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2007年07月31日
 ■ 民事再生手続中の詐害行為取消権の行使

東京地裁平成19年3月26日

民事再生手続進行中の詐害行為取消権の行使につき、裁判所は、「再生手続開始後は、詐害行為や否認すべき行為があると考える債権者は、監督委員や裁判所に対して否認権の行使を促せば足りる者と考えられる。行使すべき重要な否認権を行使しないことを前提とした再生債務者の財産状況を基礎として作成された再生計画は、再生債権者の一般の利益に反する(民事再生法174条2項4号)ものとして、裁判所の認可が得られず再生の目的を達することができないものと考えられ、監督委員や裁判所もこの点を考慮して否認権の行使の当否を検討するはずであるからである」と判示し、再生債権者は再生債権に基づき詐害行為取消権を行使することはできないと判示した。

(判例時報1967号105頁)

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2007年07月24日
 ■ 不当利得の返還義務の範囲

平成19年3月8日最高裁判決

株式の売却に伴う前主の不当利得につき、最高裁は、「受益者が法律上の原因なく代替性のある物を利得し、その後これを第三者に売却処分した場合、その返還すべき利益を事実審口頭弁論終結時における同種・同等・同量の物の価格相当額であると解すると、その物の価格が売却後に下落したり、無価値になったときには、受益者は取得した売却代金の全部又は一部の返還を免れることになるが、これは公平の見地に照らして相当ではないというべきである。また、逆に同種・同等・同量の物の価格が売却後に高騰したときには、受益者は現に保持する利益を超える返還義務を負担することになるが、これも公平の見地に照らして相当ではなく、受けた利益を返還するという不当利得制度の本質に適合しない。そうすると、受益者は、法律上の原因なく利得した代替性のある物を第三者に売却処分した場合には、損失者に対し、原則として、売却代金相当額の金員の不当利得返還義務を負うと解するのが相当である。」と判示した。

(判例時報1965号64頁)

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2007年07月11日
 ■ 取締役の善管注意義務違反が問題となった事例

平成18年11月9日東京地裁判決

取締役が締結したコンサルティング契約及び調査委託契約の是非が問われた事案につき、裁判所は、「いわゆる経営判断にほかならないから、今後の事業展開の前提となる調査分析又は事業展開のための広報活動を目的とするコンサルティング契約の締結及び報酬の支払に係る取締役の判断の適法性を判断するにあたっては、当時の会社の状況及び会社を取り巻く情勢を前提として、取締役の判断に許容された裁量の範囲を超えた善管注意義務違反があるか否か、すなわち、当該契約の締結が必要であるという取締役の判断が著しく合理性を欠くものであったか否か、報酬の支払が著しく不相当なものであったか否かという観点から検討がされるべきである」とした上で、「・・・契約の各締結及び報酬の各支払が、被告の裁量の範囲を超え、善管注意義務に違反するものであると認めることはできないが、本件各調査契約については、それが原告にとって必要な契約であると認めることはできず、その契約の締結及び報酬の支払が善管注意義務に違反するものであるというほかない」と判示した。

(判例タイムズ1239号309頁)

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2007年07月06日
 ■ ダスキン事件に見る信頼回復義務

ダスキン事件高裁判決で取締役に課された信頼回復義務
 ー大阪高判平成18・6・9にみるクライシスメネジメントのあり方 弁護士竹内 朗

未認可添加物が混入した肉まんを販売したことに関する取締役の責任が争われた株主代表訴訟に関する評釈である。判決は、「一審被告らは、本件混入や本件販売継続の事実がM側からマスコミに流される危険を十分認識しながら、それには目をつぶって、あえて、『自ら積極的には公表しない』というあいまいな対応を決めたのである。そして、これを経営判断の問題であると主張する。しかしながら、それは、本件混入や本件販売継続及び隠ぺいのような重大な問題を起こしてしまった食品販売会社の消費者及びマスコミへの危機対応としては、到底合理的なものとはいえない」「一審被告らはそのための方策を取締役会で明示的に議論することもなく、『自ら積極的には公表しない』などというあいまいで、成り行き任せの方針を、手続き的にもあいまいなままに黙示的に事実上承認したものである。それは、到底、『経営判断』というに値しない」としたものであるが、経営判断原則による免責を検討したものの、本件では、経営判断として著しく不合理であり、かつ、リスク分析のプロセスも履践していないので、結果として免責できなかったと解説している。リピュテーション・リスクの管理が極めて重要であることを示唆した事例である。

(NBL860号30頁)

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