« 最高裁「シートカッター」事件判決(平成29年7月10日) | TOP

2018年02月05日

「伊藤レポート 2.0」ー社外役員の地位、責任

 2017年10月26日、経済産業省より「伊藤レポート 2.0」と呼ばれる「持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会報告書」が公表された。これは、2014年8月6日に公表された「伊藤レポート」の続編であり、前回の「伊藤レポート」は、「ROE(自己資本利益率)8%」という数値目標が大きくクローズアップされ、コーポレートガバナンス(企業統治)分野において様々な議論が巻き起こっていたところである。
 今回の「伊藤レポート 2.0」においては、いくつかの提言が示されているものの、やや抽象的な内容にとどまり、社外取締役の任務においても十分な検討がなされていない。「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス −ESG・非財務情報と無形資産投資ー(価値協創ガイダンス)の「社外役員のスキルおよび多様性」という項目において、「投資家は、主として業務執行に対する監督の役割を担う社外役員(社外取締役等)に対して、一般株主の利益を確保する観点から、独立した客観的な立場とその意思を有していることを前提条件として求めている。さらに、個々の社外役員が業務執行を担う経営陣等と対等の議論をするに十分な能力や、経験を有しており、また、社外役員全体として多様性が確保されることで、一般株主との利益相反の監督のために活動・貢献することを求めている。」という一般論が示した上で「企業には、社外役員の経歴や属性、実際に果たした役割等に関する情報を示すとともに、必要に応じて社外取締役等が投資家への情報発信や対話を行うなど積極的な対応が求められる。」とするものの、取締役会の一構成員たる社外取締役が、どのような機会において、常時あるいは定期的に、どのような項目、内容につき、どの範囲の投資家に対し、どのような情報発信を行っていくべきとするのか、その具体的指針が全く示されておらず、ガイドラインというにははなはだ不十分な内容となっている。