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2012年01月18日

オリンパス調査報告書(2012年1月16日付)

オリンパス調査報告書(2012年1月16日付)
http://www.olympus.co.jp/jp/corc/ir/data/tes/2012/

・漫然放置していた監査役の責任について
 「O氏は、監査役就任後であるにもかかわらず金融資産の含み損に関する報告書において名宛人として記載されていることや、監査役就任後にN氏から同会議への出席を求められていることに鑑みると、損失の分離に関する情報を入手することは容易であったといえる。このようなO氏の認識、立場及び情報へのアクセス可能性からすれば、O氏は、損失の分離スキームの維持及び解消を、業務監査権を行使して調査・中止させるべき注意義務を負担していたといるが、そのうであるにもかかわらず、O氏は損失隠しについては一切関与しない姿勢をとった。これは監査役としての調査義務の履行を放棄したものであり、監査役としての善管注意義務違反にあたるといわざるを得ない」「監査役としての調査義務の履行を放棄したものと評価され、監査役の任務懈怠責任を免れないといわなければならない」

・大会社における監査について
 「オリンパスのような大規模会社において、監査役自らが、内部統制システムの詳細を一から精査することはまでは求められておらず、一般的に監査役に要請される監査を行うとともに、リスク管理にかかる関連組織等(監査室、監査法人等)が適正に職務を遂行していることを前提として、そこからあがってくる報告に明らかな不備、不足があり、これに依拠することに躊躇を覚えるなどの特段の事情のない限り、その報告等を前提に調査、確認すれば、監査役としての注意義務を尽くしたことになるとされる(東京高判平成20年5月21日)」

・監査役の能動的責任について
 「監査役らは、本件取締役会終了後の同日に開催された監査役会において『これまでもいくつか案件があったが、分析がなかったのでは。」「リスクを開示していないように見える。リスクを含め議論すべき。」と、問題意識を持って議論を行っているものの、当該議論を踏まえて改めて取締役会の開催を求める、再調査を行う、あるいは本件取得行為の差止請求を検討するまでには至らなかった。よって、監査役4名には本件取締役の意思決定における善管注意義務違反を看過した点に善管注意義務違反があるというべきである。」

・監査役の違法行為防止義務
 「監査役4名は、優先株式を買い取る必要性の検討や発行価格と大幅に乖離し、オリンパスの財務基盤に与える影響は極めて大きいと認められる価格の相当性の検証すら求めなかった」「監査役3名は、本件取締役会において、提案者の説明に何の疑問も持たず、何らの説明や調査を求めることもせず、異議を述べることもしないばかりか、必要に応じて取締役に対し違法行為の差止めを求める等の監査権限を行使せずに、漫然と決議の承認を放置している」