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2009年05月09日

週刊新潮名誉毀損に係る代表取締役任務懈怠事件

東京地裁平成21年2月4日判決(判時2033号3頁)

「株式会社であろうと、出版を業とする企業は、出版物による名誉毀損等の権利侵害行為を可及的に防止する効果のある仕組、体制を作っておくべきものであり、株式会社においては、代表取締役が、業務の統括責任者として、社内に上記仕組、体制を構築すべき任務を負うと言わなければならない。」「本件各記事については、十分な裏付取材が行われておらず、一方において、Aは、自らの情報提供者と位置づけ、編集部が裏付取材をするとして自らは十分な取材をせずに情報を提供し、他方において、編集部は、Aからの情報なので正しいと安易に判断して、記事としたものと認められ、原告らの名誉を毀損する本件各記事が週刊新潮に掲載され、発行されるに至ったのは、雑誌記事の執筆、編集を担当する記者、編集部等の名誉毀損に関する法的知識や裏付取材のあり方についての意識が不十分であったこと、また、社内における権利侵害防止のための慎重な検討が不足していたことが原因であるというべきであり、このような結果を惹起したのは、被告会社内部に、これを防止すべき有効な対策がとられていなかったことに原因があるといわざるを得ない。」と判示し、代表取締役の第三者に対する責任を認めたものである。

従来の商法(会社法)の法理論をマスコミ報道事案にも適用したものであり、妥当な判断であると言える。