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2006年06月05日

和歌山カレー事件被告人の写真撮影、イラスト描写事件

 写真週刊誌FOCUSへの被告人の写真及びイラスト掲載につき、最高裁は、「人は、みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有する。もっとも、人の容ぼう等の撮影が正当な取材行為等として許されるべき場合もあるのであって、ある者の容ぼう等をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは、被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性等を総合考慮して、被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである。」とした上で、一部のイラスト画につき、「被上告人が手錠、腰縄により身体の拘束を受けている状態が描かれたものであり、そのような表現内容のイラスト画を公表する行為は、被上告人を侮辱し、被上告人の名誉感情を侵害するものというべきである」と判示した。
いわゆる肖像権侵害による不法行為に関する初めての最高裁判決であるが、イラストの描き方によっても判断が分かれる可能性があると言えよう。
(判例時報1925号84頁)