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2007年03月27日
 ■ 判例に学ぶ No.419」 野口恵三弁護士

 学校法人が新しい研究教育施設を建築する計画があり、下請業者が本件建具の設計納入に関する準備行為を行っていた事案につき、「原告(上告人)が本件建物の施工業者との間で本件建具の納入等の下請契約を確実に締結できるものと信頼して上記準備作業を開始したものであり、、、上記信頼に基づく行為によって原告が支出した費用を補てんするなどの代償的措置を講ずることなく被告が将来の収支に不安定な要因があることを理由として本件建物の建築計画を中止することは、原告の上記信頼を不当に損なうものというべきであり、被告は、これにより生じた原告の損害について不法行為による賠償責任を免れない」と判示した最高裁判決を紹介している。原審は、「いわゆる契約締結上の過失が問題となる場合、すなわち契約締結のための準備交渉段階において信義則が妥当する場合とは異なる」と判示したのであるが、最高裁の結論が妥当であると紹介されている。
(NBL853号55頁)

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2007年03月26日
 ■ 和解調書に基づく建物明渡請求が排除された事例

 離婚訴訟において成立した和解条項に基づく建物の明渡請求の本事案につき、裁判所は、「本件マンションの明渡しを受ける必要性が極めて少ないという事情があるにもかかわらず、他方で、原告の生活の本拠を奪い、当然の権利である慰謝料等の支払請求権について、原告に回収の見込みのない債務名義のみを残すことになるという、極めて不合理な結果が生ずることになる。」「そうすると、本件においては、被告の原告に対する本件和解条項に基づく強制執行は、もはや、自己の都合のみを優先し、原告に対して一方的に不当な結果を生ぜしめることを目的とするものであると推認すべきであって、著しく信義誠実の原則に反し、正当な権利行使の名に値しない不当なものと認めることが相当である」と判示した。
(判例タイムズ1230号335号)

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2007年03月23日
 ■ 自筆証書遺言無効事件

 本文中には、遺言者の署名捺印がなく、封筒に署名捺印があったケースにつき、裁判所は、「本件文書と本件封筒が一体のものとして作成されたと認めることができない以上、亡太郎が本件封筒の裏面に署名し、その意思に基づいて押印したかどうかを問うまでもなく、本件文書には亡太郎の署名及び押印のいずれも欠いており、本件遺言は、民法968条1項所定の方式を欠くものとして、無効である」と判示した。
(判例時報1955号41頁)

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2007年03月16日
 ■ マンション無断立入事件

 マンションの管理会社が賃料を延滞していた入居者の建物につき、賃貸借契約の条項に基づき無断で立入を行った事件につき、裁判所は、「賃料の支払や本件建物からの退去を強制するために、法的手続によらずに、原告の平穏に生活する権利を侵害することを許容することを目的とするものというべきところ、このような手段による権利の実現は、法的手続によったのでは権利の実現が不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情がある場合を除くほかは、原則として許されないというべきであって、本件特約は、そのような特別の事情のがあるとはいえない場合に適用されるときは、公序良俗に反して、無効であるというべきである」と判示した。
(判例時報1954号80頁)

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2007年03月13日
 ■ 「日本版ネーミングライツの定着・発展に向けて」 浦田和栄弁護士他2名

 野球場等の施設の愛称を付与する権利であるネーミングライツ(Naming Rights)についての解説がなされている。ネーミングライツ契約書や基本協定書なども紹介されている。(NBL852号10頁)

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2007年03月05日
 ■ ビル賃貸借における看板設置禁止請求事件

 ビル店舗における賃借人が共用部分及び公道上に無断で設置された看板等についてその設置禁止を求めた事件につき、裁判所は、「多数の賃借人が入居するビルにおいて、個々の賃借人がビルの共用部分に任意に看板等を設置できるとすれば、ビルの所在、外観及び個々の賃借物件の形状等諸般の状況を考慮して当該賃貸借契約を締結した賃借人の営業にとって支障が生ずるし、実際、他の入居者から苦情を受けている上、被告自身も、他の賃借人の看板撤去を求めていたことからすれば、本件袖看板及び本件メニュー板は、『他の入居者の営業に支障を及ぼすような』ものであるということができる」と判示した。
(判例時報1953号146頁)

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2007年03月01日
 ■ 「<特集)破産管財人の注意義務 2つの最一判平成18/12/21を読んで」 相澤光江他27名弁護士

 建物賃借人の破産管財人が賃貸人に預託していた敷金返還請求権に対して質権を設定していたにもかかわらず、破産宣告後賃貸人に賃料等を現実に支払わず、かえって敷金を充当したことにより、破産財団が破産宣告後の賃料等の支払を免れた場合につき、質権者が破産管財人に対し、不当利得の返還を求めるとともに、選択的に、上記行為は破産管財人の善管注意義務に違反するとして損害賠償を求めた事案について、各論者の評釈が紹介されている。
 破産管財人は、別除権者への弁済額を多くすることよりも、財団組入額を増加させようと考えるのが一般的であり、他方で、担保価値維持義務があるとするものであり、実務的には難しい判断が要求されるケースと言えよう。
(NBL851号14頁)

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