近藤 剛史

2020年05月17日

「定時株主総会の開催について」(法務省)

令和2年5月15日、法務省ウェブサイトにおいて、「定時株主総会の開催について」が更新されています。

法務省:定時株主総会の開催について

(以下、引用)

今般の新型コロナウイルス感染症に関連し,当初予定した時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合における定時株主総会の開催について,以下のとおりお知らせします。

1 定時株主総会の開催時期に関する定款の定めについて
 定時株主総会の開催時期に関する定款の定めがある場合でも,通常,天災その他の事由によりその時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じたときまで,その時期に定時株主総会を開催することを要求する趣旨ではないと考えられます。
 したがって,今般の新型コロナウイルス感染症に関連し,定款で定めた時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合には,その状況が解消された後合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足りるものと考えられます。なお,会社法は,株式会社の定時株主総会は,毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならないと規定していますが(会社法第296条第1項),事業年度の終了後3か月以内に定時株主総会を開催することを求めているわけではありません。

2 定時株主総会の議決権行使のための基準日に関する定款の定めについて
 会社法上,基準日株主が行使することができる権利は,当該基準日から3か月以内に行使するものに限られます(会社法第124条第2項)。
 したがって,定款で定時株主総会の議決権行使のための基準日が定められている場合において,新型コロナウイルス感染症に関連し,当該基準日から3か月以内に定時株主総会を開催できない状況が生じたときは,会社は,新たに議決権行使のための基準日を定め,当該基準日の2週間前までに当該基準日及び基準日株主が行使することができる権利の内容を公告する必要があります(会社法第124条第3項本文)。

3 剰余金の配当の基準日に関する定款の定めについて
 特定の日を剰余金の配当の基準日とする定款の定めがある場合でも,今般の新型コロナウイルス感染症に関連し,その特定の日を基準日として剰余金の配当をすることができない状況が生じたときは,定款で定めた剰余金の配当の基準日株主に対する配当はせず,その特定の日と異なる日を剰余金の配当の基準日と定め,当該基準日株主に剰余金の配当をすることもできます。なお,このように,剰余金の配当の基準日を改めて定める場合には,2の場合と同様に,当該基準日の2週間前までに公告する必要があります(会社法第124条第3項本文)。

○ 参考情報

1 議決権の行使方法について
 株主は,株主総会に出席しないで,書面又は電磁的方法により議決権を行使することも,会社法上,認められています(会社法第298条第1項第3号,第4号)。

2 ハイブリッド型の株主総会について
 株主に株主総会の開催場所での参加を認めるとともに,株主がオンラインで参加することも許容するいわゆるハイブリッド型の株主総会を開催する場合の法的・実務的論点や具体的な実施方法等については,経済産業省のホームページ を御覧ください。

3 「株主総会運営に係るQ&A」の策定について
 経済産業省及び法務省は,令和2年4月2日,今般の新型コロナウイルス感染症に関連し,「株主総会運営に係るQ&A」を策定しました(経済産業省のホームページを御覧ください。)。
同Q&Aは,現時点の状況を踏まえ,新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から,株主総会の運営上想定される事項についての考え方を示したものです。

4 「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査及び株主総会の対応について」の公表について
 新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応に係る連絡協議会は,令和2年4月15日,「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査及び株主総会の対応について」を公表しました(金融庁ホームページ を御覧ください。)。
 これは,新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて,3月期決算業務及び監査業務に大きな遅延が生じる可能性が高まっていることを踏まえ,通常6月末に開催される株主総会の運営等についての同協議会の考えを示したものです。
 また,続行の決議(会社法第317条)によりいわゆる継続会を開催する場合における留意点等については,「継続会(会社法317条について) 」【PDF】も御覧ください。

5 新型コロナウイルス感染症に関連した商業・法人登記における取扱いについては,「商業・法人登記事務に関するQ&A 」を御覧ください。

6 令和2年5月15日,会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令(法務省令第37号)が公布され,同日から施行されました(本省令の内容はこちら【PDF】)。本省令は,新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ,本省令の施行の日から6か月以内に招集の手続が開始される定時株主総会に限り,単体の貸借対照表や損益計算書等をいわゆるウェブ開示によるみなし提供制度の対象に含めることとするものです。
 本省令の内容等については,「会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令(令和2年法務省令第37号)について」【PDF】も御覧ください。

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2020年05月03日

オンライン法律相談(Zoom)の開始

 本日(憲法記念日)より、新型コロナウィルス(Covid-19)対策を講じつつ、速やかに皆様方の社会経済生活や基本的人権を守っていくため、当分の間、顧問会社様、依頼者様、弊所住所録に既登録の皆様方を中心に、Zoom(https://zoom.us/)を利用したオンラインによる法律相談を一部開始させていただくことに致しました。
 ご希望の方は、弁護士近藤剛史のメールアドレス(****@kondolaw.jp)宛に、【オンライン法律相談希望】というタイトルのメールをお送りいただければと存じます。折り返し、当職より候補日時・時刻をお伝えし、実施日時が決まり次第、Zoomの招待URL、ミーティングID等をメールにてお送りさせていただきます。
 なお、オンライン法律相談料は、(顧問契約ないし弁護士委任契約を既に締結されている皆様を除き)1時間以内1万円(税別)とさせていただきます(事前にメールにてお送りいただきました資料や証拠等の検討時間を含みます)。また、相談内容の守秘義務が万全に守られるべきことは言うまでもありませんが、通信セキュリティ・プライバシーポリシーにつきましてはZoom Video Communications, Incに準拠させていただくこととし、その他の情報セキュリティ、IT・Zoomの利用方法、通信料(容量無制限の定額ネット環境を推奨)等につきましては、自己責任にてお願い致します。

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2020年04月25日

ウェーランド経済書講義と福澤諭吉

慶應4年(1868年)5月15日
 その日は江戸市中は混乱のさなかにあり、「芝居も寄席も見世物も料理茶屋もみな休んでしまって、八百八町は真の闇(やみ)、何が何やらわからないほど」であったと『福翁自伝』は伝えている。もちろん授業をしている学校などあろう筈はなかった。けれどもそのなかで福澤先生はいつもと変わらず土曜日の日課であるウェーランド経済書(Francis Wayland: The elements of political economy,1866)の講義を続けたのであった。そして先生は、世の中にいかなる変動があっても、慶應義塾の存する限り、わが国の学問の命脈は絶えることはないのだと塾生を励まし、それを大きな誇りとされたのであった。

404 Not Found:慶應義塾
慶應義塾公式サイト。慶應義塾について、入学案内、教育、研究、学生生活、大学学部、大学院研究科、一貫教育校、各キャンパス、研究所へのリンクなど。
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2020年04月17日

株主総会における「継続会」(会社法317条)

 令和2年4月14日付けの経済産業省「株主総会運営に係るQ&A」(https://www.meti.go.jp/covid-19/kabunushi_sokai_qa.html)では、「現下の状況においては、その結果として、設定した会場に株主が出席していなくても、株主総会を開催することは可能と考えます。この場合、書面や電磁的方法による事前の議決権行使を認めることなどにより、決議の成立に必要な要件を満たすことができます。」とされています。ただ、「その結果として、設定した会場に株主が出席していな」い場合とされており、現実的には社員株主等の何人かの株主の出席が見込まれる場合が多く、現行法上、そもそも株主総会の開催を想定しなくてもよいということにはならないことには注意が必要です。
 また、他方で、会社法第317条による「継続会」という手段を用いることで、配当の基準日は変えずに、決算の承認の総会を後日に開催予定されていた株主総会の後、決算の内容について総会に提出する場を設け、株主の承認を得るという手続に経ることが可能となりますので、決算承認等の現実的な期限内対応が難しい場合には、この手段を用いることが考えられます。

<参照条文>
会社法第317条(延期又は続行の決議)
 株主総会においてその延期又は続行について決議があった場合には、第298条(株主総会の招集の決定)及び第299条(株主総会の招集の通知)の規定は、適用しない。

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2020年04月07日

事務所営業等に関するお知らせ

この度、新型コロナウィルス感染症の拡大を受けまして、弊所でも当面の間テレワークを実施することとなりました。
ご連絡につきましては、メールでの対応とさせていただきます。
ご理解を賜りますよう何卒宜しくお願い申し上げます。

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2020年04月03日

新型コロナウィルス感染下における株主総会運営

 

株主総会運営に係るQ&A(令和2年4月2日経済産業省、法務省)

経済産業省及び法務省より、新型コロナウィルスの感染拡大下における「株主総会運営に係るQ&A」が公表されています。現在の深刻な感染状況からして、「3密」を避けるべく柔軟な対応はやはり必要だと思われます。

(Q)株主総会の招集通知等において、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために出席を控えることを呼びかけることは可能ですか。
(A)可能です。感染拡大防止策の一環として、出席を控えるよう呼びかけることは、株主の健康に配慮した措置と考えます。
なお、その際には、併せて書面や電磁的方法による事前の議決権行使の方法を案内することが望ましいと考えます。

(Q)新型コロナウイルスの感染拡大防止に必要な対応をとるために、会場に入場できる株主の人数を制限することは可能ですか。
(A)可能です。新型コロナウイルスの感染拡大防止に必要な対応をとるために、やむを得ないと判断される場合には、合理的な範囲内において、自社会議室を活用するなど、例年より会場の規模を縮小することや、会場に入場できる株主の人数を制限することも、可能と考えます。現下の状況においては、その結果として、会場に事実上株主が出席していなかったとしても、株主総会を開催することは可能と考えます。

(Q)上記Qに関連し、株主総会への出席について事前登録制を採用し、事前登録者を優先的に入場させることは可能ですか。
(A)可能です。上記Qの場合における会場の規模の縮小や、入場できる株主の人数の制限に当たり、株主総会に出席を希望する者に事前登録を依頼し、事前登録をした株主を優先的に入場させる等の措置をとることも、可能と考えます。なお、事前登録を依頼するに当たっては、全ての株主に平等に登録の機会を提供するとともに、登録方法について十分に周知し、株主総会に出席する機会を株主から不公正に奪うものとならないよう配慮すべきと考えます。

(Q)発熱や咳などの症状を有する株主に対し、入場を断ることや退場を命じることは可能ですか。
(A)可能です。新型コロナウイルスの感染拡大防止に必要な対応をとるために、ウイルスの罹患が疑われる株主の入場を制限することや退場を命じることも、可能と考えます。

(Q)新型コロナウイルスの感染拡大防止に必要な対応をとるために、株主総会の時間を短縮すること等は可能ですか。
(A)可能です。新型コロナウイルスの感染拡大防止に必要な対応をとるために、やむを得ないと判断される場合には、株主総会の運営等に際し合理的な措置を講じることも、可能と考えます。具体的には、株主が会場に滞在する時間を短縮するため、例年に比べて議事の時間を短くすることや、株主総会後の交流会等を中止すること等が考えられます。

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2020年03月30日

新民法の施行 -契約不適合責任

 2020年4月1日より、新民法が施行されます。いくつもの重要な改正がなされておりますが、特に、売買契約において従来瑕疵担保責任と呼ばれていた制度が契約不適合責任と変更された点は、理論的ないし制度的にとても重要です。
 新法におきましては、特定物売買と不特定物売買とを区別せず、売主は一般的に種類、品質及び数量に関して売買契約の内容に適合した目的物を引き渡す債務(義務)を負うことを前提とし、引き渡しがなされた目的物において契約の内容に適合しない場合にはその債務は不履行であるとし(従来の契約責任説の立場)、損賠賠償請求においても、債務不履行における原則論がそのまま適用され、売主の帰責事由が必要ということになります(新法415条1項但書)。また、契約の解除を行う場合にも、原則として履行の追完の催告が必要とされることになりました(新法541条)
 今後、企業間において締結される取引基本契約書においても、新民法との整合性を考え、瑕疵担保責任という用語を用いず、契約不適合責任という用語を用いる必要がありますので、その点の注意が必要です。

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2020年03月26日

個人情報管理に関するグループ企業への監督責任

 ㈱ベネッセコーポレーションに関連する企業の個人情報流出事件につき、日経新聞の報道によると、2020年3月25日、東京高裁は、同社のグループ会社であるシンフォームのみならず、㈱ベネッセコーポレーション本体についても、「スマートフォンを用いた個人情報のデータの転送は想定できた」として「ベネッセはシンフォームを適切に監督すべきだったのに放置し、情報漏えいを回避できなかった」としてその損害賠償責任を認めたという。
 その詳細な事実関係や具体的な注意義務違反の内容が明らかではないが、今後、親会社の子会社に対する管理・監督等において、情報管理の問題も重要視されるべき状況になってきていると言える。

<参照条文>
個人情報の保護に関する法律
第22条(委託先の監督)
 個人情報取扱事業者は、個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場合は、その取扱いを委託された個人データの安全管理が図られるよう、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない

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2020年03月10日

マスクの転売禁止規制(国民生活安定緊急措置法)

 政府は、2020年3月10日、新型コロナウィルスの蔓延のため入手困難となっているマスクにつき、インターネット上での転売等を禁止するため、国民生活安定緊急措置法の政令改正を閣議決定したという。本来は、公共財や経済的外部性を有するもの以外の財やサービスについては、自由競争市場によって供給されるのが公正であるというのが経済学の教えるところであるが、昨今のような社会情勢下においては、情報の完全性や供給サイドの硬直性、自由競争性など完全競争市場の大前提が崩れているところであり、やむを得ないと言えるであろう。
 マスクにつき、十分な供給がなされるようになり、同法の適用も早期に解除されることが望まれるところである。

<参考条文>
国民生活安定緊急措置法(昭和48年法律第121号)

第1条(目的)
 この法律は、物価の高騰その他の我が国経済の異常な事態に対処するため、国民生活との関連性が高い物資及び国民経済上重要な物資の価格及び需給の調整等に関する緊急措置を定め、もつて国民生活の安定と国民経済の円滑な運営を確保することを目的とする。

第3条(標準価格の決定等)
 物価が高騰し又は高騰するおそれがある場合において、国民生活との関連性が高い物資又は国民経済上重要な物資(以下「生活関連物資等」という。)の価格が著しく上昇し又は上昇するおそれがあるときは、政令で、当該生活関連物資等を特に価格の安定を図るべき物資として指定することができる。
2 前項に規定する事態が消滅したと認められる場合には、同項の規定による指定は、解除されるものとする。

第4条1項
 主務大臣は、前条第一項の規定による指定があつたときは、その指定された物資(以下「指定物資」という。)のうち取引数量、商慣習その他の取引事情からみて指定物資の取引の標準となるべき品目(以下「標準品目」という。)について、遅滞なく、標準価格を定めなければならない。

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2020年03月04日

サイバーセキュリティ関係法令Q&A ハンドブック

 令和2年3月2日、内閣官房内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)より、「サイバーセキュリティ関係法令Q&A ハンドブック Ver1.0」が公表されました。Q1~Q73として網羅的な設例及びその解説が紹介されています。
 例えば、「会社の事業継続にとってサイバーインシデントが及ぼす影響が看過できない状況下においては、この「リスク」の中に、サイバーセキュリティに関するリスクが含まれ得るため、リスク管理体制の構築には、サイバーセキュリティを確保する体制の構築が含まれ得る。」(16P)「会社法は、「業務の適正を確保するための体制の整備」について取締役会が決すべきものとしているが、当該体制の具体的な在り方は、一義的に定まるものではなく、各会社が営む事業の規模や特性等に応じて、その必要性、効果、実施のためのコスト等様々な事情を勘案の上、各会社において決定されるべき事項である。また、取締役会が決めるのは「目標の設定、目標達成のために必要な内部組織及び権限、内部組織間の連絡方法、是正すべき事実が生じた場合の是正方法等に関する重要な事項(要綱・大綱)4」でよいと解されている。サイバーセキュリティに関していえば、当該体制の整備としては、「情報セキュリティ規程」「個人情報保護規程」等の規程の整備や、CSIRT(Computer Security Incident ResponseTeam)などのサイバーセキュリティを含めたリスク管理を担当する部署の構築等が考えられる。」(18P)「取締役(会)が決定したサイバーセキュリティ体制が、当該会社の規模や業務内容に鑑みて適切でなかったため、会社が保有する情報が漏えい、改ざん又は滅失(消失)若しくは毀損(破壊)(以下本項において「漏えい等」という。)されたことにより会社に損害が生じた場合、体制の決定に関与した取締役は、会社に対して、任務懈怠(けたい)に基づく損害賠償責任(会社法第423 条第1 項)を問われ得る。また、決定されたサイバーセキュリティ体制自体は適切なものであったとしても、その体制が実際には定められたとおりに運用されておらず、取締役(・監査役)がそれを知り、又は注意すれば知ることができたにも関わらず、長期間放置しているような場合も同様である。」(20P)などの指摘があり、標準的な見解を理解する上では有益であると言えます。
 今後、様々な質問や事例が積み重ねられ、議論がより深化していくことが期待されるところです。

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