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2011年08月19日

知財高裁とは

知的財産高等裁判所とは

 我が国において、知的財産の活用が進展するに伴い、その保護に関して司法の果たすべき役割がより重要なものとなっているとの現状を踏まえて、知的財産に関する事件についての裁判の一層の充実及び迅速化を図るため、平成17年4月に、これを専門的に取り扱う裁判所として設置されたのが知財高裁です。

1. 知的財産高等裁判所が扱う事件には、行政事件の第一審としての審決取消訴訟と、民事事件の控訴審などがあります。

(1) 審決取消訴訟
 特許庁が行った審決に対する不服申立てとしての審決取消訴訟は、東京高等裁判所の専属管轄であり(特許法178条1項等)、その特別の支部である知的財産高等裁判所において取り扱われます(知的財産高等裁判所設置法2条2号)。

(2) 民事控訴事件
 民事事件の控訴審のうち、特許権、実用新案権、半導体集積回路の回路配置利用権及びプログラムの著作物についての著作者の権利に関する訴えの控訴事件は、東京高等裁判所の専属管轄に属し(民事訴訟法6条3項)、知的財産高等裁判所において取り扱われます(知的財産高等裁判所設置法2条1号)。
 そのため、これらの技術系事件については、全国の事件が知的財産高等裁判所に集中されていることになります。

 次に、民事控訴事件のうち、非技術系である意匠権、商標権、著作者の権利(プログラムの著作物についての著作者の権利を除く。)、出版権、著作隣接権、育成者権、不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴えの控訴事件については、第一審を取り扱った各地方裁判所に対応して、全国8か所にある高等裁判所が管轄を有していますので、そのうち、東京高等裁判所の管轄に属する事件は知的財産高等裁判所が取り扱うことになります(知的財産高等裁判所設置法2条1号)。

(3) その他の事件
  (1),(2)以外に知的財産高等裁判所が扱う事件としては、東京高等裁判所の管轄に属する民事事件及び行政事件のうち、主要な争点の審理につき知的財産権に関する専門的な知見を要する事件(知的財産高等裁判所設置法2条3号)があります。

 つまり、大阪地裁において、大阪の企業同士が特許権侵害で争っていた場合においても、敗訴した側が控訴した場合には、知財高裁が控訴審となりますので、東京での控訴審が行われるということになり、当事者双方が東京出張せざるを得ないということになります。

 裁判の迅速性、専門性、集中化を図る点において合理性を有していると言えますが、訴訟にかかる費用負担という点で一定の配慮が必要なところと言えます。

http://www.ip.courts.go.jp/aboutus/jurisdiction.html