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2010年06月28日
 ■ メディアを通じた企業情報提供

機ヾ覿半霾鵑鮟笋詭簑
1) 企業情報の提供サービス
・新規開拓、販路拡大、新規取引可否判断、与信管理、取引継続可否検討、取引条件設定・見直し、資金調達等のために、正確な企業情報の取得が不可欠。
2) インターネット・メディアにおける規制
2009年3月10日、米国証券取引委員会(Securities and Exchange Commission)は、「Operation Spamalot」(Spamalot作戦)と呼ぶ株価操作スパム撲滅プロジェクトの一環として、株価操作を目的としたスパム・メールの対象となった35社の株取引停止に踏み切った。
一般に、インターネット・メディア上での情報操作で利用される手口としては、
(1)スパム・メールによる虚偽情報の流布、(2)ファイナンス系の掲示板へのインサイダー情報の書き込み、(3)Webページやブログでの虚偽情報の流布などがある。
ネット上には多くの情報があふれており、個人投資家が情報の真偽を判断するのは難しく、株取引のオンライン化によって無防備な個人投資家が増加したこと等の背景事情がある。
供.ぅ鵐拭璽優奪函Ε瓮妊ア等による情報開示(disclosure)
1 基本情報の開示
1) 法人組織(商法8条以下、商業登記法)
  商号、本店所在地、役員名、機関構成  → 商業登記簿謄本(全部事項証明書)
2) 計算書類(会社法431条以下)
帳簿の閲覧・謄写、広告等  → 書類の備え置き、新聞広告等
「財務諸表」(連結財務諸表、中間財務諸表)とは
 貸借対照表(B/S)、損益計算書(PL)、キャッシュ・フロー計算書
 利益処分計算書・損益処理計算書、附属明細表
◎資金調達し→資産への投資を行い→売上げが立ち(利益が生まれ)→再投資
 → 期間通算としてのフローとストックの状況を把握する。
◎粉飾のパターン 〇饂魂畭膕宗↓負債過少化、収益過大化、し佝餡畩化
→ 総売上利益率(粗利率)の変化、営業外収益の増加など各業界における平均的数値との比較や過去何期分かとの比較分析を行う。
2 金融商品取引法における情報開示
 1) 情報開示制度の概要
・対象 ・・・有価証券の投資者となりうるあらゆる個人・法人
 財務諸表・連結財務諸表 → 公衆の縦覧(財務局、証券取引所、証券業協会)
・発行市場における開示
  発行会社 →   金融当局    有価証券通知書
           投資家全体   有価証券届出書(間接開示)
           被勧誘者    目論見書(直接開示)
・流通市場における開示
 イ) 定期的開示書類
有価証券報告書、半期報告書、自己株券買付状況報告書(金庫株)
 ロ) 有価証券報告書の提出義務者
   上場会社、店頭登録会社、株主数500名以上の会社等
 ハ) 有価証券報告書の提出時期
   各事業年度経過後3ヶ月以内
 ニ) 有価証券報告書の内容
  「企業情報」として、企業の概況、事業の状況、設備の状況、提出会社の状況、経理の状況、株式事務の概要、提出会社の参考情報
   + 公認会計士または監査法人の監査証明
 2) 趣旨  
 金融商品取引法とは、証券取引法などを抜本的に改正し成立したもので、様々な金融商品について、開示制度、取扱業者に係る規制を定めることなどにより、国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資することを目指した法律。
いわゆる「貯蓄から投資へ」の環境作りを行う法律。
 3) 開示制度(ディスクロージャー)
 イ) 四半期開示の法定化
ロ) 財務報告に係る内部統制の強化
   ※ 適正開示に関する経営者の確認 等
ハ) 公開買付(TOB)制度の見直し
ニ) 大量保有報告制度の見直し
    ※ 特例報告期限  3ヶ月毎15日以内 → 2週間毎5営業日以内
 4) 内部統制ルールの確立
金融商品取引法が成立したことにより、すべての上場企業は、2009年3月からの決算以降、「内部統制報告書」を提出する義務を負うことになった。

3 EDINET(エディネット)
 1) 内容
 Electronic Disclosure for Investors' NETwork(金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム)とは、開示書類等に記載すべき情報をインターネットにより財務省の財務局等に提出し、提出された開示情報をインターネット等を利用して広く一般に提供するシステムであり、金融庁より行政サービスの一般として提供されている。
 2) 意義
従来、紙媒体で提出されていた有価証券報告書や有価証券届出書、公開買付届出書等の開示書類の提出、公衆縦覧等の一連の手続が電子化されることで、…鷭于饉劼了務負担が軽減されるとともに、投資家が企業情報へ公平かつ迅速にアクセスすることが可能となり、証券市場の効率性が高まる。
 3) 経緯
 平成16年6月1日からは有価証券報告書や有価証券届出書をEDINETにより提出することが原則として義務化され、平成20年3月17日より、XBRL(財務情報を効率的に作成・流通・利用できるよう、国際的に標準化されたコンピュータ言語)を用いた新システムに移行。
http://www.fsa.go.jp/search/20080304-1.html

4 金融商品取引法におけるインサイダー取引規制
 1) インサイダー取引とは
 会社の取締役、従業員、その他会社の重要な情報(内部者情報)にアクセスしうる者(内部者)が、その情報の公表前に行う、当該会社の株券その他の証券等(特定株券等&関連株券等)の売買等を行う取引
 2) 12時間ルール
 ―斗彁実を公開する権限を有する者(代表取締役や広報担当者等)が、国内において時事に関する日刊総合誌を販売する新聞社、その新聞社に情報を配信する通信社、国内において産業・経済に関する日刊総合紙を販売する新聞社、NHK、一般放送事業者のうち、2社以上に対して重要事実を公表して、12時間が経過したとき、インサイダー取引規制の対象とはならない。
 3) 証券取引法施行令及び取引規制府令の改正(平成16年2月1日より施行)
上場会社等が、その発行する有価証券を上場する証券取引所(店頭登録会社の場合は、証券業協会)の規則で定めるところにより、当該証券取引所に重要事実を通知し、これが当該証券取引所において公衆の縦覧(HPへの掲載)に供されたときに、重要事実が公表されたことになる。
  Cf.東京証券取引所「適時開示情報閲覧サービス」
http://www.tse.or.jp/listing/disclosure/index.html

掘.泪后Ε瓮妊アを通じた情報提供
 1 風説の流布の禁止
・東天紅株証券取引法違反事件(東京地裁平成14年11月8日、判時1828号142頁)
「公開買付けを行う場合には,日刊新聞紙に,当該公開買付けの目的,買付けの価格,買付予定の株数,買付けの期間等を記載した公開買付開始公告を掲載するとともに,その日に,買付けの価格,買付予定の株数,買付けの期間等を記載した公開買付届出書を大蔵大臣(当時)に提出し,大蔵省,公開買付対象会社,証券取引所等で公衆の閲覧に供されることとなっている(同法27条の3参照)。また,公開買付けを行う場合の株券等の保管や買付代金支払等の事務を行うことができる者も証券会社又は銀行等の金融機関に限定されており(同法27条の2第4項参照),そのため,公開買付けを行おうとする者は,必ず特定の証券会社や銀行との間で業務委託契約を締結して受託金融機関を指定しなければならず,さらに,金融機関への委託が強制されている上記の事務以外にも,公開買付けに当たっては金融や証券に関する高度の知識と経験を要する作業が必要となるため,その準備作業全般にわたって金融機関の助力を受けなければ,公開買付けを行うことができないのが実情であるとされる。そして,当然のことながら,金融機関においては,顧客から公開買付けに関する案件の依頼があった場合,その計画の内容,資金手当の確実さ,顧客の信用力等を慎重に検討し,法的ないし経済的リスク等を種々勘案した上で,業務委託契約を締結するか否かを判断し決定するものであって,依頼があれば直ちにこれを受諾するというものでないことはいうまでもない。しかも,証券会社等が顧客からの依頼に応じて公開買付けの受託金融機関になった場合でも,その後の準備作業として,弁護士や公認会計士の選任,公開買付けに必要な各種書類の作成,対象会社の分析による公開買付価格の決定等の多くの作業が必要であり,そのような準備作業を経た上で,最も有効かつ適切な時機を見計らって記者発表を行うとともに,上記の公告や公開買付届出書の提出といった正式な公開買付けの手続に入ることになるのである。」
「被告人,G,F及びHは,実際には甲株の公開買付けを行う意思など全くなかったのに,公開買付けを行う旨の記者発表をしてこれを公にすることにより,甲株の株価を騰貴させて(このような情報が公表された場合,事柄の性質上,証券市場が直ちにこれに反応して,甲株の株価が騰貴するということは見やすい道理であり,本件に際しても,直ちにこれが報道された結果,その翌日には,実際に甲株の株価が騰貴しているのは,上記2の(3)で認定したとおりである。),それにより,差し当たり,信用取引により株取引を行うに当たり委託保証金の代用有価証券として証券会社に差し入れていた甲株の担保価値を増加させることにより,信用取引枠を拡大させて更に株取引を行い得る状況を作出し,さらには,時機をみて,甲株を買値より高値で売り抜けることによって利益を得ることなどを目論んで,すなわち,被告人らが,甲株の相場の変動を図る目的をもって,意思を相通じて共謀の上,互いに協力して,甲株の公開買付けを行うという架空の計画を標榜し,その旨の記者発表をするなどという虚偽の内容の本件文書を,東京証券取引所内の記者クラブの幹事社にあててファクシミリ送信することにより,これを不特定多数の者に伝達され得る状態に置いたものと認めることができる。したがって,このような被告人らの行為が,証券取引法158条にいう風説の流布に該当することは明らかである。」
(量刑の理由)「本件一連の犯行は,被告人らが,株取引を行うに当たり,投資者の保護等のための必要な情報を開示しなかったり,逆に,株の大量保有者や公開買付けに関する虚偽の情報を所轄官署に報告し,あるいは,報道機関に伝えて発表し,健全な株式市場を確立して株取引の公正を確保しようという証券取引法の目的を著しく阻害したものである。とりわけ,判示第2及び第3の各犯行については,被告人らの発表した虚偽の情報により,甲株の株価が,いったんいわゆるストップ高になるほどに騰貴した後,まもなく一転して急落し,売り気配のまま取引ができない状態まで生じたことがうかがわれるなど,株式市場が大きく混乱したものであって,その結果,多くの投資者を惑わせたことは推察に難くなく,ひいては証券市場に対する信頼を揺るがせたばかりか,甲の企業イメージをも大きく損なわせた点でも,犯情は悪質である。」
 2 マスコミ公表と信用毀損
1) パチスロ機誹謗中傷事件
 パチスロ機業界のアルゼ社によるマスコミ向け記者会見における発言が、不正競争防止法2条1項13号(現14号)所定の不正競争行為「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為」に該当するかが争われた事件。
2) 第1審判決(東京地裁平成13年8月28日、判時1775号143頁)
 「本件記者会見は,被告会社が提起した別件対サミー訴訟について,訴訟提起に至る経緯,訴訟における請求の内容等の事情を説明する目的で,平成11年11月15日,遊技機業界関連のマスコミ関係者を,被告会社本社事務所に集めて開かれたものである。特許権等の保有者が自己の権利を侵害されているとの考えの下に,当該侵害者を相手方として訴訟を提起することは,当該訴訟が不当訴訟と評価されるような特段の事情のない限り,当該特許権等の行使として許される行為であり,当該訴訟提起の事実をマスコミ等の第三者に告げる行為も,権利行使に当然に伴う行動として許容されるものであって,それが直ちに不正競争行為に該当するものではない。しかしながら,第三者に対する告知が,当該相手方に対して訴訟を提起した事実や当該訴訟における自己の請求の内容や事実的主張,法律的主張の内容を説明するという限度を超えて,当該相手方を根拠なく誹謗中傷する内容にわたる場合には,当該誹謗中傷部分が不正競争行為に該当することがあるものというべきである。」
 「原告が製造業者から特許権等の再実施許諾の対価を徴収していること自体を「詐欺的行為」と断定するなど,別件対サミー訴訟における被告会社の見解を説明する範囲を超えるものである。」
 「被告らは,甲野発言は,公共の利害に関し専ら公益を図る目的で事実を摘示したものであるから,公正な論評として保護されるものであり,仮に真実でなかったとしても,被告甲野において発言内容を真実と誤信するにつき相当の理由があるから,故意過失を欠くものとして不法行為責任を阻却されると主張する。」
「被告甲野は,遊技機業界関連のマスコミ関係者を集めた本件記者会見において〔2〕〔3〕の発言部分を述べたものであり,その場で発言を聞いたマスコミ関係者を通じて発言内容が報道されることを想定して当該発言をしたものであるから,これが虚偽の事実を「告知し,又は流布する行為」に該当することは明らかである。」
  3) 控訴審判決(東京高裁平成14年6月26日、判時1792号115頁)
「A発言の受け手は、本件記者会見に出席した遊技機業界関連のマスコミ関係者であり、本件記者会見が、別件対サミー訴訟を提起するに至った控訴人会社側の言い分を説明するための場として持たれることを前提に、その取材という明確な目的をもって参集した者である。そして、乙10(本件記者会見の録音テープの反訳書面)に示された質問者の質問内容等に照らせば、パチンコ機製造業者におけるパテントプール方式に対して公正取引委員会の排除勧告等が行われたこと、その波及として、控訴人会社が本件パテントプール方式からの離脱を主張するようになったこと、別件対サミー訴訟の提起が、控訴人会社の本件パテントプール方式からの離脱に伴うものであることといった、上記1認定の事実の基本的な流れは、出席者らの予備知識として有していたものと推認される。また、本件雑誌は、被控訴人自身が「業界誌」であると主張するものであり、この点について控訴人らの特段の反論もないことから、その主な読者は、パチスロ機の製造販売業者等の関係者であると認めるのが相当である。そして、このような本件雑誌の読者にとって、控訴人会社による別件対サミー訴訟の提起が重大な関心事として受け止められていたことは前示のとおりであり、その背景事情を含め、予備知識として有していたものと推認される。」
  「したがって、本件においては、上記のような受け手の普通の注意と聞き方ないし読み方を基準として、陳述ないし掲載された事実について、真実と反するような誤解をするかどうかによって決する必要がある。」
「A発言〔2〕〜〔4〕中には、被控訴人を「異常な会社」、その活動を「詐欺的行為」ないし「非常に怖いこと」であると表現する意見ないし論評にわたる部分はあるものの、A発言全体の中でとらえた場合、別件対サミー訴訟に関する控訴人会社の主張、すなわち、本件実施契約の解消に伴い被控訴人は本件実施契約に係る特許権等の再実施許諾をする権限を喪失したとの主張を、やや俗な言葉で説明したものと理解することは、少なくとも、上記1の認定事実のおおまかな流れを予備知識として有する者にとって、さほどの注意を払うことなく容易にし得るものと解される。そして、上記A発言の直接の聞き手が一般大衆であれば格別、本件においては、本件記者会見が別件対サミー訴訟を提起するに至った控訴人会社側の言い分を説明するために開催されていることを当然の前提として、しかも当該問題について一定の前提知識を有し、取材という明確な目的を持ってこれに出席した遊技機業界関連のマスコミ関係者であったことを考えると、そのような出席者の普通の注意と聞き方を基準として判断した場合、A発言〔2〕〜〔4〕は、別件対サミー訴訟に関する控訴人会社の主張、すなわち、本件実施契約の解消に伴い被控訴人は本件実施契約に係る特許権等の再実施許諾をする権限を喪失したとの主張を、やや俗な言葉で説明したものと理解されるにとどまると解され、本件実施契約の解消という事実自体に関して、あるいは、被控訴人が「詐欺的な行為を行う異常な会社である」かどうかという事実に関して、真実に反する誤解をするような陳述であると解することはできない。」
 「したがって、A発言〔2〕〜〔4〕において陳述された事実が「虚偽」であるということはできない。」
 なお、最高裁(平成15年1月30日決定)にて上告棄却され、確定。
 3 マスコミ公表と経営判断原則(business judgment rule)
・ダスキン肉まん事件(平成18年6月9日大阪高裁、判時1979号115頁)
「一審被告らは,本件混入や本件販売継続の事実がZ側からマスコミに流される危険を十分認識しながら,それには目をつぶって,あえて,「自ら積極的には公表しない」というあいまいな対応を決めたのである。そして,これを経営判断の問題であると主張する。しかしながら,それは,本件混入や販売継続及び隠ぺいのような重大な問題を起こしてしまった食品販売会社の消費者及びマスコミへの危機対応として,到底合理的なものとはいえない。
 すなわち,現代の風潮として,消費者は食品の安全性については極めて敏感であり,企業に対して厳しい安全性確保の措置を求めている。未認可添加物が混入した違法な食品を,それと知りながら継続して販売したなどということになると,その食品添加物が実際に健康被害をもたらすおそれがあるのかどうかにかかわらず,違法性を知りながら販売を継続したという事実だけで,当該食品販売会社の信頼性は大きく損なわれることになる。ましてや,その事実を隠ぺいしたなどということになると,その点について更に厳しい非難を受けることになるのは目に見えている。それに対応するには,過去になされた隠ぺいとはまさに正反対に,自ら進んで事実を公表して,既に安全対策が取られ問題が解消していることを明らかにすると共に,隠ぺいが既に過去の問題であり克服されていることを印象づけることによって,積極的に消費者の信頼を取り戻すために行動し,新たな信頼関係を構築していく途をとるしかないと考えられる。また,マスコミの姿勢や世論が,企業の不祥事や隠ぺい体質について敏感であり,少しでも不祥事を隠ぺいするとみられるようなことがあると,しばしばそのこと自体が大々的に取り上げられ,追及がエスカレートし,それにより企業の信頼が大きく傷つく結果になることが過去の事例に照らしても明らかである。ましてや,本件のように6300万円もの不明朗な資金の提供があり,それが積極的な隠ぺい工作であると疑われているのに,さらに消極的な隠ぺいとみられる方策を重ねることは,ことが食品の安全性にかかわるだけに,企業にとっては存亡の危機をもたらす結果につながる危険性があることが,十分に予測可能であったといわなければならない。
 したがって,そのような事態を回避するために,そして,現に行われてしまった重大な違法行為によってダスキンが受ける企業としての信頼喪失の損害を最小限度に止める方策を積極的に検討することこそが,このとき経営者に求められていたことは明らかである。ところが,前記のように,一審被告らはそのための方策を取締役会で明示的に議論することもなく,「自ら積極的には公表しない」などというあいまいで,成り行き任せの方針を,手続き的にもあいまいなままに黙示的に事実上承認したのである。それは,到底,「経営判断」というに値しないものというしかない。」
 「一審被告Y2及び一審被告Y1の善管注意義務違反,さらには,その後の「自ら積極的には公表しない」というあいまいで消極的な方針が,保健所の立ち入り検査後にマスコミ各社の取材を受ける形で急遽公表を迫られ,それにより上記のような大々的な疑惑報道がなされるという最悪の事態を招く結果につながったことは否定できない。したがって,一審被告Y1及び一審被告Y2と,その他の一審被告らは,事実を知った時期及び地位などに照らしその割合を異にするとはいえ,いずれもその善管注意義務違反により損害が拡大したことに責任を負うべきである。」

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2010年06月18日
 ■ メディアにおける個人情報の保護

機グ貳夢覿箸砲ける個人情報リスク
1)企業を取り巻く社会情勢(再論)
・ユビキタス社会(サイバースペース)、IT(Information Technology)社会の誕生
・情報の収集、分析、利用、加工、管理が容易
         ↓
  ・各支店、各部署、担当者が保有している情報の把握、管理が困難
・(匿名による)表現の爆発、クレーマー、内部告発(ネット告発)の出現
・個人情報(プライバシー)、営業秘密等の流出の危険性増大
  exセンシティブ情報(機微情報)も含まれている
        ↓
・情報管理の徹底が必要 「蟻の穴から堤も崩れる」(韓非子)
・クライシス・コミュニケーション(危機管理)も必要  ex.雪印、船場吉兆

 2)各種の情報リスクとその対策
個人情報管理規則
  → 法令遵守体制、システム構築責任の問題としても捉えられるべき。
3) 内部統制システム構築義務が争点となった裁判例
(1) 大和銀行事件〜内部統制システム構築義務に関する初の司法判断
(2) ヤクルト事件〜取締役による長期間に亘るデリバティブ取引とリスク管理
(3) ダスキン事件〜平時のリスク管理と有事のリスク管理
4)内部統制構築義務の法整備
 2006年(平成18年)5月1日に施行された会社法においては、大会社に対し内部統制構築義務が認められ(362条4項6号、同条5項、会社法施行規則100条1項)、2007年6月7日に成立した金融商品取引法においては内部統制の報告書の作成、および監査人による監査証明が義務づけられることとなった(金融商品取引法24条の3、193条の2第2項)。

供ジ朕余霾鵑諒欷
1)個人情報を巡る状況
 事後的規制ではなく、情報漏洩を防ぐための予防策が重要。
2)重点3分野  ^緡邸壁賊 法↓⊃用情報(金融)、情報通信分野
 医療機関の場合、私立病院は個人情報保護法、国立がんセンターなどの国立病院は行政機関個人情報保護法、国立大学病院は独立行政法人等個人情報保護法、自治体では個人情報保護条例が適用される。
Cf.医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン(平成18年4月21日厚生労働省)
 マス・メディアにおいても、個人情報、プライバシーに関わることが多いため、厳格な管理、対応が必要と解される。
3)最近の個人情報漏洩事件一覧
   Security NEXT  http://www.security-next.com/cat_cat25.html

掘ジ朕余霾麒欷酲,粒詰
1)立法経緯、趣旨
 OECD8原則、EUディレクティブ(第三国への個人データの移転原則)
国、地方公共団体、個人情報取扱事業者の義務等を定める「行政法」
個人情報保護法が平成17年4月に全面施行。
2)定義(2条)
・「個人情報」
生存する個人に関する情報(識別可能情報)
・「個人情報データベース等」
個人情報を含む情報の集合物(検索が可能なもの。マニュアル処理情報を含む)
・「個人情報取扱事業者」
個人情報データベース等を事業の用に供している者(国、地方公共団体等のほか、取り扱う個人情報が少ない等の一定の者を除く)
・「個人データ」
個人情報データベース等を構成する個人情報
・「保有個人データ」
個人情報取扱事業者が開示、訂正等の権限を有する個人データ
3)「保有個人データ」(法2条5項)
4)個人情報取扱事業者の義務等 
  a) 利用目的の特定、利用目的による制限(15条、16条)
個人情報を取り扱うに当たり、その利用目的をできる限り特定
特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えた個人情報の取扱いの原則禁止
  b) 適正な取得、取得に際しての利用目的の通知等(17条、18条)
偽りその他不正の手段による個人情報の取得の禁止
個人情報を取得した際の利用目的の通知又は公表
本人から直接個人情報を取得する場合の利用目的の明示
  c) データ内容の正確性の確保(19条)
利用目的の達成に必要な範囲内で個人データの正確性、最新性を確保
  d) 安全管理措置、従業者・委託先の監督(20条〜22条)
個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置、従業者・委託先に対する必要かつ適切な監督
  e) 第三者提供の制限(23条)
本人の同意を得ない個人データの第三者提供の原則禁止
本人の求めに応じて第三者提供を停止することとしており、その旨その他一定の事項を通知等しているときは、第三者提供が可能
委託の場合、合併等の場合、特定の者との共同利用の場合(共同利用する旨その他一定の事項を通知等している場合)は第三者提供とみなさない
  f) 公表等、開示、訂正等、利用停止等(24条〜27条)
保有個人データの利用目的、開示等に必要な手続等についての公表等
保有個人データの本人からの求めに応じ、開示、訂正等、利用停止等
  g) 苦情の処理(31条)
個人情報の取扱いに関する苦情の適切かつ迅速な処理
5)若干の検討
 a)加害者の責任法理
 個人情報取扱事業者が「行政法」たる個人情報保護法に違反しても、同法に基づきストレートに被害者に対する民事上の責任が発生するわけではない。
これまでの事例は個人情報の漏洩事件につき、プライバシー侵害の法理、名誉、信用毀損の法理、営業秘密の漏洩(不正競争防止法)、一般不法行為、債務不履行、使用者責任、従業員の守秘義務違反、取締役の善管注意義務違反、忠実義務違反等の法理により、その責任が問われてきた。
 b)個人情報保護法・同内部管理規程の位置づけ
  個人情報保護法・同規程の違反 → 民事上の違法性を肯定する要素
  個人情報保護法・同規程の遵守 → 民事上の違法性を否定する事情
 c)内部管理規程を検討する視点
 同内部管理規程においては、合理性を有するものであり、また実際に履践可能なものであり、かつ遵守されていることが重要。
また、コンプライアンスの観点からは、「これは決して組織ぐるみではない。不心得者が、実践されていた明確な手続ルールを逸脱した」ことを事後的に証明することができるかどうかも重要。

検ジ朕余霾鵝Ε廛薀ぅ丱掘爾亡悗垢觝枷塾
 〜甍霤賃膤惺岷蕾駝省躬件(最高裁平成15年9月12日、メ百選46)
 「個人情報についても、本人が、自己が欲しない他者にはみだりにこれを開示させたくないと考えることは自然なことであり、そのことへの期待は保護されるべきものであるから、本件個人情報は、上告人らのプライバシーに係る情報として法的保護の対象となる」なお、差し戻し後の東京高裁(平成16年3月23日)は、一人につき、5,000円の慰謝料を認定。
 ■裡圍堙渡団∋件(東京地裁平成10年1月21日、判タ1008号187頁)
  幼い娘と二人暮らしであった女性が、転居に伴って電話帳への氏名、電話番号、住所を記載しないよう求めていたにもかかわらず、電話帳に掲載されてしまった事例。原告が嫌がらせ電話などで悩んでいた経験を有していたこと等も勘案し、10万円の慰謝料を認定(重過失事案)。
 診療所名等アップロード事件(神戸地裁平成11年6月23日、判時1700号99頁)
  パソコン通信の電子掲示板(BBS)に、無断で氏名、職業、診療所の住所、電話番号を掲載されてしまったため、悪戯電話が頻繁にかかるようになり、精神的損害を被った事例。裁判所は、20万円の慰謝料と治療費を認めた(故意事案)。
 けЪ市住民基本台帳事件(大阪高裁平成13年12月25日ジュリスト1224号8頁)
 本件において,被控訴人らのプライバシーの権利が侵害された程度・結果は,それほど大きいものとは認められないこと,控訴人が本件データの回収等に努め,また市民に対する説明を行い,今後の防止策を講じたことを含め,本件に現れた一切の事情を考慮すると,被控訴人らの慰謝料としては,1人当たり1万円と認めるのが相当である(過失事案)。
 Yahoo BB 事件(大阪地裁平成18年5月19日、判時1948号122頁)
 業務委託先から派遣され、データベースのメンテナンスを行っていた者がリモートメンテナンスサーバーにログオンした上で、本件顧客データベースにアクセスし、顧客情報を外部に転送し、それが恐喝の実行犯に渡ったという事件につき、裁判所は、退職後に悪用されないようにユーザー名の削除又はパスワードの変更をすべきであったとして、1人当たり、6000円の賠償を認めた(過失事例)。
なお、不正に入手した個人情報を元に金銭を脅し取ろうとした元派遣社員に対して、懲役3年、執行猶予5年の有罪判決。
 Ε┘好謄謄ックサロン事件(東京地裁平成19年2月8日、判時1964号113頁)
 同社がウェブサーバの設定を誤り、サーバ上に保存されていたアンケートが第三者によって閲覧できる状況となったもので、約5万人分のアンケートが流出し、さらにファイル交換ソフト上などでデータが流通し、被害が拡大したもの。漏洩したデータには住所、氏名、メールアドレスの他、アンケートへの回答など身体的特徴といったセンシティブ情報が含まれており、その後、いたずら電話やダイレクトメール、ウイルスの送付といった二次被害が発生したという。原告14名のうち、13名に1人あたり3万5000円、1名に対し2万2000円の賠償義務を認めた(センシティブ情報、過失事案)。

后ゥ瓮妊アにおける個人情報の保護
 1 個人情報との関わり
 2 個人情報保護検討部会ヒアリング意見
1999年10月6日、朝日新聞社、共同通信社、時事通信社、中日新聞東京本社、日本経済新聞社、毎日新聞社、読売新聞社
http://www.kantei.go.jp/jp/it/privacy/pdfs/dai6append4.pdf
・個人情報保護のあり方について
 情報の収集・利用・伝達は、国民の自由として保障されてきたものだ。OECD8原則のような個人情報保護の一般原則を分野ごとに異なる民間の事情を度外視して全分野に適用するという柔軟性を欠いた法的規制をすると、一方では国民の自由を制限することにつながりかねない。
 事業活動だけでなく非営利的市民活動を含む広範な活動は必然的に個人情報を扱うため、意図すると否とを問わず、規制の対象となる可能性がある。
 ことに、表現の自由は、いわゆる知る権利を含むものであり、報道の自由にかかわる権利だ。この権利は、国民の基本的人権のなかでもとりわけ重要な権利であり、かつ民主主義社会を根底から支える基礎であることを忘れてはならない。
 また個人情報保護を目的とした規制により、知る権利や報道の自由にかかわる権利が損なわれることがあってはならない。
 以上のような基本的立場からすると、民間の個人情報保護についてなんらかの規制をする場合は、民間の事業活動の自由などを制限することにならないよう配慮し、また、これらの自由や権利を制限することにつながる場合は、個人の基本的人権を保護するためやむを得ないと認められる合理的な範囲に限定されるべきだと考える。
 また個人情報保護は、本来的にはファイル管理の制限の問題であって、「個人情報」の収集などに対する無制限な規制であってはならない。適正な情報の自由な流通を阻害しない配慮が必要だ。
・民間の個人情報保護法と報道機関
報道機関は、民主主義社会において、社会に生起する諸問題について、取材し、事実を伝え、さまざまな考え方を紹介し、判断材料を提供して国民の知る権利に応える責務を負っている。
 取材活動によって事実に迫り、情報を収集し、事実を報道するなかで、報道機関は多くの個人情報を入手し、報道に使用することになるが、OECD原則などをそのまま報道機関にあてはめた場合、取材や報道の自由が損なわれる事態が生じかねない。
 また、取材の過程で入手する情報には必然的に個人情報が含まれるが、この個人情報の収集について、「直接収集」や「本人同意」、「センシティブ情報の収集禁止」の原則を適用したのでは、取材は困難になる。情報の利用について本人同意の原則をそのままあてはめたのでは、報道はできない。取材で入手した情報について本人開示を認めることも、判例などで認められてきた取材源の秘匿や、取材の秘密を守るという長年にわたって業界慣行として定着している報道機関にとっての基本原則からも困難だ。
個別法による規制策をとっている米国では、報道機関に対する法規制がないのはもちろんだが、EU指令もまた、第9条で、表現の自由との調和をはかる必要がある場合は、ジャーナリズム目的、芸術・文学上の表現目的のためのデータ処理について、個人情報処理の一般原則などの規定の適用除外を定めなければならない、としている。
 イギリスの「1998年データ保護法」に見られるように、EU諸国はEU指令に基づき、適用除外規定を定めている。_
したがって、報道・出版その他の表現の自由に関連する個人情報の処理ついては、基本法の精神を尊重した自主ガイドラインによるものとし、知る権利を含む表現の自由を損なうことがないよう、分野別の法的規制の対象外とすべきだ。

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2010年06月07日
 ■ インターネット・メディアにおける管理者

. プロバイダ責任制限法の概要
特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律
1) 趣旨
特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害があった場合について、特定電気通信役務提供者(プロバイダ、サーバの管理・運営者等。以下「プロバイダ等」という。)の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示を請求する権利につき定める。
2) プロバイダ責任制限法の3つのポイント
  http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/top/pdf/zukai.pdf
(a) 被害者に対する損害賠償責任の制限
プロバイダ等は、以下の,泙燭廊△両豺腓任覆韻譴弌∈鐔に応じなくても、被害者に対して賠償責任は生じない(3条1項)
 ‖梢佑慮⇒が侵害されていることを知っていたとき。
 違法情報の存在を知っており、他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき。
(b) 発信者に対する損害賠償責任の制限
 プロバイダ等は、情報を削除しても、以下の,泙燭廊△乏催する場合、発信者に対しては、賠償責任は生じない(3条2項)
 ‖梢佑慮⇒が侵害されていると信じるに足りる相当の理由があったとき。
 権利を侵害されたとする者から違法情報の削除の申出があったことを発信者に連絡し、発信者から7日以内に反論がない場合。
(c) 被害者に対する発信者情報開示請求権の付与
 被害者は、以下の´△い困譴砲盂催する場合に限り、プロバイダ等に対して発信者情報の開示を請求できる(4条1項)
 \禅瓩垢觴圓慮⇒が侵害されたことが明らかであること
 損害賠償請求権の行使のために必要である場合、その他開示を受けるべき正当な理由があること。

供ザ饌療事例の検討
 1 眼科医事件(東京地裁平成15年3月31日、メ百選114)
 インターネットサービス大手Yahooに対し、プロバイダ責任制限法に基づいて投稿者の身元の情報開示を求めた事件で、Yahoo は提訴後、投稿者のメールアドレスだけは開示し、本人が原告側に氏名、住所を明かして謝罪した。しかし、投稿者が別の医療機関の社員だったため、原告側は「組織ぐるみの疑いがあり、発信元のパソコンも特定する必要がある」と主張して、IPアドレスと発信時刻の開示を求めていたもの。
 ・「権利侵害要件」につき、「摘示された事実が真実であることが証明されなくとも、その行為者においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるときには、当該行為には、故意又は過失がなく、不法行為の成立が否定されると解されているが、このような主観的要件に係る阻却事由については、発信者情報開示請求訴訟における原告(被害者)において、その不存在についての主張、立証をするまでの必要性はないものと解すべきである。」
 ・行為者の氏名、住所の開示を既に受けている点につき、「その余の発信者情報の開示を受けることにより、当該侵害情報を流通過程に置く意思を有していた者、すなわち、当該送信行為自体を行った者以外の『発信者』の存在が明らかになる可能性があるのであるから、その者に対して損害賠償請求権を行使するためには、上記の総務省令が定めるすべての発信者情報の開示を受けるべき必要があるものというべきである。」
2 2ちゃんねる「A学園Part2」事件(最高裁平成22年4月13日)
 最高裁は、「開示関係役務提供者は,侵害情報の流通による開示請求者の権利侵害が明白であることなど当該開示請求が同条1項各号所定の要件のいずれにも該当することを認識し,又は上記要件のいずれにも該当することが一見明白であり,その旨認識することができなかったことにつき重大な過失がある場合にのみ,損害賠償責任を負うものと解するのが相当である」と判示した。

掘ゥぅ鵐肇薀優奪函兵卞癸味腺痢砲砲ける管理者の地位と権限
 1 問題の所在
「従業員が何か変なことをしでかせば困る」「更衣室などは見られないはず。」
「ちゃんと仕事をしているのか。」「別の方法でチェックすれば、、、」
「何かあったら、会社の責任になるじゃあないか」 「でも、やり過ぎでしょう。」
 2 裁判例
 ・F社Z事業部電子メール事件(東京地裁平成13年12月3日、メ百選116)
(1) 電子メールの内容につき、従業員のプライバシー権が及ぶか?
 私用メールの禁止について何ら規定していないという事実関係の下、社会的に許容される範囲に止まる限り、社員に一切プライバシー権がないとは言えないとする一方、社内ネットワークシステムには当該会社の管理者が存在してネットワーク全体を適宜監視しながら保守を行っているのが通常であることに照らすと、労働者も当該システムの具体的状況に応じた合理的な範囲でのプライバシー権の保護を期待しうるに留まると指摘。
(2) プライバシー権侵害の判断基準
 使用者がパソコンの中身をチェックする必要性と、労働者が被る不利益とを比較して判断される。
 電子メールの監視について、「職務上従業員の電子メールの私的利用を監視するような責任ある立場にない者が監視した場合、あるいは、責任ある立場に有る者でも、これを監視する職務上の合理的必要性が全くないのに専ら個人的な好奇心等から監視した場合あるいは社内の管理部署その他の第三者に対して監視の事実を秘匿したまま個人の恣意に基づく手段方法により監視した場合など、監視の目的、手段及びその態様等を総合考慮し、監視される側に生じた不利益とを比較衡量の上、社会通念上相当な範囲を逸脱した監視がなされた場合に限り、プライバシー権の侵害になる」と判示した。
 本判決は、電子メールのチェックがプライバシー権の侵害となる範囲を相当狭く考え、「Yのよる監視行為が社会通念上相当な範囲を逸脱したものであったとまではいえず、Xらが法的保護(損害賠償)に値する重大なプライバシー侵害を受けたとはいえない」と結論付けた。
 ・日経クイック情報事件(東京地判平成14年2月26日、労判825号50頁)
 社員が同僚を誹謗・中傷する内容の私的メールを送信したと疑われる状況であったことから実施された調査について、「それが企業の円滑な運営上必要かつ合理的なものであること、その方法態様が労働者の人格や自由に対する行きすぎた支配や拘束ではないことを要し、調査等の必要性を欠いたり、調査の態様等が社会的に許容しうる限界を超えていると認められる場合には労働者の精神的自由を侵害した違法な行為として不法行為を構成することがある。」
 ・グレイワールドワイド事件(東京地判平成15年9月22日、労判870号83頁)
  一定の要件のもと、例外的に職務専念義務違反にならないと判示。
 3 米国の判例
 当該従業員が当該状況において、そのプライバシーが保護されることについて、「合理的な期待」(reasonable expectation)を有しうるか否かにより判断している。

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2010年06月04日
 ■ インターネット・メディアにおける表現の自由


機ゥぅ鵐拭璽優奪函Ε瓮妊アにおける変容
1 問題の所在
   現実社会における法が、ネットワーク社会において変容されるか。
2 ネット上における「対抗言論」(more speech)
 1)「名誉は毀損されても対抗言論により回復しうるので、結果として名誉毀損は生じない」(高橋和之教授)
インターネット・メディアにおいては、紙面、放送時間、情報伝達範囲、コスト等の物理的制約が少なく、自由な反論をなし得る環境にあると言えるのではないか。
対抗言論を課す条件として、‥事者が対等な言論手段を有していること、反論の負担を要求しても不公平とはいえない事情が存することが必要。
 2)射程範囲の検討
・人種差別的表現や前科・前歴に関わる情報などについては、果たして反論することに意味があるのかどうか?
・事実の摘示による名誉毀損の場合は事実の真偽はわからず、意見ないし論評の表明による名誉毀損の場合に限られるのか?
・ネット上において反論することは、いわゆる「フレーミング(flaming)」や「祭り」を招くだけではないのか?
 3) 実務的対処法
・「人を見て、法を説け。」
文書(書面)  ←→  口頭(面談)
 話す速度   早い ←→ ゆっくり 
・イソップ物語「北風と太陽」
・「窮鼠猫を噛む」
3 各論(修正原理を考えるべきか)
 1)公職選挙法
  文書図画の頒布制限(法142条)の立法趣旨(立法事実)は?
  Q ネット上での選挙活動の自由を広く認め得ないのか?
 2) 商業的表現の自由
  ダイレクトメール(郵便物)と異なり、スパム(迷惑メール)は、受信者のシステムのリソース(電気代、メモリー容量)や時間を不当に奪っている。
2008年6月6日 「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案」公布
 第3条(特定電子メールの送信の制限)
 送信者は、次に掲げる者以外の者に対し、特定電子メールの送信をしてはならない。
 一 あらかじめ、特定電子メールの送信をするように求める旨又は送信をすることに同意する旨を送信者又は送信委託者(電子メールの送信を委託した者(営利を目的とする団体及び営業を営む場合における個人に限る。)をいう。以下同じ。)に対し通知した者
 二 前号に掲げるもののほか、総務省令で定めるところにより自己の電子メールアドレスを送信者又は送信委託者に対し通知した者
 三 前二号に掲げるもののほか、当該特定電子メールを手段とする広告又は宣伝に係る営業を営む者と取引関係にある者
 四 前三号に掲げるもののほか、総務省令で定めるところにより自己の電子メールアドレスを公表している団体又は個人(個人にあっては、営業を営む者に限る。)
の他のこれに類する場合として総務省令で定める場合は、この限りでない。
 3) 少年法61条(記事等の掲載の禁止)
  氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。
 「本条は、罪を犯した少年に実名で報道されない権利を付与したものではなく、表現の自由との関係で同条が当然に優先するとは解されないから、社会の正当な関心事である重大事犯について実名報道することが直ちに権利侵害にはならず、少年の顔写真掲載も、表現内容・方法として不当なものとはいえず、不法行為に当たらない」(大阪高判平成12年2月29日、判時1710号121頁)
  →出版物ではないインターネット上の表現でも適用あるいは類推適用されるべきであろうか。

供ゥぅ鵐拭璽優奪函Ε瓮妊アにおけるプロバイダーの地位
1 プロバイダー(電気通信事業者)の性質論
  内容に関知しているか、内容に関知していないか。
2 外国の立法
 1) 米国
 「1998年デジタルミレニアム著作権法」Digital Millennium Copyright Act(DMCA)
米国では、著作権侵害に関し直接責任が問われる場合には、損害賠償義務は故意・過失がなくても発生するため、「デジタル・ミレニアム著作権法(DMCA)」において、サービス・プロバイダーの法的責任に関する規定を設け、ルールを明確化した。具体的には、ユーザーによりアップロードした素材の蓄積、システム・キャッシングにおける中間的・一時的蓄積などに関し、サービス・プロバイダーについて一定要件の下、著作権侵害による金銭的責任を免除している。
 また、ノーティス・テイクダウン(通知及び削除)の免責のための要件を規定し、サービス・プロバイダーは、著作権者から一定要件を備えた著作権侵害主張の通知を受けた場合、速やかに素材を削除し、アクセスを禁止しなければならない。
 2) EU指令(EUディレクティブ)
EUは、2000年(平成12年)5月に欧州議会で承認された「電子商取引の法的側面に関するEU指令案」において、著作権だけでない分野横断的な視点から、サービス・プロバイダーの法的責任について規定している。
3 日本の裁判例
 1)ニフティ現代思想フォーラム事件(東京地裁平成9年5月25日、判時1610号22頁)
 管理者の責任について、サービスの利用に際して、その中での会員相互のやりとりの内容にまで契約上の責任が当然に生じるとは言えないが、明らかな名誉毀損的表現を認知した者は、条理上の削除すべき立場に立つとして、一部についての責任を肯定。
書き込みを行った者に対し50万円、プロバイダー、シスオペに対し10万円の慰謝料請求を認めた。
 2)都立大学事件(東京地裁平成11年9月24日、判時1707号139頁)
・3,000円ずつの損害賠償義務を認定。
「名誉毀損文書に該当すること、加害行為の態様が甚だしく悪質であること及び被害の程度も甚大であることなどが一見して明白であるような極めて例外的な場合に限られるというべきである」
 3)ニフティサーブ・現代思想フォーラム事件(東京高裁平成13年9月5日)
1)の控訴事件
「シスオペは、フォーラムの運営及び管理上、運営契約に基づいて当該発言を削除する権限を有するにとどまらず、これを削除すべき条理上の義務を負う」としたが、「議論の積み重ねにより発言の質を高めるとの考えに従って本件フォーラムを運営しており、このこと自体、思想について議論することを目的とする本件フォーラムの性質を考慮すると、運営方法として不当なものとすることはできない」として、その責任を否定した。
Q 本件は、会員制のパソコン通信に関する事例であるが、インターネット上の電子掲示板の場合に、何か理論的な違いがあるであろうか。
Q 本件は、「対策を講じても、なお奏功しない等一定の場合」に作為義務の一種である削除義務が成立するとしているが、シスオペとして、どのような対策が考えられるであろうか。
Q シスオペには、常時監視義務まではないとされているが、毎日、真面目にモニタリング(チェック)をすればするほど、いくつもの問題のある書き込みを知るようになってしまい、かえってその責任が重くなってしまうのは、不合理であるとは言えないであろうか。
 4)日本生命仮処分事件(東京地裁平成13年8月31日)
匿名による書き込みにより、日本生命に対する誹謗中傷的発言が繰り返されたケースについて、2ちゃんねるの管理者に対し、債権者の主張をほぼすべて認める形で、特定された書き込みについての削除が命じられた。
 5)ニフティサーブ・本と雑誌フォーラム事件(東京地裁平成13年8月27日)
「言論による侵害に対しては、言論で対抗するというのが表現の自由(憲法21条1項)の基本原理であるから、被害者が、加害者に対し、十分な反論を行い、それが功を奏した場合は、被害者の社会的評価は低下していないと評価することが可能である」とし、対抗言論というべき判断を尊重し、発言を総合的に判断し、不法行為を構成しないものと判示した。
Q 原告は、なぜニフティサーブに対し、Aの氏名、住所の開示を求めたのであろうか。
Q 先行する名誉毀損的言明に対してなされた後行の名誉毀損的言明につき、刑法上の正当防衛と考えることはできるであろうか。
Q 反論すればなにゆえに被害者の社会的評価は低下していないということになるのであろうか。
 6)2ちゃんねる・動物病院事件(東京地裁平成14年6月26日、判時1810号78頁)
 「本件掲示板における発言によって名誉権等の権利を侵害された者は、前記のとおり、Yが、利用者のIPアドレス等の接続情報を原則として保存していないから、当該発言者を特定して責任を追及することが事実上不可能であり、しかも、Yが定めた削除ガイドラインもあいまい、不明確であり、また、他に本件掲示板において違法な発言を防止するための適切な措置を講じているものとも認められないから、設置・運営・管理しているYの責任を追及するほかないのであって、このようなYを相手方とする訴訟において、発言の公共性、目的の公益性及び真実性が存在しないことを削除を求める者が立証しない限り削除を請求できないのでは、被害者の被害を回復する方途が著しく狭められ、公平を失する結果となる。」
 「このことからすれば、本件において、本件各発言に関する真実性の抗弁、相当性の抗弁についての主張・立証責任は、管理者であるYに存するものと解すべきであり、本件各発言の公共性、公益目的、真実性等が明らかではないことを理由に、削除義務の負担を免れることはできないというべきである。」
「被告は、本件掲示板上の発言を削除することが技術的に可能である上、通知書、本件訴状、請求の趣旨訂正申立書等により、本件1ないし3のスレッドにおいて原告らの名誉を毀損する本件各名誉毀損発言が書き込まれたことを知っていたのであり、これにより原告らの名誉権が侵害されていることを認識し、又は、認識し得たのであるから、プロバイダー責任法3条1項に照らしても、これにより責任を免れる場合には当たらないというべきである」
 「本件各名誉毀損発言の書き込みをしたのは、複数人と思われる匿名の者であり、被告自身が本件各名誉毀損発言の書き込みに直接関与したものとは認められないことなどの事情を考慮しても、被告が本件各名誉毀損発言を削除するなどの措置をとらなかったことにより、原告らが被った精神的損害、経営上の損害は、各200万円を下らないものと認めるのが相当である。」
 7)2ちゃんねる・動物病院事件(東京高裁平成14年12月25日、メ百選113)
  6)の控訴事件
  控訴棄却。言論に対しては言論をもって対処することにより解決を図ることが望ましいことはいうまでもないが、それは、対等に言論が交わせる者同士であるという前提があって初めていえることであり、このような言論による対処では解決を期待することができない場合があることも否定できないとし、削除義務に違反しているとした。
Q 匿名の表現の自由を確保することはなぜ健全な民主主義の発展のためには不可欠と言えるのか?
Q プロバイダーに、真実性、相当性の抗弁についての主張立証責任を負わせることは酷ではないのか?
Q 本件において、比較的高額な200万円もの損害賠償請求が認められた理由は何であろうか?
4 立法
特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律
(いわゆる「プロバイダー責任制限法」)
平成14年6月26日施行

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