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2017年05月23日

印刷会社が印刷用データを無断で利用できないとされた事案

 原告は,被告らが,原告が原告書籍を出版した際に製作された本件印刷用データ(写真データ)を使用して,被告書籍を印刷・製本し,出版したと主張して,被告らに対し,(1)主位的請求として,本件印刷用データの無断使用が,同データに係る所有権の侵害に当たると主張して,不法行為による損害賠償請求権に基づき, (2)予備的請求1として,原告は,原告書籍の出版の際,被告印刷会社との間で,本件印刷用データを原告以外の出版社の出版物の印刷・製本に使用する場合は,原告の許諾を得た上で当該出版社が原告に使用料を支払うこととする旨の本件合意をしたところ,同データの無断使用が本件合意に違反すると主張して,債務不履行による損害賠償請求権に基づき,(3)予備的請求2として,原告は,被告印刷会社が,被告書籍のために本件印刷用データを再利用する場合に原告の許諾を得た上で使用料を支払う旨の不文律に違反して,同データの無断使用をしたことが不法行為を構成すると主張して損害賠償請求を行ったことに対し,被告らは,本件印刷用データに係る原告の所有権,本件合意の存在,慣習法上・条理上の義務又は不文律の存在について争うとともに,抗弁として,写真データの使用について,原告が許諾した旨及び著作権法32条1項が類推適用される旨を主張した事案である。

 大阪地裁第26民事部(平成29年1月12日)は,まず,「本件印刷用データは,原告書籍の印刷・製本のために作成された中間生成物であり,原告と被告印刷会社との間に特段の合意はなされておらず,その使用・収益・処分権は,被告印刷会社に帰属すると認められる」とした上で上記(1)に関する請求を否定した。

 次に,上記(2)につき,「このようなアンケート調査の結果からすると,一般に,印刷・製本契約を締結した出版社と印刷業者との間では,印刷業者は,出版社の許諾を得ない限り,印刷用データの再利用をすることができないとの商慣行が存在していると認めるのが相当である。」「原告と被告印刷会社との間の原告書籍に関する印刷・製本契約では,上記の商慣行にのっとり,被告印刷会社は,原告の許諾を得ない限り,本件印刷用データの再利用をすることができないとの黙示の合意がされたと認めるのが相当であり,そうでないとしても,被告印刷会社は,印刷・製本契約に付随して,原告の許諾を得ない限り,本件印刷用データの再利用をすることができないとの義務を信義則上負うと解するのが相当である。」

 そして,被告出版社についても,「被告印刷会社に本件写真データを使用して被告書籍の印刷・製本をさせた被告出版社の行為は,原告が被告印刷会社に対して有する債権侵害としての不法行為を構成すると認められ,被告出版社は,原告に生じた損害について,不法行為による損害賠償責任を負う。」とした。

 本判決は,被告印刷会社は,「原告に無断で本件写真データを使用したことにつき,原告に対して債務不履行による損害賠償責任を負い(予備的請求1),また,被告出版社は,上記の債務不履行に加担したことにつき,原告に対して不法行為による損害賠償責任を負い(予備的請求1)」と判断したものであるが,原告と被告印刷会社との間で詳細な契約書や明確な合意が存在しなかったため,その当事者間の合意をどう認定するか難しい事案であったと思われるが、日本書籍出版協会の会員社に対するアンケート等に基づき,商慣習ないし黙示の合意が存在したと認定したものであり,注目に値する。