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2006年05月30日
 ■ 「消費者契約法を語る」 松本恒雄教授、加藤雅信教授、加藤新太郎地位方地裁所長

 消費者契約法が施行されてからの約5年間の情勢や2006年3月3日国会に提出された改正案の内容等につき、紹介されている。また、「消費者契約法関係判例リスト」として、条文に沿った形で77件の裁判例について紹介されており、便利である。
(判例タイムズ1206号4頁)

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2006年05月26日
 ■ 消費者金融会社の企業買収(M&A)における売主の表明、保証違反について、売主が買主に対する損害補償義務を負うとされた事例

 実際には元本の弁済に充当していた和解債権についての弁済金を利息に充当し、同額の元本についての貸倒引当金の計上をせず、貸借対照表上不当に資産計上していた点に関する表明、保証責任につき、東京地裁は、「企業買収におけるデューディリジェンスは、買主の権利であって義務ではなく、主としてその買収交渉における価格決定のために、限られた機関で売主の提供する資料に基づき、資産の実在性とその評価、負債の網羅性(簿外負債の発見)という限られた範囲で行われるものである。・・・本件のデューディリジェンスにおける営業貸付金の評価については、修正純資産法を採用し、一般的な手法である一部DCF法及び営業権(のれん)の考え方を採用して、将来金利収入及び将来元本返済の合理的な見積額(将来キャッシュフロー)を算定し、その現在価値を求めることとしており、和解債権についえは、和解内容のとおりに返済がなされているか否かの確認も行わず、上記生データについても、和解債権については、一般的なフォームを知るために数通の合意書を提出させるにとどめ、サンプリングで抽出された35件全部について照合を行うことはしなかったのであるが、このことについては特段の問題はない。」「財務諸表等が会計原則に従って処理がなされていることを前提としてデューディリジェンスを行ったことは通常の処理であって、このこと自体は特段非難されるべきでない。」「原告が、わずかな注意を払いさえすれば、本件和解債権処理を発見し、被告らが本件表明保証を行った事項に関して違反していることを知り得たということはできないことは明らか」であると判示した。
(金融法務事情1770号99頁)

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2006年05月25日
 ■ 「通信を利用した放送と著作権法上の課題」 齋藤浩貴弁護士

 IPマルチキャスト放送について、「自動公衆送信」ではなく、著作権法上有利な取扱を受ける有線放送事業者と解釈することができないか、及び現行法上の有線放送と同じ取扱とする法改正をなすべきでなはないかという点について論じられている。いわゆる「放送と通信を巡る問題」と呼ばれているテーマである。
(NBL833号27頁)

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2006年05月23日
 ■ インターネット上における商品売買の契約成立時期

 ヤフー株式会社が解説するショッピングサイトにおいて、パソコンに関する売買契約が成立したか否かが争われた事件であるが、控訴審である東京地裁(第1審東京簡裁)は、「インターネットのショッピングサイト上に商品及びその価格等を表示する行為は、店頭で販売する場合に商品を陳列することと同様の行為であると解するのが相当であるから、申込の誘引に当たるというべきである。そして、買い手の注文は申込みに当たり、売り手が買い手の注文に対する承諾をしたときに契約が成立するとみるべきである」「受注確認メールは、被控訴人の承諾と認めることはできないから、これをもって契約が成立したと見ることはできない」と判示した。
(判例時報1922号105頁)

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2006年05月22日
 ■ 賃借人が負う現状回復義務の範囲

 住宅供給公社との特定有料賃貸住宅の賃貸借契約における現状回復義務の範囲につき、最高裁は、「建物の賃借人において生ずる通常損耗についての現状回復義務を負わせるのは、賃借人に予期しない特別の負担を課すことになるから、賃借人に同義務が認められるためには、少なくとも、賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか、仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には、賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、それを合意の内容としたものと認めるなど、その旨の特約(「通常損耗補修特約」)が明確に合意されていることが必要であると解するのが相当である」と判示した。
(判例時報1921号61頁)

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2006年05月10日
 ■ チョコエッグ・フィギュア事件

 チョコレートの中にカプセルが入っている「チョコエッグ」と呼ばれる菓子についての著作権侵害が争われた事件である。裁判所は、「応用美術であっても、実用性や機能性とは別に、独立して美的鑑賞の対象となるだけの美術性を?するに至っているため、一定の美的感覚を備えた一般人を基準に、純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評価される場合は、「美術の著作物」として、著作権法による保護の対象となる場合があるものと解するのが相当である」とし、本件動物フィギュアについて、「実際の動物の形状、色彩等を忠実に再現した模型であり、動物の姿勢、ポーズ等も、市販の図鑑等に収録された絵や写真に一般的に見られるものにすぎず、制作に当たった造形師が独自の解釈、アレンジを加えたというような事情は見当たらない」「制作者の個性が強く表出されているということはできず、その創作性は、さほど高くないといわざるを得ない」として、著作物には該当しないとしたが、本件妖怪フィギュアについては、「一定の美的感覚を備えた一般人を基準に、純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評価されるものと認められるから、応用美術の著作物に該当する」と判示した。
(判例タイムズ1205号254頁)

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2006年05月08日
 ■ 「ヒューマン・リソース(HR)と法 ー労働法最前線 第7回 公益通報者保護法と内部告発」 野田進教授

 2006年4月1日より施行されている公益通報者保護制度に関する概要が説明されている。「企業としては、組織運営上の法律遵守を担保するためにも、後述のように内部通報制度を整備しておくことが重要であり、このようなヘルプラインが準備されているときには、まず内部通報によるべきである。しかし、この点は告発事実との関連で判断せざるを得ず、重大かつ急迫の危険をもたらす告発事実については、内部通報を経なくても告発の違法性は阻却されるといえよう」と指摘されている。
(NBL832号81頁)

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2006年05月01日
 ■ 「弁護士法に基づく照会と金融機関の秘密保持義務 ー大阪地判平18.2.22の紹介ー」 鈴木秋夫弁護士

 いわゆるヤミ金業者からの借主が、相手方の正確な氏名、住所等を調査するためには、預金口座が開設されている金融機関に対して弁護士法23条の2に基づく照会請求を行うことが効果的ないし不可欠であるが、他方で、金融機関は顧客との間で秘密保持義務を負っているため、紹介請求に応じて情報を開示することが許されるかどうかが争われた事件についての解説である。
 「本判決の判断基準に従えば、今後、金融機関がいかなる要件のもとに顧客の特定に資する情報の開示を求める23条照会または調査嘱託に対して報告する義務を負うのかについての解釈及び金融実務における一定の運用基準が確立された場合には、金融機関が報告を拒否したことについて過失の存在が認定されることもあり得る」と論じられている。今後の判断にも注目されるところである。
(金融法務事情1769号26頁)

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