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2011年12月07日

特許の訂正請求を理由とする対抗主張

平成23年11月30日東京地裁(民事第40部)特許権侵害差止等請求事件

「訂正を理由とする対抗主張について
 原告は,平成23年9月22日付け原告第6準備書面をもって,本件訂正発明には無効理由がなく,かつ,被告製品は本件訂正発明の技術的範囲に属すると主張し,これに対し,被告は,原告の上記主張は,時機に後れた攻撃防御方法であるから却下されるべきであると主張する。
 そこで検討するに,原告の上記対抗主張は,前記平成23年7月12日付け被告準備書面(4)をもってなされた無効理由2〜4に対するものであるところ,受命裁判官は第5回弁論準備手続期日(同年8月5日)において,原告に対し,上記無効理由についても審理するので,これに対する反論があれば次回までに提出するよう促し,反論の機会を与えたにもかかわらず,原告は,第6回弁論準備手続期日(同年9月9日)までに上記対抗主張をすることなく,同期日で弁論準備手続を終結することについても何ら異議を述べなかったものである。
 無効理由2及び3は,いずれも既出の証拠(乙2及び乙3)を主引用例とする無効主張であり,無効理由4も,平成14年5月20日付け特許異議申立てにおいて既に刊行物として引用されていた乙6に基づくものであるから,原告は,上記無効理由の主張があった第4回弁論準備手続期日から弁論準備手続を終結した第6回弁論準備手続期日までの間に対抗主張を提出することが可能であったと認められる(原告は,乙6に基づく無効理由4を回避するために訂正請求を行うことができるのは第2次無効審判請求の無効審判請求書副本の送達日である平成23年8月19日から答弁書提出期限である同年10月18日までの期間のみであると主張するが,本件訴訟において対抗主張を提出することはできたものというべきである。原告は,対抗主張が認められる要件として現に訂正審判の請求あるいは訂正請求を行ったことが必要とする見解が多数であるとも主張するが,訂正審判請求前又は訂正請求前であっても,訴訟において対抗主張の提出自体が許されないわけではなく,理由がない。)にもかかわらず,これを提出せず,弁論準備手続の終結後,最終の口頭弁論期日になって上記対抗主張に及ぶことは,少なくとも重大な過失により時機に後れて提出したものというほかなく,また,これにより訴訟の完結を遅延させるものであることも明らかである。
 よって,原告の上記対抗主張は,民事訴訟法157条1項によりこれを却下する。」

 侵害訴訟は弁護士が主に担当し、無効審判請求は弁理士が行いながら、依頼会社を含めた三者のスケジュールを調整しながら意見調整し、訴訟追行の準備を行っている実情に鑑みるならば、あまりにも時間的余裕がないという印象を拭いきれず、もう少し実体的真実に即する訴訟追行がなされてもよいのではないかと感ずる。