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2017年02月02日

犯罪歴に関する投稿記事削除請求事件

 最高裁(平成29年2月1日)は、「事業者が,ある者に関する条件による検索の求めに応じ,その者のプライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL等情報を検索結果の一部として提供する行為が違法となるか否かは,当該事実の性質及び内容,当該URL等情報が提供されることによってその者のプライバシーに属する事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度,その者の社会的地位や影響力,上記記事等の目的や意義,上記記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化,上記記事等において当該事実を記載する必要性など,当該事実を公表されない法的利益と当該URL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきもので,その結果,当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には,検索事業者に対し,当該URL等情報を検索結果から削除することを求めることができるものと解するのが相当である」という利益衡量論(一般論)を示した上で、本件事案につき、「児童買春をしたとの被疑事実に基づき逮捕されたという本件事実は,他人にみだりに知られたくない抗告人のプライバシーに属する事実であるものではあるが,児童買春が児童に対する性的搾取及び性的虐待と位置付けられており,社会的に強い非難の対象とされ,罰則をもって禁止されていることに照らし,今なお公共の利害に関する事項であるといえる。また,本件検索結果は抗告人の居住する県の名称及び抗告人の氏名を条件とした場合の検索結果の一部であることなどからすると,本件事実が伝達される範囲はある程度限られたものであるといえる。以上の諸事情に照らすと,抗告人が妻子と共に生活し,前記1(1)の罰金刑に処せられた後は一定期間犯罪を犯すことなく民間企業で稼働していることがうかがわれることなどの事情を考慮しても,本件事実を公表されない法的利益が優越することが明らかであるとはいえない。」と判示した。

 利益衡量論(一般論)に関する部分は至極当然のことであり妥当なものであると言えるが、将来的な削除基準を具体的に示しているとは言えない。本件事案は性的犯罪に関する情報であるという特殊性があり、性的被害からの防衛という社会的要請という観点から考えると公益性が相当高いと言え、この性的犯罪に関する情報である点が一定程度重視されたことは間違いないであろう。

 今後も、当該事案においてどのような犯罪に関する情報が問題となっているのか、検索キーワード等による顕出性・頻出性、時間的経過、事案の重大性等、個別事案ごとに判断せざるを得ないものと言える。