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2005年12月14日

迂回融資忠実義務違反事件

生命保険会社が取締役に対し、巨額の迂回融資を行ったことにつき善管注意義務違反、忠実義務違反に基づく損害賠償請求を行った事件である。
東京高裁は、「大蔵省から被控訴人のプライベート・カンバニーに対するに対する多額の融資を解消するよう度々指摘されていながら、控訴人と密接な関係にある太蔵実業に対しプライベート・カンパニーの破綻を回避するための救済資金を供給する必要から、上記のような事情の下で回収に懸念のある融資であることを認識しつつ、太蔵実業、ひいては、控訴人自身の利益を図るために、自己の被控訴人における地位を利用して、被控訴人の事業目的とは無関係にその資金を流用すべき、被控訴人をして本件融資一を実行させたものということができ、控訴人には取締役としての善管注意義務ないし忠実義務に違反する行為があった」等として損害賠償責任を認めたものである。
取締役の融資責任においては、通常、経営判断原則(Business Judgement rule)が問題となることが多いが、本件では、違法性が明らかであるとして、そのような裁量論には入らなかったようであり、認定事実を前提とする限り、妥当な判断と言えるであろう。
(判例時報1907号139頁)