2020-02

2020年02月22日

裁判に関するデジタルトランスフォーメーション(DX)

 現在、裁判手続等のIT化検討会(首相官邸)において、訴状等のオンライン提出やWeb会議等の導入・拡大について議論されているところであるが(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/saiban/index.html)、未だに訴状が被告に送達できない場合、呼出状を裁判所の廊下(掲示場)に張り出して「公示送達」(民事訴訟法111条)を行うなど時代錯誤も甚だしく、これまで実際の裁判手続の遅延や非効率性(実効性の欠如)を生じさせている原因(ボトルネック)についての社会的・経済的な分析などが全く無く、明らかに国民(利用者)目線が欠落していると言わざるを得ない。さらに、2020年2月19日付けの日経新聞によると、戦後の憲法裁判の記録が多数廃棄されていた問題に関連し、東京地裁は、最高裁の判例集に載ったり、主要日刊紙2紙以上に判決などの記事が掲載されたりした裁判の記録を永久保存の対象とするという民事裁判記録保存に関する運用要領を新たに作成し、2月19日に公表したというが、本日現在、裁判所のウェブサイト(http://www.courts.go.jp/)にも、東京地裁のウェブサイト(http://www.courts.go.jp/tokyo/)にも、その内容は未だアップロードされておらず、そもそも、判決書が各裁判官のパソコンによって作成されデータがすべて残っていることや日々積み重ねられている裁判例のデータベースとしての貴重な価値を考えると、法律実務家や研究者視線のみならず、デジタルトランスフォーメーション(DX)やAI技術に関する理解、あるいは国民経済的視点も明らかに欠落していると言わざるを得ない。日本において、このような傾向は司法の場に限ったことではないが、米国、北欧、エストニアなど海外の実例をも参考にし、一般市民、若い法曹、若い研究者、IT技術者等の意見も大いに取り入れて行くべきである。

Category: Author: 近藤 剛史

2020年02月16日

勝利への執念と洞察力(野村克也氏からの学び)

先日(2020年2月11日)、南海、ヤクルト、阪神の監督であった野村克也氏が84歳で亡くなられました。さきほど(2月16日)NHKにて「野村克也さんをしのんで~名捕手・名監督の人生哲学」という番組を観て、とても懐かしく思いました。
弁護士も、常に厳しい勝負の世界に身を置いているため、野村氏の勝負の世界での経験や洞察力などを学ぶため、数多くの著書を読み、数限りない知的な刺激(教え)を受けてきた者として、本当に残念でなりません。昨秋も「超二流 天才に勝つ一芸の極め方」(ポプラ新書 2019年8月7日刊行)という本を読んで、「『勝てる場所』を見つけることが活路を開くのだ。」「人生、最大の悪は鈍感だ。」「人間の目というのは厄介なもので、どうしても他人の欠点ばかりが見えてしまう。」などの言葉に感銘を受けていたところでした。
野村氏は禅宗からも多くのことを学んできたと言いますが、その中に「意識が変われば、考え方が変わる。考え方が変われば、取り組み方が変わる。取り組み方が変われば、自ずと結果が変わる。」という至言があり、私が大切にしている言葉の一つであることから、毎年学生にも紹介しているものですが、すべては心の持ちようであり、何よりも勝利に対する執念や仕事に対する情熱が何よりも大切であると理解し、日々実践しているところです。

Category: Author: 近藤 剛史

2020年02月11日

新型コロナウィルスと不可抗力(Force Majeure)条項

 国内取引か、国際取引かを問わず、一般的な企業間取引契約書においては、天災(act of God)、火災(fire)、地震(earthquake)、洪水(flood)などの甚大な自然事象が生じた場合には(ただし、政府の行為、法律の改廃、テロ、戦争等の人為的な第三者による所為の場合も規定されていることも多い)、そのことを原因とする履行遅滞や履行不能について、当該債務の債務者がその遅滞ないし不履行責任を負わなくてもよいとあらかじめ規定しておく不可抗力(Force Majeure)条項が置かれているのが通常です。
 2020年2月11日の日経新聞の報道によると、新型コロナウイルスによる肺炎のまん延を受けて、中国国際貿易促進委員会は、不可抗力に当たる事実が発生したことを示す証明書の発行を始めたということであり、今後、当該債務の遅滞ないし不履行につき、その契約書の規定振りにもよりますが、「不可抗力」によるものと言えるのかどうかが、契約当事者間において法的に問題となりそうです。
 我が国の現行民法においては、故意又は過失により債務を遅滞ないし不履行となった場合には債務不履行責任を負うとされていますが、当該債務の債務者に「過失」があると言えるかどうか、つまり、予見可能性があり、かつ結果回避可能性があったかどうかということが問われることになりますが、それとほぼ同様の観点から「不可抗力」によるものと言えるかどうかが検討されることになりそうです。当該債務の遅滞ないし不履行につき、その時期、場所(地域)、債務の内容、影響を受けた状況、代替手段の有無、インフラの回復状況等諸般の事情が考慮されることになりそうですが、現在の未だ収束を見ない深刻な状況を見る限り、「想像だにできなかったものであり、どうすることもできなかった」と言える場合が多く、「不可抗力」によるものとみなさざるを得ない場合が多いのではないかと推測されます。

Category: Author: 近藤 剛史

2020年02月07日

「面」としての不正アクセス防御

 2020年2月6日、防衛省は、㈱神戸製鋼所と㈱パスコ(空間情報の収集と処理技術を提供している会社)が不正アクセスを受けていたことと、両社の保有する防衛情報が狙われた可能性があるが、流出した恐れがある情報の中に同省が指定した秘密などは含まれていなかったと公表した。
 先日新聞報道された三菱電機㈱と日本電気㈱(NEC)と合わせると、防衛関連企業の4社が狙われていたことになる。これらの不正アクセス事件は、まさに「点」ではなく、「線」あるいは「面」として捉えられるべきであり、防御する側においても、企業が単体で防御するのではなく、「面」としての防御態勢を直ちに整える必要がある。そのためには、上記4社以外の企業も加えた上で、不正アクセス攻撃に関する自主・自発的な情報開示を行っていくとともに、オリンピック・イヤーにあたるわが国における不正アクセス状況についての認識を共有した上で、どこかの一社が「踏み台」や「奴隷サーバー」に仕立て上げられることがないよう、日本企業全体として総合的な対策を連携して取っていくことが不可欠である。

Category: Author: 近藤 剛史
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