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2011年06月17日

マスメディアにおける写真掲載

被疑者が手錠をかけられている写真掲載の可否

 2011年6月15日、東京地裁は、いわゆる「ロス疑惑」で無罪判決が確定した三浦和義氏が1985年に殺人未遂容疑で逮捕された際、警察官に囲まれ、手首に手錠がかけられていた写真をヤフーと産経新聞社がネットに掲載していた事件につき、その遺族に対し、金66万円を連帯して支払うよう命ずる判決を下した。

 名誉やプライバシーは人格的生存にとって不可欠なものであり、その理は被疑者や被告人であっても何ら異なるところではありません。ただ、犯罪報道においては、マスメディアの報道の自由(表現の自由)や国民の知る権利との関係で、一定の制約を受ける場合もあります。
 このような問題につき、亡三浦和義氏は自ら数々の訴訟を提起し(本人訴訟)、被疑者のプライバシーに対しては十分な配慮がなされなければならないという数多くの裁判例が積み重ねられてきたところです。

 これまで亡三浦和義氏が勝訴してきた裁判例の考え方からするならば、本件判決の内容も当然予測し得るものであり、その報道のあり方に大いに問題があったと言わざるを得ません。マスメディアによる人権侵害は、重大かつ広範囲に及ぶ危険性がありますので、報道に際しては、報道機関における内部統制システムの構築のみならず、十分なリーガル・チェックがなされなければならないのです。

 これまでの裁判所による「警告」を忘れてしまっているのか、はたまた報道機関のチェック体制に重大なる欠陥があるのか、大いに疑問に思った次第である。

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