ワンクリック詐欺損害賠償請求事件
「本件は、相手方に契約締結意思がないにもかかわらず、サイトの画面の写真画像をクリックしただけで、会員登録が終了したとして不当に利用料金を請求する、いわゆるワンクリック詐欺による不当請求事案であるが、その手口は、いきなり画面を暗転させえ数字や文字を羅列させた後、個人情報取得終了との表示を行い、いかにも相手方のパソコン内にスパイウェアを侵入させ個人情報を窃取したかのような不安感を与えつつ、IPアドレスによってパソコンが特定でき、自宅や勤務先に直接請求するとともに、延滞料も請求することがあるなどと威圧的に請求を行うもので、しかも、羞恥心から泣き寝入りし、支払いに応じる者もあることを見込んでランダムに多数のメールを送りつけるというものであって、極めて悪質である。原告は、弁護士であり、かかる請求に対して支払義務のないことは理解していたが、自らのパソコンにスパイウェアを侵入され、またパソコン内の個人情報を窃取されたかもしれないとの疑念を抱き、パソコンの点検が済むまでの間パソコンの利用を差し控えたほか、自らの権利救済のために時間と費用をかけて本訴を提起しており、被告の行為により看過し難い精神的苦痛を負ったことは明らかである。本件の関する上記のような諸般の事情を総合勘案すると、本件における損害賠償金として30万円が相当であると思料する。」
(判例時報1939号52頁)