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2011年03月25日

「敷引特約」最高裁判決

 賃貸マンションの契約において、貸主に納めた敷金から一定の金額を自動的に差し引く特約(敷引特約)が消費者契約法に基づき無効かどうかが争われた事件で、平成23年3月24日、最高裁第1小法廷は、「敷金から差し引く額を事前に決めておくことで補修費用を巡る争いを防ぐことができるため、あまりに高額でなければ借り手が一方的に不利とはいえない」として、「特約は原則として有効」とする初判断を示し、差し引かれた敷金の返還を求めた借主側の上告を棄却した。
 原告の借主(京都在住)は、入居時に敷金40万円を納めていたが、退去時に特約に基づき21万円を差し引かれたため「部屋の傷や汚れと無関係に一定額を差し引く特約は無効」と訴えていたが、最高裁が借主側の請求を認めなかったものである。

判旨の概要
 「消費者契約である居住用建物の賃貸借契約に付された敷引特約は,当該建物に生ずる通常損耗等の補修費用として通常想定される額,賃料の額,礼金等他の一時金の授受の有無及びその額等に照らし,敷引金の額が高額に過ぎると評価すべきものである場合には,当該賃料が近傍同種の建物の賃料相場に比して大幅に低額であるなど特段の事情のない限り,信義則に反して消費者である賃借人の利益を一方的に害するものであって,消費者契約法10条により無効となると解するのが相当である。」
 「これを本件についてみると,本件特約は,契約締結から明渡しまでの経過年数に応じて18万円ないし34万円を本件保証金から控除するというものであって,本件敷引金の額が,契約の経過年数や本件建物の場所,専有面積等に照らし,本件建物に生ずる通常損耗等の補修費用として通常想定される額を大きく超えるものとまではいえない。また,本件契約における賃料は月額9万6000円であって,本件敷引金の額は,上記経過年数に応じて上記金額の2倍弱ないし3.5倍強にとどまっていることに加えて,上告人は,本件契約が更新される場合に1か月分の賃料相当額の更新料の支払義務を負うほかには,礼金等他の一時金を支払う義務を負っていない。そうすると,本件敷引金の額が高額に過ぎると評価することはできず,本件特約が消費者契約法10条により無効であるということはできない。」
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0020Recent?hanreiSrchKbn=02&recentInfoFlg=1

 関西では、広く「敷引特約」が行われているが、当事者の合理的意思や関西の取引慣行に合致したものであり、妥当は判決と言えよう。