« 平成電電広告訴訟(最高裁) | TOP | リーガルサービスに関する商標の寄与度 »

2011年10月19日

証券被害に関する損害賠償論(最高裁判決)

 本件は,東京証券取引所に上場されていた被上告人Y1の株式(以下「Y1株」という。)を取引所市場において取得した者等である上告人らが,A社等の少数特定者が所有するY1株の数の割合が東京証券取引所の定める上場廃止事由に該当するという事実があったにもかかわらず,被上告人Y1が有価証券報告書及び半期報告書(以下「有価証券報告書等」という。)に虚偽の記載をして上記事実を隠蔽し,また,A社がY1株の大量保有報告書に過少な数を記載するなどして上記事実の隠蔽に協力したことにより,損害を被ったと主張して,被上告人Y1,A社を吸収合併した被上告人Y2並びに被上告人Y1及びA社の代表取締役であったY3に対し,不法行為等に基づく損害賠償を求める事案である。上記の不法行為により上告人らに生じた損害の額が争点となっている。

 このように,有価証券報告書等に虚偽の記載がされている上場株式を取引所市場において取得した投資者が,当該虚偽記載がなければこれを取得することはなかったとみるべき場合において,当該虚偽記載の公表後に上記株式を取引所市場において処分したときは,当該虚偽記載により上記投資者に生じた損害の額,すなわち当該虚偽記載と相当因果関係のある損害の額は,その取得価額と処分価額との差額を基礎とし,経済情勢,市場動向,当該会社の業績等当該虚偽記載に起因しない市場価額の下落分を上記差額から控除して,これを算定すべきものと解される。

 虚偽記載が公表された後の市場価額の変動のうち,いわゆるろうばい売りが集中することによる過剰な下落は,有価証券報告書等に虚偽の記載がされ,それが判明することによって通常生ずることが予想される事態であって,これを当該虚偽記載とは無関係な要因に基づく市場価額の変動であるということはできず,当該虚偽記載と相当因果関係のない損害として上記差額から控除することはできないというべきである。

(最高裁平成23年9月13日)