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2007年01月30日
 ■ 洗浄処理剤発明者事件

 製薬会社における洗浄処理剤に関する発明者につき争われた事件につき、東京地裁は、「『発明』とは『自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの』をいうから(特許法2条1項)、真の発明者(共同発明者)といえるためには、当該発明における技術的思想の創作行為に現実に加担したことが必要である。したがって、具体的着想を示さずに、単なるアイデアや研究テーマを与えたにすぎない者などは、技術的思想の創作行為に現実的に加担したとはいえないから、真の発明者ということはできない」と判示し、原告の請求を棄却した。
(判例タイムズ1225号301頁)

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2007年01月24日
 ■ 宇宙開発事業団プログラム著作権事件

 ロケット及び人工衛星の制御プログラムに関する著作権の帰属が争われた事件につき、東京地裁は、「原告は、本件プログラム一の形成に当たって、定式化、アルゴリズム、入力データ、出力仕様などの技術的資料を提示するとともに、被告CRCの技術者らとともに、ソフト機能の検証及び確認を行ったものであるが、プログラムの具体的記述に原告の思想又は感情が創作的に表現されたと認めるに足りる証拠はなく、これらの諸活動をもって、原告の思想又は感情を創作的に表現すると評価される行為ということはできない」等と判示し、著作権及び著作者人格権が原告にあるとの確認を求めた請求を棄却した。
(判例時報1949号113頁)

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2007年01月23日
 ■ Yahoo!BB情報漏洩事件

 Yahoo!BBの顧客情報が漏洩した事件につき、裁判所は、「被告BBテクノロジーは、本件リモートメンテナンスサーバーを設置して本件顧客データベースサーバー等のサーバーへのリモートアクセスを行うことを可能にするに当たり、外部からの不正アクセスを防止するための相当な措置を講ずべき注意義務を怠った過失があり、同過失により本件不正取得を防ぐことができず、原告らの個人情報が第三者により不正に取得されるに至ったというべきである。したがって、同被告は、原告らに対し、本件不正取得により原告らの被った損害を賠償すべき不法行為責任がある」とした上で、「1月のデータに含まれていた原告らの個人情報は秘匿されるべき必要性が必ずしも高いものではなかったこと、被告BBテクノロジーが、本件恐喝未遂事件後、顧客情報の外部流出について発表を行い、不正取得されたことが確認できた顧客に対してその旨連絡するとともに、本件サービスの全会員に500円の金券を交付するなどして謝罪を行う一方、顧客情報についてのセキュリティ強化等の対策をとっていることといった本件に現れた一切の事情を考慮すると、原告らの精神的苦痛に対する慰謝料としては1人あたり5000円と認めるのが相当である」と判示した。
(判例時報1948号122頁)

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2007年01月22日
 ■ 「特集 「学納金返還請求」最高裁判決を読んで」 落合誠一教授他

 「本件不返還特約が,その目的,意義に照らして,学生の大学選択に関する自由な意思決定を過度に制約し,その他学生の著しい不利益において大学が過大な利益を得ることになるような著しく合理性を欠くものとまでは認め難く,公序良俗に反するものとはいえない。その他,本件において,本件不返還特約の効力の全部又は一部を否定すべき事情や被告大学が本件学生納付金の返還を拒むことが信義に反するというべき事情もうかがわれない。そうすると,被告大学は,原告に対し,本件授業料等について不当利得返還義務を負わないというべきである」とした最高裁に関する学者、実務家の評釈が掲載されている。(NBL849号8頁)

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2007年01月16日
 ■ 浮世絵の模写に著作物性が認められた事例

 江戸時代の浮世絵を模写して制作した模写作品において著作物性が認められるどうかが争われた事件において、裁判所は、「模写作品に、原画制作者によって付与された創作的表現が付与されている場合、すなわち、既存の著作物である原画に依拠し、かつ、その表現上の本質的特徴の同一性を維持しつつ、その具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が原画の表現上の本質的特徴を直接感得することができると同時に新たに別な創作的表現を感得し得ると評価することができる場合には、これは前記の意味の「模写」を超えるものであり、その模写作品は原画の二次的著作物として著作物性を有するものと解すべきである」と判示した。
(判例時報1946号101頁)

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2007年01月13日
 ■ 仮差押命令と先日付振込による弁済との優劣

 第三債務者が仮差押命令の送達を受けた時点において、銀行に対して先日付による振込を依頼していた場合において、それによる弁済が有効になるかどうか争われた事件につき、最高裁は、「第三債務者は、原則として、仮差押命令の送達後にされた債務者の預金口座への振込みをもって仮差押債権者に対抗することはできないというべきであり、上記送達を受けた時点において、その第三債務者に人的又は時間的余裕がなく、振込依頼を撤回することが著しく困難であるなどの特段の事情がある場合に限り、上記振込みによる弁済を仮差押債権者に対抗することができるにすぎないものと解するのが相当である」と判示した。
(判例時報1947号58頁)

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