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2011年09月26日

平成電電広告訴訟(最高裁)

 破綻した通信ベンチャー「平成電電」の投資事件に関し、出資者らが新聞広告を見て出資したため損失を被ったとして新聞広告を掲載していた新聞社などに損害賠償を求めていた訴訟で、2011年9月24日、最高裁は出資者側の上告不受理決定を行った。

 本件につき、東京高裁(2010年12月1日)は、「新聞広告が、新聞報道記事に対する信頼を背景に社会的な信頼を得ているとしても、新聞広告も、広告主が新聞の紙面を利用することについて対価を支払って自らの責任で読者に情報を提供する行為としての側面を有することは他の広告媒体による広告と同様であり、また、新聞広告において投資等の契約の誘引がされた場合においては、読者は、新聞広告の内容以外の様々な情報を入手したり、他の広告と対比したりする過程を経て契約の締結の可否を判断することになるのであるから、新聞社が、読者のために広告の内容の真実性や合理性を調査する一般的な法的義務を負っていると解することはできない。
 しかし、他方で、新聞広告に対する読者らの信頼は、高い情報収集能力を有する当該新聞社の報道記事に対する信頼と全く無関係に存在するものではないから、広告媒体業務に携わる新聞社は、新聞広告の持つ影響力の大きさに照らし、広告内容の真実性に疑念を抱くべき特別の事情があって読者らに不測の損害を及ぼすおそれがあることを予見し、又は予見し得た場合には、新聞広告に対する読者らの信頼を保護するために、広告内容の真実性を調査確認することにより、虚偽の広告が掲載されることを回避すべき義務を負っていると解すべきである(最高裁判所昭和五九年(オ)第一一二九号平成元年九月一九日第三小法廷判決・裁判集民事一五七号六〇一頁参照)」との判断基準を示し、本件匿名組合の出資者に不測の損害を被らせる危険があると予見することができたとはいえないとしていたが、その判断が是認されたものである。

 従来の最高裁の考え方に沿ったものであり、結論的にも妥当なものであると言える。