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2007年05月10日

戸籍法の一部を改正する法律案が成立

 戸籍法の一部を改正する法律案(閣法第59号)が平成19年3月6日に国会提出され、成立しております。その改正趣旨は、戸籍に記載された個人情報を保護するため、戸籍の公開制度を見直し、戸籍の謄抄本等の交付の請求をすることができる場合を制限するとともに、当該請求をする者の本人確認、不正に交付を受けた者の処罰等を行い、また、戸籍の真実性を担保するため、届出の受理の通知手続等を定めるなど戸籍の制度について所要の整備を行う必要があるというものです。

法律案要綱

第一  戸籍の謄本等の交付請求
 一  交付請求
  1  戸籍に記載されている者等による請求
   (一)  戸籍に記載されている者又はその配偶者、直系尊属若しくは直系卑属は、その戸籍の謄本若しくは抄本又は戸籍に記載した事項に関する証明書(以下「戸籍謄本等」という。)の交付の請求をすることができるものとすること。(第十条第一項関係)
   (二)  市町村長は、(一)の請求が不当な目的によることが明らかなときは、これを拒むことができるものとすること。(第十条第二項関係)
  2  第三者請求等
   (一)  第三者請求
 1(一)に規定する者以外の者は、次の各号に掲げる場合に限り、戸籍謄本等の交付の請求をすることができるものとすること。この場合において、当該請求をする者は、それぞれ当該各号に定める事項を明らかにしてこれをしなければならないものとすること。(第十条の二第一項関係)
    (1)  自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合 権利又は義務の発生原因及び内容並びに当該権利を行使し、又は当該義務を履行するために戸籍の記載事項の確認を必要とする理由
    (2)  国又は地方公共団体の機関に提出する必要がある場合 戸籍謄本等を提出すべき国又は地方公共団体の機関及び当該機関への提出を必要とする理由
    (3)  (1)及び(2)に掲げる場合のほか、戸籍の記載事項を利用する正当な理由がある場合 戸籍の記載事項の利用の目的及び方法並びにその利用を必要とする事由
   (二)  公用請求
 (一)にかかわらず、国又は地方公共団体の機関は、法令の定める事務を遂行するために必要がある場合には、戸籍謄本等の交付の請求をすることができるものとすること。この場合において、当該請求の任に当たる権限を有する職員は、その官職、当該事務の種類及び根拠となる法令の条項並びに戸籍の記載事項の利用の目的を明らかにしてこれをしなければならないものとすること。(第十条の二第二項関係)
   (三)  弁護士等による請求
    (1)  (一)にかかわらず、弁護士(弁護士法人を含む。)、司法書士(司法書士法人を含む。)、土地家屋調査士(土地家屋調査士法人を含む。)、税理士(税理士法人を含む。)、社会保険労務士(社会保険労務士法人を含む。)、弁理士(特許業務法人を含む。)、海事代理士又は行政書士(行政書士法人を含む。)は、受任している事件又は事務に関する業務を遂行するために必要がある場合には、戸籍謄本等の交付の請求をすることができるものとすること。この場合において、当該請求をする者は、その有する資格、当該業務の種類、当該事件又は事務の依頼者の氏名又は名称及び当該依頼者についての(一)に定める事項を明らかにしてこれをしなければならないものとすること。(第十条の二第三項関係)
    (2)  (一)及び(1)の規定にかかわらず、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士又は弁理士は、受任している事件について紛争解決手続の代理業務を遂行するために必要がある場合には、戸籍謄本等の交付の請求をすることができるものとすること。この場合において、当該請求をする者は、その有する資格、当該事件の種類、その業務として代理し又は代理しようとする手続及び戸籍の記載事項の利用の目的を明らかにしてこれをしなければならないものとすること。(第十条の二第四項関係)
    (3)  (一)及び(1)の規定にかかわらず、弁護士は、刑事に関する事件における弁護人としての業務等を遂行するために必要がある場合には、戸籍謄本等の交付の請求をすることができるものとすること。この場合において、当該請求をする者は、弁護士の資格、これらの業務の別及び戸籍の記載事項の利用の目的を明らかにしてこれをしなければならないものとすること。(第十条の二第五項関係)
 二  本人確認等
  1  一の請求をする場合において、現に請求の任に当たっている者は、市町村長に対し、運転免許証を提示する方法その他の法務省令で定める方法により、当該請求の任に当たっている者を特定するために必要な氏名その他の法務省令で定める事項を明らかにしなければならないものとすること。(第十条の三第一項関係)
  2  1の場合において、現に請求の任に当たっている者が、当該請求をする者(一の2の(二)の請求にあっては、請求の任に当たる権限を有する職員。以下「請求者」という。)の代理人であるときその他請求者と異なる者であるときは、当該請求の任に当たっている者は、市町村長に対し、法務省令で定める方法により、請求者の依頼又は法令の規定により当該請求の任に当たるものであることを明らかにする書面を提供しなければならないものとすること。(第十条の三第二項関係)
 三  資料の提供等
 市町村長は、一の2の請求がされた場合において、請求者が明らかにしなければならない事項が明らかにされていないと認めるときは、当該請求者に対し、必要な説明を求めることができるものとすること。(第十条の四関係)
 四  除かれた戸籍の謄本等の交付請求
 一から三までの規定は、除かれた戸籍の謄本若しくは抄本又は除かれた戸籍に記載した事項に関する証明書(以下「除籍謄本等」という。)の交付の請求をする場合に準用するものとすること。(第十二条の二関係)
第二  戸籍の記載の真実性を担保するための措置
 一  届出の際の確認手続
 市町村長は、届出によって効力を生ずべき認知、縁組、離縁、婚姻又は離婚の届出(以下「縁組等の届出」という。)が市役所又は町村役場に出頭した者によってされる場合には、当該出頭した者を特定するために必要な氏名その他の法務省令で定める事項を示す運転免許証その他の資料の提供又はこれらの事項についての説明を求めるものとすること。(第二十七条の二第一項関係)
 二  確認できなかった場合の措置
 市町村長は、縁組等の届出があった場合において、届出事件の本人のうちに、一の規定による措置によっては市役所又は町村役場に出頭して届け出たことを確認することができない者があるときは、当該縁組等の届出を受理した後遅滞なく、その者に対し、法務省令で定める方法により、当該縁組等の届出を受理したことを通知しなければならないものとすること。(第二十七条の二第二項関係)
 三  届出の不受理申出
  1  何人も、その本籍地の市町村長に対し、あらかじめ、法務省令で定める方法により、自らを届出事件の本人等とする縁組等の届出がされた場合であっても、自らが市役所又は町村役場に出頭して届け出たことを一の規定による措置により確認することができないときは当該縁組等の届出を受理しないよう申し出ることができるものとすること。(第二十七条の二第三項関係)
  2  市町村長は、1の申出に係る縁組等の届出があった場合において、1の申出をした者が市役所又は町村役場に出頭して届け出たことを一の規定による措置により確認することができなかったときは、当該縁組等の届出を受理することができないものとすること。(第二十七条の二第四項関係)
  3  市町村長は、2の規定により縁組等の届出を受理することができなかった場合は、遅滞なく、1の申出をした者に対し、法務省令で定める方法により、当該縁組等の届出があったことを通知しなければならないものとすること。(第二十七条の二第五項関係)
第三  その他
 一  死亡届の届出資格者の拡大
 死亡の届出は、後見人、保佐人、補助人及び任意後見人も、これをすることができるものとすること。(第八十七条第二項関係)
 二  磁気ディスクをもって調製された戸籍等への準用
 戸籍又は除かれた戸籍が磁気ディスクをもって調製されているときは、第一の一又は第一の四の請求は、戸籍謄本等又は除籍謄本等に代えて、磁気ディスクをもって調製された戸籍又は除かれた戸籍に記録されている事項の全部又は一部を証明した書面についてすることができるものとすること。(第百二十条第一項関係)
 三  不服申立手続
  1  第一の一又は第一の四の請求、第四十八条第二項の規定による請求及び第三の二の請求について市町村長がした処分に不服がある者は、市役所又は町村役場の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長に審査請求をすることができるものとすること。(第百二十四条関係)
  2  1の処分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求の裁決を経た後でなければ、提起することができないものとすること。(第百二十五条関係)
 四  学術研究のための戸籍及び除かれた戸籍に関する情報提供
 市町村長又は法務局若しくは地方法務局の長は、法務省令で定める基準及び手続により、統計の作成又は学術研究であって、公益性が高く、かつ、その目的を達成するために戸籍若しくは除かれた戸籍に記載した事項又は届書その他市町村長の受理した書類に記載した事項に係る情報を利用する必要があると認められるもののため、その必要の限度においてこれらの情報を提供することができるものとすること。(第百二十六条関係)
 五  制裁の強化
  1  偽りその他不正の手段により、第一の一の戸籍謄本等、第一の四の除籍謄本等又は第三の二に規定する書面の交付を受けた者は、三十万円以下の罰金に処するものとすること。(第百三十三条関係)
  2  偽りその他不正の手段により、第四十八条第二項の規定による閲覧をし、又は証明書の交付を受けた者は、十万円以下の過料に処するものとすること。(第百三十四条関係)
  3  正当な理由がなくて期間内にすべき届出又は申請をしない者は、五万円以下の過料に処するものとすること。(第百三十五条関係)
  4  市町村長が、第四十四条第一項又は第二項の規定によって、期間を定めて届出又は申請の催告をした場合に、正当な理由がなくてその期間内に届出又は申請をしない者は、十万円以下の過料に処するものとすること。(第百三十六条関係)
  5  正当な理由がなくて届出又は申請を受理しないとき等戸籍事件について職務を怠ったときは、市町村長を、十万円以下の過料に処するものとすること。(第百三十七条関係)
 五  施行期日
 この法律は、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとすること。(附則第一条関係)
 六  この法律による戸籍法に関する規定の整備等に伴い、所要の経過措置を講ずること(附則第二条及び第三条まで関係)
 七  関係法律について所要の規定の整備をすること。(附則第四条から第六条まで関係)