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2011年09月16日

証券被害に関する損害賠償論(最高裁)

 東京証券取引所に上場されていた会社の株式を取引所市場において取得した者らが、その会社に上場廃止事由に該当するという事実があったにもかかわらず、有価証券報告書及び半期報告書に虚偽の記載をして上記事実を隠蔽し、また、大量保有報告書に過少な数を記載するなどして上記事実の隠蔽に協力したことにより、損害を被ったと主張して、不法行為等に基づく損害賠償を求める事案。
 最高裁は、「有価証券報告書等に虚偽の記載がされている上場株式を取引所市場において取得した投資者が、当該虚偽記載がなければこれを取得することはなかったとみるべき場合、当該虚偽記載により上記投資者に生じた損害の額、すなわち当該虚偽記載と相当因果関係のある損害の額は、上記投資者が、当該虚偽記載の公表後、上記株式を取引所市場において処分したときはその取得価額と処分価額との差額を、また、上記株式を保有し続けているときはその取得価額と事実審の口頭弁論終結時の上記株式の市場価額(上場が廃止された場合にはその非上場株式としての評価額。以下同じ。)との差額をそれぞれ基礎とし、経済情勢、市場動向、当該会社の業績等当該虚偽記載に起因しない市場価額の下落分を上記差額から控除して、これを算定すべきものと解される」との判断を示した。
 「虚偽記載が公表された後の市場価額の変動のうち、いわゆるろうばい売りが集中することによる過剰な下落は、有価証券報告書等に虚偽の記載がされ、それが判明することによって通常生ずることが予想される事態であって、これを当該虚偽記載とは無関係な要因に基づく市場価額の変動であるということはできず、当該虚偽記載と相当因果関係のない損害として上記差額から控除することはできないというべきである」と判示した点も妥当である。

(最高裁平成23年9月13日)