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2006年04月27日
 ■ 破産者が破産手続中に自由財産の中から破産債権に対して任意の弁済をすることの可否が争われた事例

 地方公務員が破産宣告後、退職手当の中から共済組合に対し弁済を行った事案につき、最高裁は、「旧破産法においては、破産財団を破産宣告時の財産に固定する(6条)と規定し、破産者の経済的更生と生活保障を図っていることなどからすると、破産手続中、破産債権者は破産債権に基づいて債務者の自由財産に対して強制執行をすることなどはできないと解されるが、破産者がその自由な判断により自由財産の中から破産債権に対する任意の弁済をすることは妨げられないと解するのが相当である。もっとも、自由財産は本来破産者の経済的更生と生活保障のために用いられるものであり、破産者は破産手続中に自由財産から破産債権に対する弁済を強制されるものではないことからすると、破産者がした弁済が任意の弁済に当たるか否かは厳格に解すべきであり、少しでも強制的な要素を伴う場合には任意の弁済に当たるということはできない」と判示した。
(判例タイムズ1203号115頁)

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2006年04月25日
 ■ 企業買収(M&A)にける売主の表明、保証違反について売主が買主に対する損害補償義務を負うとされた事例

 原告は、企業買収(M&A)において、会計事務所に委任して二度にわたりデューディリジェンス(買収監査)を実施していたが、和解債権処理において水増し計上が認められた事案につき、東京地裁は、「原告が、本件株式譲渡契約締結時において、わずかの注意を払いさえすれば、本件和解債権処理を発見し、被告らが本件表明保証を行った事項に関して違反していることを知り得たにもかかわらず、漫然これに気付かないままに本件株式譲渡契約を締結した場合、すなわち、原告が被告らが本件表明保証を行った事項に関して違反していることについて善意であることが原告の重大な過失に基づくと認められる場合には、公平の見地に照らし、悪意の場合と同視し、被告らは本件表明保証責任を免れると解する余地がある」としたが、本件については、「原告が、わずかな注意を払いさえすれば、本件和解債権処理を発見し、被告らが本件表明保証を行った事項に関して違反していることを知り得たということはできない」と判示した。
(判例時報1920号136頁)

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2006年04月20日
 ■ 「判例に学ぶNo.409」 野口恵三弁護士

 「遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である」と判示した最高裁判決(平成17年9月8日)に関する簡単な解説がなされている。
(NBL831号91頁)

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2006年04月17日
 ■ 架空請求の被害者が携帯電話のレンタル会社に対して損害賠償請求を行った事例

 架空請求の被害に遭った者が、脅迫等に使用された携帯電話のレンタル会社に対して損害賠償請求を行った事案につき、京都地裁は、「平成16年8月当時、既に、携帯電話を利用した架空請求詐欺を始めとする犯罪が蔓延し、社会問題化していたことが認められる。このような状況下においては、携帯電話事業により収益を得ている事業者としては、当該携帯電話事業が犯罪遂行手段を確保し、犯罪行為を援助、助長することのないよう、販売・レンタル等の営業方法について適正を期する義務を負うというべきである。これを本件についてみると、前記のとおり、被告会社は、本来匿名による取引を予定していない携帯電話レンタル契約に際し、「山本」とのみ名乗り、名前及び住所を明らかにしない顧客に対して、漫然と携帯電話のレンタルを行い、当該携帯電話が、タカギによる不法行為の遂行のための必須の手段として用いられていたことが認められ、このような場合には、被告会社は、顧客の住所氏名を確認すべき注意義務に違反し、タカギの不法行為に加担したものとして、民法719条により原告が被った損害を賠償すべき義務を負うと解するのが相当である」と判示し、原告の請求を認容した。
(判例時報1919号132頁)

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2006年04月12日
 ■ 「大阪地方裁判所第21/26民事部と大阪弁護士会知的財産委員会との懇親会」

 近時法改正がなされた専門委員・秘密保持命令制度、特許無効理由に基づく権利行使制限の抗弁等について、大阪知財知財部裁判官と大阪で知財を専門とする弁護士との間の議論の様子が紹介されている。
(判例タイムズ1202号37頁)

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2006年04月11日
 ■ 包括根保証人の銀行に対する債務が制限された事例

 銀行が包括根保証人に対し、保証履行請求をした事案につき、東京地裁は、「保証契約締結に至った事情、当該取引の業界における一般的慣行、債権者と主たる債務者との取引の具体的態様、経過、債権者が取引にあたって債権確保のために用いた注意の程度、その他一切の事情を斟酌し、信義則に照らして合理的な範囲に保証人の責任を制限すべきものと解するのが相当でえある」とした上で、「被告から個別保証を徴求するか、保証意思の確認をすべきであったと考えられるのに、富士銀行は被告から個別保証を徴求していないし、また保証意思の確認をしたとも認めがたい」「直ちに抹消登記手続をする必要もない本件根抵当権3の抹消登記手続をした」等の事情を認定し、貸付残債権の元本額の約40パーセントを限度とすると判示した。
(金融法務事情1767号37頁)

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2006年04月07日
 ■ 「GPLv3ドラフトの概要と改訂のポイント」 上山浩弁護士、川上桂子弁理士

 オープンソースソフトウェア(OSS)ライセンスの中で最もより利用されているGPL(GNU general public license)について、2006年1月16日、次期バージョンである第3版のドラフトが公表されたことが紹介されている。第2版からの主要な変更点は、(1)ソフトウェア特許に対する防御、(2)デジタル著作権管理技術に対する抵抗、(3)他のOSSライセンスとの互換性向上の3点であるとされている。
(NBL830号10頁)

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2006年04月05日
 ■ 「メガネの愛眼」事件

 「メガネの愛眼」と称する全国チェーンを展開する原告が、「天神愛眼グループ」という標章を使用していた被告に対し、商標権侵害等を理由に差押及び損害賠償請求を求めた事件であるが、大阪地裁は、「一種の造語である『愛眼』という部分が、需要者の注意を引き、要部と認められる」とした上で、「『天神愛眼』の全体で一まとまりとして、特定の観念を生じさせない造語と理解される」とし、「天神」の部分が地名を意味するものとは認められないとし、その部分についての商標権侵害は認めなかったものである。
 また、不正競争防止法2条1項1号の該当性については肯定し、差止及び損害賠償請求の一部を認容した。
(判例時報1918号89頁)

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2006年04月03日
 ■ 矢沢永吉パチンコ遊技機事件

 パチンコ遊技機に現れる人物絵が原告のパブリシティ権の侵害となるかどうかが争われた事件につき、東京地裁は、いわゆるパブリシティ権の一般論を展開した上で、「本件人物絵の制作において原告の肖像のイメージはあったものと推認されるが、本件人物絵は、客観的に見るとある程度原告を想起させるものではあるが、原告を知る者が容易に原告であると識別し得るほどの類似性を有しない、、、人物の知名度等が本件パチンコ機の顧客吸引力に大きな影響を及ぼすとは考えがたい。、、、原告に対して法的な救済を必要とする人格的利益の侵害が生じているとは認められない」として原告の請求を棄却したものである。
(判例時報1917号135頁)

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