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2010年06月07日

インターネット・メディアにおける管理者

. プロバイダ責任制限法の概要
特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律
1) 趣旨
特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害があった場合について、特定電気通信役務提供者(プロバイダ、サーバの管理・運営者等。以下「プロバイダ等」という。)の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示を請求する権利につき定める。
2) プロバイダ責任制限法の3つのポイント
  http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/top/pdf/zukai.pdf
(a) 被害者に対する損害賠償責任の制限
プロバイダ等は、以下の,泙燭廊△両豺腓任覆韻譴弌∈鐔に応じなくても、被害者に対して賠償責任は生じない(3条1項)
 ‖梢佑慮⇒が侵害されていることを知っていたとき。
 違法情報の存在を知っており、他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき。
(b) 発信者に対する損害賠償責任の制限
 プロバイダ等は、情報を削除しても、以下の,泙燭廊△乏催する場合、発信者に対しては、賠償責任は生じない(3条2項)
 ‖梢佑慮⇒が侵害されていると信じるに足りる相当の理由があったとき。
 権利を侵害されたとする者から違法情報の削除の申出があったことを発信者に連絡し、発信者から7日以内に反論がない場合。
(c) 被害者に対する発信者情報開示請求権の付与
 被害者は、以下の´△い困譴砲盂催する場合に限り、プロバイダ等に対して発信者情報の開示を請求できる(4条1項)
 \禅瓩垢觴圓慮⇒が侵害されたことが明らかであること
 損害賠償請求権の行使のために必要である場合、その他開示を受けるべき正当な理由があること。

供ザ饌療事例の検討
 1 眼科医事件(東京地裁平成15年3月31日、メ百選114)
 インターネットサービス大手Yahooに対し、プロバイダ責任制限法に基づいて投稿者の身元の情報開示を求めた事件で、Yahoo は提訴後、投稿者のメールアドレスだけは開示し、本人が原告側に氏名、住所を明かして謝罪した。しかし、投稿者が別の医療機関の社員だったため、原告側は「組織ぐるみの疑いがあり、発信元のパソコンも特定する必要がある」と主張して、IPアドレスと発信時刻の開示を求めていたもの。
 ・「権利侵害要件」につき、「摘示された事実が真実であることが証明されなくとも、その行為者においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるときには、当該行為には、故意又は過失がなく、不法行為の成立が否定されると解されているが、このような主観的要件に係る阻却事由については、発信者情報開示請求訴訟における原告(被害者)において、その不存在についての主張、立証をするまでの必要性はないものと解すべきである。」
 ・行為者の氏名、住所の開示を既に受けている点につき、「その余の発信者情報の開示を受けることにより、当該侵害情報を流通過程に置く意思を有していた者、すなわち、当該送信行為自体を行った者以外の『発信者』の存在が明らかになる可能性があるのであるから、その者に対して損害賠償請求権を行使するためには、上記の総務省令が定めるすべての発信者情報の開示を受けるべき必要があるものというべきである。」
2 2ちゃんねる「A学園Part2」事件(最高裁平成22年4月13日)
 最高裁は、「開示関係役務提供者は,侵害情報の流通による開示請求者の権利侵害が明白であることなど当該開示請求が同条1項各号所定の要件のいずれにも該当することを認識し,又は上記要件のいずれにも該当することが一見明白であり,その旨認識することができなかったことにつき重大な過失がある場合にのみ,損害賠償責任を負うものと解するのが相当である」と判示した。

掘ゥぅ鵐肇薀優奪函兵卞癸味腺痢砲砲ける管理者の地位と権限
 1 問題の所在
「従業員が何か変なことをしでかせば困る」「更衣室などは見られないはず。」
「ちゃんと仕事をしているのか。」「別の方法でチェックすれば、、、」
「何かあったら、会社の責任になるじゃあないか」 「でも、やり過ぎでしょう。」
 2 裁判例
 ・F社Z事業部電子メール事件(東京地裁平成13年12月3日、メ百選116)
(1) 電子メールの内容につき、従業員のプライバシー権が及ぶか?
 私用メールの禁止について何ら規定していないという事実関係の下、社会的に許容される範囲に止まる限り、社員に一切プライバシー権がないとは言えないとする一方、社内ネットワークシステムには当該会社の管理者が存在してネットワーク全体を適宜監視しながら保守を行っているのが通常であることに照らすと、労働者も当該システムの具体的状況に応じた合理的な範囲でのプライバシー権の保護を期待しうるに留まると指摘。
(2) プライバシー権侵害の判断基準
 使用者がパソコンの中身をチェックする必要性と、労働者が被る不利益とを比較して判断される。
 電子メールの監視について、「職務上従業員の電子メールの私的利用を監視するような責任ある立場にない者が監視した場合、あるいは、責任ある立場に有る者でも、これを監視する職務上の合理的必要性が全くないのに専ら個人的な好奇心等から監視した場合あるいは社内の管理部署その他の第三者に対して監視の事実を秘匿したまま個人の恣意に基づく手段方法により監視した場合など、監視の目的、手段及びその態様等を総合考慮し、監視される側に生じた不利益とを比較衡量の上、社会通念上相当な範囲を逸脱した監視がなされた場合に限り、プライバシー権の侵害になる」と判示した。
 本判決は、電子メールのチェックがプライバシー権の侵害となる範囲を相当狭く考え、「Yのよる監視行為が社会通念上相当な範囲を逸脱したものであったとまではいえず、Xらが法的保護(損害賠償)に値する重大なプライバシー侵害を受けたとはいえない」と結論付けた。
 ・日経クイック情報事件(東京地判平成14年2月26日、労判825号50頁)
 社員が同僚を誹謗・中傷する内容の私的メールを送信したと疑われる状況であったことから実施された調査について、「それが企業の円滑な運営上必要かつ合理的なものであること、その方法態様が労働者の人格や自由に対する行きすぎた支配や拘束ではないことを要し、調査等の必要性を欠いたり、調査の態様等が社会的に許容しうる限界を超えていると認められる場合には労働者の精神的自由を侵害した違法な行為として不法行為を構成することがある。」
 ・グレイワールドワイド事件(東京地判平成15年9月22日、労判870号83頁)
  一定の要件のもと、例外的に職務専念義務違反にならないと判示。
 3 米国の判例
 当該従業員が当該状況において、そのプライバシーが保護されることについて、「合理的な期待」(reasonable expectation)を有しうるか否かにより判断している。