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2013年07月14日

ブラウザキャッシュによる複製が争われた事案

「控訴人は,平成21年6月11日,同年7月17日及び同月18日の本件各アクセスの際,被控訴人がブラウザを使って本件プログラムにアクセスし,本件プログラムの複製物を被控訴人のコンピュータのハードディスクにブラウザキャッシュとして保存したことは複製権侵害であると主張する。
しかし,原判決13頁で認定したとおり,控訴人は,平成21年1月16日,被控訴人事務所において,被控訴人の取締役である A の面前で,被控訴人のコンピュータのブラウザに,本件ウェブサイトのURLを入力し,A をして本件ウェブサイトにアクセスさせ,本件プログラムにより表示されるトップ画面を閲覧させるなどしているのであるが,その際,被控訴人のコンピュータのハードディスクに本件プログラムの複製物がブラウザキャッシュとして作成されたものと推認される。
一般に,ブラウザキャッシュの目的は,一度見たウェブページを再度閲覧しようとする時に,速やかにこれを閲覧することにあり,そのために,既に閲覧したことのあるウェブページに変更のないときは,サーバからインターネットを通じて再度データの転送を受けることなく,以前のアクセスの際にハードディスクに保存したデータを使って,速やかに同じページが表示されるのが通常である。しかるに,本件サーバ上の本件プログラムが平成21年1月16日以降に変更されたことを認める証拠はないから,平成21年1月16日にウェブページであるサーバから取得され被控訴人のコンピュータのブラウザキャッシュに格納された本件プログラムの複製物が,平成21年1月16日以降,被控訴人のコンピュータ上に改めて作成されたとは直ちに認めることはできない。
したがって,被控訴人が,本件各アクセスの際,本件プログラムの複製物を被控訴人のコンピュータのハードディスクにブラウザキャッシュとして保存したとの控訴人の主張事実は,認めることができない。」
(平成25年07月02日 知的財産高等裁判所)