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2007年07月06日

ダスキン事件に見る信頼回復義務

ダスキン事件高裁判決で取締役に課された信頼回復義務
 ー大阪高判平成18・6・9にみるクライシスメネジメントのあり方 弁護士竹内 朗

未認可添加物が混入した肉まんを販売したことに関する取締役の責任が争われた株主代表訴訟に関する評釈である。判決は、「一審被告らは、本件混入や本件販売継続の事実がM側からマスコミに流される危険を十分認識しながら、それには目をつぶって、あえて、『自ら積極的には公表しない』というあいまいな対応を決めたのである。そして、これを経営判断の問題であると主張する。しかしながら、それは、本件混入や本件販売継続及び隠ぺいのような重大な問題を起こしてしまった食品販売会社の消費者及びマスコミへの危機対応としては、到底合理的なものとはいえない」「一審被告らはそのための方策を取締役会で明示的に議論することもなく、『自ら積極的には公表しない』などというあいまいで、成り行き任せの方針を、手続き的にもあいまいなままに黙示的に事実上承認したものである。それは、到底、『経営判断』というに値しない」としたものであるが、経営判断原則による免責を検討したものの、本件では、経営判断として著しく不合理であり、かつ、リスク分析のプロセスも履践していないので、結果として免責できなかったと解説している。リピュテーション・リスクの管理が極めて重要であることを示唆した事例である。

(NBL860号30頁)