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2006年05月26日

消費者金融会社の企業買収(M&A)における売主の表明、保証違反について、売主が買主に対する損害補償義務を負うとされた事例

 実際には元本の弁済に充当していた和解債権についての弁済金を利息に充当し、同額の元本についての貸倒引当金の計上をせず、貸借対照表上不当に資産計上していた点に関する表明、保証責任につき、東京地裁は、「企業買収におけるデューディリジェンスは、買主の権利であって義務ではなく、主としてその買収交渉における価格決定のために、限られた機関で売主の提供する資料に基づき、資産の実在性とその評価、負債の網羅性(簿外負債の発見)という限られた範囲で行われるものである。・・・本件のデューディリジェンスにおける営業貸付金の評価については、修正純資産法を採用し、一般的な手法である一部DCF法及び営業権(のれん)の考え方を採用して、将来金利収入及び将来元本返済の合理的な見積額(将来キャッシュフロー)を算定し、その現在価値を求めることとしており、和解債権についえは、和解内容のとおりに返済がなされているか否かの確認も行わず、上記生データについても、和解債権については、一般的なフォームを知るために数通の合意書を提出させるにとどめ、サンプリングで抽出された35件全部について照合を行うことはしなかったのであるが、このことについては特段の問題はない。」「財務諸表等が会計原則に従って処理がなされていることを前提としてデューディリジェンスを行ったことは通常の処理であって、このこと自体は特段非難されるべきでない。」「原告が、わずかな注意を払いさえすれば、本件和解債権処理を発見し、被告らが本件表明保証を行った事項に関して違反していることを知り得たということはできないことは明らか」であると判示した。
(金融法務事情1770号99頁)