« プログラム著作権、職務著作に関する裁判例 | TOP | 民法改正案の閣議決定 »

2014年12月26日

ドライバレッジ自炊事件

平成26年10月22日知財高裁判決
(ドライバレッジ自炊事件)

事案の概要
本件は,小説家,漫画家又は漫画原作者である被控訴人らが,控訴人ドライバレッジは,顧客から電子ファイル化の依頼があった書籍について,著作権者の許諾を受けることなく,スキャナーで書籍を読み取って電子ファイルを作成し,その電子ファイルを顧客に納品しているところ,注文を受けた書籍には,被控訴人らが著作権を有する原告作品が多数含まれている蓋然性が高く,今後注文を受ける書籍にも含まれる蓋然性が高いから,被控訴人らの著作権(複製権)が侵害されるおそれがあるなどと主張した事案。

控訴人ドライバレッジによる複製行為の有無(争点1−1)について
 控訴人ドライバレッジは,独立した事業者として,営利を目的として本件サービスの内容を自ら決定し,スキャン複製に必要な機器及び事務所を準備・確保した上で,インターネットで宣伝広告を行うことにより不特定多数の一般顧客である利用者を誘引し,その管理・支配の下で,利用者から送付された書籍を裁断し,スキャナで読み込んで電子ファイルを作成することにより書籍を複製し,当該電子ファイルの検品を行って利用者に納品し,利用者から対価を得る本件サービスを行っている。
 そうすると,控訴人ドライバレッジは,利用者と対等な契約主体であり,営利を目的とする独立した事業主体として,本件サービスにおける複製行為を行っているのであるから,本件サービスにおける複製行為の主体であると認めるのが相当である。

 控訴人らは,本件サービスにおいて,「特定の」書籍の所有者(処分権者)による書籍の取得,送付がなければ,およそ書籍の電子ファイル化などすることができないことから,利用者による「特定の」書籍の取得及び送付こそが,書籍の電子ファイル化にとって「不可欠の前提行為」であり「枢要な行為」にほかならず,利用者は本件サービスを利用しなくても,利用者自ら書籍を電子ファイル化することが可能であって,控訴人ドライバレッジは,利用者自身が実現不可能な複製を可能としているのではないし,利用者が取得していない書籍や取得し得ない書籍を電子ファイル化しているものでもないから,控訴人ドライバレッジの行為が複製の実現について「枢要な行為」ということはできず,控訴人ドライバレッジは複製行為の主体ではない旨主張する。
 しかし、、、利用者が複製される書籍を取得し,控訴人ドライバレッジに電子ファイル化を注文して書籍を送付しているからといって,独立した事業者として,複製の意思をもって自ら複製行為をしている控訴人ドライバレッジの複製行為の主体性が失われるものではない。

 控訴人らは、、、本件サービスにおいて,書籍の調達,送付行為が持つ意味は大きく,利用者が,書籍の電子ファイル化を「管理」しているのであるから,スキャン行為の主体は利用者であって,控訴人ドライバレッジは利用者の「補助者」ないし「手足」にすぎず,控訴人ドライバレッジの複製行為の主体性は阻却される旨主張する。
 しかし、、、利用者が控訴人ドライバレッジを自己の手足として利用して書籍の電子ファイル化を行わせていると評価し得る程度に,利用者が控訴人ドライバレッジによる複製行為を管理・支配しているとの関係が認められないことは明らかであって,控訴人ドライバレッジが利用者の「補助者」ないし「手足」ということはできない。

 以上によれば,本件サービスにおける複製の対象,方法,複製物への関与の内容,程度や本件サービスの実態,私的領域が拡大した社会的状況の変化等の諸要素を総合考慮しても,控訴人ドライバレッジが本件サービスにおける複製行為の主体ではないとする控訴人らの主張は理由がない。

著作権法30条1項の適用の可否(争点1−2)について
 著作権法30条1項は、 峺朕妖に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とする」こと,及び◆屬修了藩僂垢觴圓複製する」ことを要件として,私的使用のための複製に対して著作権者の複製権を制限している。使用することを目的とする」る者が複製する」ことを要件として,私的使用のための複製に対して著作権者の複製権を制限している。
 そして,前記2のとおり,控訴人ドライバレッジは本件サービスにおける複製行為の主体と認められるから,控訴人ドライバレッジについて,上記要件の有無を検討することとなる。しかるに,控訴人ドライバレッジは,営利を目的として,顧客である不特定多数の利用者に複製物である電子ファイルを納品・提供するために複製を行っているのであるから,「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とする」ということはできず,上記,陵弖錣魴腓。また,控訴人ドライバレッジは複製行為の主体であるのに対し,複製された電子ファイルを私的使用する者は利用者であることから,「その使用する者が複製する」ということはできず,上記△陵弖錣盞腓。
したがって,控訴人ドライバレッジについて同法30条1項を適用する余地はないというべきである。