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2010年05月16日

マスメディアと肖像権・パブリシティ権

機‐啻権の概念
 1 定義
 肖像権とは、「人がみだりに他人から写真をとられたり、とられた写真がみだりに世間に公表、利用されることがないよう対世的に主張しうる権利」(大塚重夫)であり、一種の人格権であると解されている。
2 内容
 ,澆世蠅忙1討鬚気譴覆じ⇒        肖像権(人格権)
 ∋1討気譴深命拭∈鄒された肖像を利用されない権利  パブリシティ(財産権)
 肖像の利用に対する本人の財産的価値を保護する権利  〃
 3 最高裁(昭和44年12月24日、京都府学連デモ事件)
   刑事事件に関し、「個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態(以下「容ぼう等」という。)を撮影されない自由を有するものというべきである。これを肖像権と称するかどうかは別として、少なくとも、警察官が、正当な理由もないのに、個人の容ぼう等を撮影することは、憲法13条の趣旨に反し、許されないものといわなければならない。」と判示した。

供‐啻権に関する紛争
 1 肖像権を認めた裁判例
 ・東京地裁平成2年5月22日(判時1357号93頁)
 「何人も自己の容貌や姿態を無断で撮影され、公表されない人格的な権利、すなわち肖像権を有しており」と「肖像権」と定義した上で、要保護性を肯定した。
  その後も、「肖像権」と明確に判示した下級審が相次いでいる。
 2 写真撮影及び公表による侵害
 ・フライデー無断写真撮影事件(東京高裁平成2年7月24日、メ百選51)
 写真週刊誌が、居宅内における容貌・姿態を第三者が無断で写真撮影し、広く公表した事例。
 Q カメラマンの写真撮影行為は、被告Y(講談社)との関係において、どのような法的評価、法的構成がなされていると推察されるか。
 Q 塀越しの撮影ではなく、原告女性Xが早朝ゴミ出しする姿を撮影した場合でも、同様に結論になるであろうか。
 Q 撮影対象が原告女性Xではなく、井上ひさし氏であった場合は、どうか。
 Q 本件が写真週刊誌フライデーではなく、「肖像権侵害が認められた事例」として判例雑誌に当該写真が参考資料として掲載された場合はどうか。
 3 イラスト画掲載による侵害
 ・「新ゴーマニズム宣言」事件(東京高裁平成15年7月31日、判時1831号107頁)
  漫画「新ゴーマニズム宣言」に似顔絵を描かれた大学講師が漫画家に対し肖像権等の侵害を理由に損害賠償等を請求した事案。
 「絵画は、写真撮影又はビデオ撮影のように被写体を機械的に記録するものとは異なり、作者の主観的、技術的作用が介在するものであるから、肖像画のように写真と同程度に対象者の容貌ないし姿態を写実的に性格に描写する場合はともかく、少なくとも作者の技術により主観的に特徴を捉えて描く似顔絵については、これによってその人物の容貌ないし姿態の情報をありのまま取得させ、公表したとは言い難く、別途名誉権、プライバシー権等他の人格的利益の侵害による不法行為が成立することはあり得るとしても、肖像権侵害には当たらないと解すべきである。」
 ・和歌山カレー事件報道事件(最高裁平成17年11月10日、メ百選52)
  「人は、みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有する」「人は、自己の容ぼう等を撮影された写真をみだりに公表されない人格的利益も有すると解するのが相当である」
 Q 勾留理由開示手続が公開裁判で行われる理由は何であろうか。
 Q 最高裁が「みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益」があるとしながら、「肖像権」という言葉を使わなかったのは、なぜであろうか。
 Q 最高裁は、原審の〇実の公共性、¬榲の公益性、手段の相当性という3要件の判断枠組みをとらず、受忍限度論という立場をとったが、基準が曖昧になるということはないであろうか。
 Q 刑事訴訟法規則において、公判廷における写真撮影が制限されている制度趣旨な何であろうか。また、隠し撮りを行った場合にも、その制度趣旨との関係で不都合はあるであろうか。
 Q 原告Xが手錠、腰縄により身体拘束を受けてる状態を描いたイラストにおいて、テレビ撮影の場合と同様、モザイクを入れたり、黒塗りした場合でも、名誉毀損になると言えるであろうか。

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 1 発生経緯
  芸能人やスポーツ選手などの著名人の肖像や指名について、米国コモン・ロー上生成発展してきたもの。
 2 日本の裁判例
 ・おニャン子クラブ事件(東京高裁平成3年9月26日、メ百選54)
  著名な芸能人の氏名・肖像のもつ顧客吸引力に専ら依存して作成されたカレンダーの販売行為について、パブリシティ権の侵害を理由として差止及び損害賠償請求を認めた事例。
 Q 肖像権とパブリシティ権とは、どこに共通点があって、どこに違いがあると言えるか。
 Q 芸能人の肖像写真の利用態様や利用回数に応じての事後的金銭賠償だけでなく、将来の差止請求まで認める実質的根拠は何か。
 Q 特許や著作権等の知的財産権については存続期間が認められているが、パブリシティ権の場合の存続期間は、どう考えるべきであろうか。
 3 物に関するパブリシティ権
 ・「ギャロップレーサー」事件(名古屋高裁平成13年3月8日、判タ1071号294号)
 「『著名人』でない『物』の名称等についても、パブリシティの価値が認められる場合があり、およそ『物』についおてパブリシティ権を認める余地がないということはできない。また、著名人についてパブリシティ権は、プライバシー権や肖像権といった人格権とは別個独立の経済的価値と解されているから、必ずしも、パブリシティの価値を有するものを人格権を有する『著名人』に限定する理由はないものと言わなければならない。」とし、物に関するパブリシティ権を肯定した。
 ・「ダービースタリオン」事件(東京高裁平成14年9月12日、判時1809号140頁)
 物に関するパブリシティ権を否定した(上告棄却)。
  「競走馬という物について,人格権に根ざすものとしての,氏名権,肖像権ないしはパブリシティ権を認めることができないことは明らかである。また,控訴人らが本件各競走馬について所有権を有し,所有権に基づき,これを直接的に支配している(民法206条)ということはできるものの,単に本件各競走馬の馬名・形態が顧客吸引力を有するという理由だけで,本件各競走馬の馬名,形態等について,その経済的利益ないし価値を排他的に支配する財産的権利であるパブリシティ権を有している,と認め得る実定法上の根拠はなく,控訴人らの主張を認めることはできない。(仮に,社会情勢の変化等により,このような権利を認める必要が生じていると考える者があるとしても,権利として認めるべきか否か,認めるとしてどのような形で認めるべきかは,立法的手続の中で幅広く社会の意見を集約した上で,決するにふさわしい問題であるというべきである。)。」
 ・ギャロップレーサー事件最高裁判決(平成16年2月16日、判時1863号25頁)
  「競走馬の名称等が顧客吸引力を有するとしても,物の無体物としての面の利用の一態様である競走馬の名称等の使用につき,法令等の根拠もなく競走馬の所有者に対し排他的な使用権等を認めることは相当ではなく,また,競走馬の名称等の無断利用行為に関する不法行為の成否については,違法とされる行為の範囲,態様等が法令等により明確になっているとはいえない現時点において,これを肯定することはできないものというべきである。」
  「なお,原判決が説示するような競走馬の名称等の使用料の支払を内容とする契約が締結された実例があるとしても,それらの契約締結は,紛争をあらかじめ回避して円滑に事業を遂行するためなど,様々な目的で行われることがあり得るのであり,上記のような契約締結の実例があることを理由として,競走馬の所有者が競走馬の名称等が有する経済的価値を独占的に利用することができることを承認する社会的慣習又は慣習法が存在するとまでいうことはできない。」
 4 検討
  マスメディアとの関係では、報道目的を超えた顧客吸引力を利用した「引用」(著作権法32条)などが問題となり得る。