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2006年04月27日

破産者が破産手続中に自由財産の中から破産債権に対して任意の弁済をすることの可否が争われた事例

 地方公務員が破産宣告後、退職手当の中から共済組合に対し弁済を行った事案につき、最高裁は、「旧破産法においては、破産財団を破産宣告時の財産に固定する(6条)と規定し、破産者の経済的更生と生活保障を図っていることなどからすると、破産手続中、破産債権者は破産債権に基づいて債務者の自由財産に対して強制執行をすることなどはできないと解されるが、破産者がその自由な判断により自由財産の中から破産債権に対する任意の弁済をすることは妨げられないと解するのが相当である。もっとも、自由財産は本来破産者の経済的更生と生活保障のために用いられるものであり、破産者は破産手続中に自由財産から破産債権に対する弁済を強制されるものではないことからすると、破産者がした弁済が任意の弁済に当たるか否かは厳格に解すべきであり、少しでも強制的な要素を伴う場合には任意の弁済に当たるということはできない」と判示した。
(判例タイムズ1203号115頁)