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2005年12月13日

連帯保証債務無効事件

信用金庫が自宅資産を有する71歳の老人に対し、連帯保証債務の履行を求めた事件であるが、東京高裁は、「融資の時点で当該融資を受けても短期間に倒産に至るような破綻状態にある債務者のために、物的担保を提供したり連帯保証債務を負担しようとする者は存在しないと考えるのが経験則であるところ、控訴人は、本件保証契約の締結の意思を確認された当時71歳の高齢で、子もなく2500万円の支払能力はなかったのであるから、もし控訴人が訴外会社の経営状態について上記のような破綻状態にあり現実に保証債務の履行をしなければならない可能性が高いことを知っていたならば、唯一の土地建物を担保提供してまで保証する意思はなかったものと認めるのが相当である。したがって、控訴人は、訴外会社の経営状態が上記のような破綻状態にあるものとは全く認識せずに本件保証契約の締結に応じたものというべきであり、本件保証契約にはその動機に錯誤があったことは明らかである」「保証契約の時点で主債務者がこのような意味での破綻状態にないことは、保証しようとする者の動機として、一般に、黙示的に表示されているものと解するのが相当である」と判示した。
妥当な判断であり、金融機関におけるこのような担保徴求は厳禁されるべきである。
(判例時報1907号42頁)