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2007年08月22日

うつ病による自殺につき会社の責任が認められた事例

自動車メーカーに勤務していた中間管理職がうつ病になり、飛び降り自殺をした事件につき、裁判所は、「使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負担等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことのないよう注意し、もって、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務(安全配慮義務)を負っていると解するのが相当であるところ、本件においては、被告は、雇用主として、その従業員である一郎に対し、同人の労働時間及び労働状況を把握・管理し、過剰な長時間労働などによりその心身の健康が害されないように配慮すべき義務を負っていたというべきである。」しかるに「被告は、一郎の労働時間や労働状況を把握管理せず、平成14年2月1日以降、月平均で約100時間もの時間外労働などの長時間労働をさせ、少なくとも平成14年4月には、上司も、一郎に活気がなくなったり、同人が意味不明の発言をしたことなどうつ病の発症をうかがわせる事実を認識していながら、一郎の業務の負担を軽減させるための措置を何ら採らず、一郎にうつ病を発症させて、自殺に至らしめたのであるから、被告には、安全配慮義務違反があったことは明らかである」と判示した。

(判例時報1970号82頁)