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2007年05月01日

契約準備段階における信義則上の注意義務違反と損害賠償請求の可否

最高裁平成19年2月27日 野澤正充教授


「Yの上記各行為によって、Xが、Yとの間で、本件基本契約又はこれと同様の本件商品の継続的な製造、販売に係る契約が締結されることについて強い期待を抱いていたことには相当の理由があるというべきであり、Xは、Yの上記各行為を信頼して、相応の費用を投じて上記のような開発、製造をしたというべきである」「Yには、Xに対する関係で、契約準備段階における信義則上の注意義務違反があり、Yは、これによりXに生じた損害を賠償すべき責任を負うというべきである」と判示した最高裁に関する評釈である。


本件におけるYが、本件商品の売買契約における当事者に該当すると言えるかどうかは微妙であるとし、契約の締結に対して必ずしもイニシアティヴのないYの責任を認めるとともに、その信義則上の注意義務違反を、契約交渉が現実に破棄された平成10年8月17日ではなく、それ以前のYの行為に求めている事例判決であり、「契約準備段階における信義則上の注意義務違反」の法的性質や損害賠償の範囲に関しても、課題が残っているとしている。


(NBL 855号 14頁)