判示した。著作権法の解釈としては、妥当であろう。
(判例時報1910号137頁)

投稿時間 : 12:00 個別ページ表示

2006年01月12日
 ■ 「改訂 競売不動産評価マニュアル」 東京競売不動産評価事務研究会編

判例タイムズ1193号の臨時増刊号であり、不動産評価の判断基準、手法などにつき説明がなされている。

投稿時間 : 12:00 個別ページ表示

 ■ 販売管理システム瑕疵事件

販売管理システムに関する請負契約の不履行が争われた事件である。東京地裁は、まず、当日入荷の引当処理時間につき「本件規模のシステムの場合に通常要求される一括在庫引当処理の一般的仕様は、数十秒からせいぜい1、2分程度」であり、「テストデータ300件ですら処理時間に44分も要するようなシステムは、およそ本件契約の内容に適合しないものというほかない」とした。次に、排他制御による「待ち」に関し、「本件システムは、数時間を要する一括在庫処理中には、一切、他の商品マスタを利用する処理ができず」「実際の業務において使用に耐えないことは明白である」とした。そして、「本件各不具合のうち、少なくとも一括在庫引当処理及び排他制御の問題については、これをもって、およそ被告が、原告に対し、システムを納入していないとまでいえるかはともかくとして、契約の目的を達成することのできない重大な瑕疵に該当する」と判示した。
(判例タイムズ1194号171頁)

投稿時間 : 12:00 個別ページ表示