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2011年06月01日

ウィルスの作成、保管に関する刑法改正

 本年5月31日、衆議院本会議にて、コンピュータウィルスの作成や保管に関する刑事罰を新設する刑法等改正案が可決されました。

第168条の2(不正指令電磁的記録作成等)
 人の電子計算機における実行の用に供する目的で、次に掲げる電磁的記録その他の記録を作成し、又は提供した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
 一 人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録
 二 前号に掲げるもののほか、同号の不正な指令を記述した電磁的記録その他の記録
 2 前項第一号に掲げる電磁的記録を人の電子計算機における実行の用に供した者も、同項と同様とする。
 3 前項の罪の未遂は、罰する。

第168条の3(不正指令電磁的記録取得等)
 前条第一項の目的で、同項各号に掲げる電磁的記録その他の記録を取得し、又は保管した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
 第175条中「図画」の下に「、電磁的記録に係る記録媒体」を加え、「、販売し」を削り、「又は250万円以下の罰金若しくは科料に処する」を「若しくは250万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する」に改め、同条後段を次のように改める。
 電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
 第175五条に次の一項を加える。
 2 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。
 第234条の2に次の一項を加える。
 2 前項の罪の未遂は、罰する。

http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g15905046.htm


 現代社会におけるサイバー攻撃の脅威やウィルスによる法益侵害の広汎性、甚大性に鑑みると、その立法趣旨には全く異論がありませんが、不正アクセス禁止法のような特別法ではなく、第19章印章偽造の罪の無理矢理入れたことや、「不正な指令を与える電磁的記録」の含意する範囲が必ずしも明確ではなく、研究開発に対する萎縮的効果や不当な処罰範囲の拡大を招くおそれがあるのではないかという危惧も存します。