« 「堂島ロール」商標事件 | TOP | ネット上の名誉毀損の判断基準(最高裁) »

2010年03月14日

新聞社における情報管理体制

日本経済新聞社における従業員によるインサイダー取引に関し、同社の取締役らの責任が問われた事件において、東京地裁は、一般論として「株式会社の取締役は、会社の事業の規模や特性に応じて、従業員による不正行為などを含めて、リスクの状況を正確に把握し、適切にリスクを管理する体制を構築し、また、その職責や必要の限度において、個別リスクの発生を防止するために指導監督すべき善管注意義務を負うものと解される。」「補助参加人(日経新聞社)は、経済情報を中心として日経新聞など5紙をお発行する我が国有数の報道機関であり、その報道機関としての性質上、多種多様な情報を大量に取り扱っており、その従業員は、報道部門や広告部門なども含めて、業務遂行上、秘密性のある情報や未公表情報などのインサイダー情報に接する機会が多いといえる。したがって、補助参加人の取締役としては、それらの事情を踏まえ、一般的に予見できる従業員によるインサイダー取引を防止し得る程度の管理体制を構築し、また、その職責や必要の限度において、従業員によるインサイダー取引を防止するために指導監督すべき善管注意義務を負うものと解される。」としつつ、本件においては、クローズドシステムが構築されていたこと、情報管理規定が制定され、同規定に基づいた運用がなされていたこと等の事情を勘案し、「情報管理体制は、情報管理に関して、一般的にみて合理的な管理体制であった」と判示した。

(判例時報2064号139頁)