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2006年09月19日
 ■ 他人の飼い犬による愛犬咬殺事件

 名古屋地裁は、「被告のような高齢の女性が、J(雑種、オス、3歳)のような飼い犬を鎖につなごうとする際、飼い犬がその手をくぐり抜けるような事態が発生することは、予測可能な範囲内にあり、自宅の敷地の外に出たJが、他人の飼い犬や人に危害を加えることは起こりうる出来事であるから、、、注意を払わなければならなかったというべきである」「原告らには何らの落ち度なく、被告の一方的な過失により、原告らが家族の一員のように慈しんで育てていたR(ミニチュア・ダックス、オス、5歳)を被告の飼い犬であるJに咬殺されたこと、原告らが被った精神的苦痛は、そのことだけで非常に大きなものであったこと、原告はRの飼育に日常的に携わっており、溺愛していたこと、JがRを襲う場面を目の当たりにしていたこと、そのためRを救い得なかった呵責の念にさいなまれ、その思いをいまだに断ち切れないこと、原告自身がRを助けようとした際に負傷したことなどが認められる」として、合計66万9850円の慰謝料等の損害賠償責任を認めたものである。
(判例時報1935号109頁)

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2006年09月13日
 ■ ダスキン未認可添加物混入株主代表訴訟事件

 大阪高裁は、「現代の風潮として、消費者は食品の安全性については極めて敏感であり、企業に対して厳しい安全性確保の措置を求めている。未認可添加物が混入した違法な食品を、それと知りながら係属して販売したなどということになると、その食品添加物が実際に健康被害をもたらすおそれがあるかどうかにかかわらず、違法性を知りながら販売を継続したという事実だけで、当該食品販売会社の信頼性は大きく損なわれることにいなる。ましてや、その事実を隠ぺいしたなどということになると、その点について更に厳しい非難を受けることになるのは目に見えている。」「そのような事態を回避するために、そして、現に行われてしまった重大な違法行為によってダスキンが受ける企業としての信頼喪失の損害を最小限度に止める方策を積極的に検討することこそが、このとき経営者に求められていたことは明らかである。ところが、前記のように、一審被告らはそのための方策を取締役会で明示的に議論することもなく、「自ら積極的には公表しない」などというあいまいで、成り行き任せの方針を、手続き的にもあいまいなままに黙示的に事実上承認したものある。それは、到底、「経営判断」というに値しないものというしかない」と判示し、5億円を超える損害賠償を命じた。
(判例タイムズ1214号115頁)

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2006年09月08日
 ■ 「米国ビジネス法のダイナミクス」 ニューヨーク州・ワシントンDC弁護士渋谷年史

 ここ数年、環境保護や動物愛護等を標榜する団体が、企業やその従業員に対して様々な攻撃を行っていることが紹介されている。デモ・ピケッティング、ウェブサイト、通信手段への攻撃、財産の損壊、従業員への攻撃、取引先等への攻撃などである。それに対する企業の対応としては、禁止命令(injunctive relief)、デモ規制条例、コンサルタント、取締当局との連携、活動情報の把握、広報対策、従業員の安全などについて検討する必要がある。
(NBL840号46頁)

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2006年09月05日
 ■ 「質権の対象である特許権の価格およびその質権の価格が認定された事例(その2)」 小沢征行弁護士

 最高裁平成18年1月24日判決について紹介されている。同判決は、「特許権の適正な価額は、損害額算定の基準時における特許権を活用した事業収益の見込みに基づいて算定されるべきものであるところ、、、同事業化の努力をしていたことなどが明らかである」「事業収益を生み出す見込みのある発明として相応の経済的評価ができるものであったということができ、、、仮に損害額の立証が極めて困難であったとしても、民訴法248条により、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づいて、相当な損害額が認定されなかえればならない」と判示した。そこで、筆者は、知的財産権を実効価値ある担保として取得するには、インカムアプローチの方法での権利の評価が可能なものを担保に取るべきであるとしている。
(金融法務事情1779号4頁)

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2006年09月04日
 ■ 準備書面等の記載における名誉毀損の成否が争われた事件

 「訴訟上の主張、立証活動を、名誉毀損、侮辱に当たるとして損害賠償を認めることについては、相手方の悪性主張のための正当な訴訟活動を萎縮させて民事訴訟の本来果たすべき昨日を阻害することもあるから、慎重でなければならない。」「民事訴訟の本来の機能を阻害しないように留意しながら判断していくほかないが、主要な動機が訴訟とは別の相手方に対する個人攻撃とみられ、相手方当事者からの中止の警告を受けてもなお訴訟における主張立証に名を借りて個人攻撃を続ける場合には、訴訟における主張立証であることを理由とする違法性阻却は認められない。」「原告に生じた精神的損害の額を金銭的に評価すれば、20万円とするのが相当である。」
(判例時報1934号65頁)

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