2020-07

2020年07月28日

ツイッター上のリツイート責任(最高裁令和2年7月21日判決)

 ある写真家が撮影したスズランの写真(ウェブサイト上の画像)に関するツイッター上のリツイート行為に関し、最高裁は、令和2年7月21日、下記のように一般ユーザーにとってかなり厳しいと思える判断を示した(平成30年(受)第1412号 発信者情報開示請求事件)。
 「ツイッター上の各アカウントにおいて,ツイートのリツイート(第三者のツイートを紹介ないし引用する,ツイッター上の再投稿)がされ, これにより,不特定の者が閲覧できる本件各アカウントの各タイムライン(個々のツイートが時系列順に表示されるページ)に,それぞれ「本件各表示画像」が本件各リツイート記事の一部として表示されるようになった。本件各表示画像は,本件元画像の上部及び下部がトリミング(一部切除)された形となっており,そのため,本件氏名表示部分が表示されなくなっている。」「ツイッターのシステムにおいては,リンク先の画像の表示の仕方に関するHTML等の指定により,リンク先の元の画像とは縦横の大きさが異なる画像やトリミングされた画像が表示されることがあるところ,本件においても,これにより,本件各表示画像は,トリミングされた形で上記端末の画面上に表示され,本件氏名表示部分が表示されなくなったものである。」「本件各リツイート記事中の本件各表示画像をクリックすれば,本件氏名表示部分がある本件元画像を見ることができるとしても,本件各表示画像が表示されているウェブページとは別個のウェブページに本件氏名表示部分があるというにとどまり,本件各ウェブページを閲覧するユーザーは,本件各表示画像をクリックしない限り,著作者名の表示を目にすることはない。また,同ユーザーが本件各表示画像を通常クリックするといえるような事情もうかがわれない。そうすると,本件各リツイート記事中の本件各表示画像をクリックすれば,本件氏名表示部分がある本件元画像を見ることができるということをもって,本件各リツイート者が著作者名を表示したことになるものではないというべきである。」「以上によれば,本件各リツイートによる本件氏名表示権の侵害について,本件各リツイート者は,プロバイダ責任制限法4条1項の「侵害情報の発信者」に該当し,かつ,同項1号の「侵害情報の流通によって」被上告人の権利を侵害したものというべきである。」

 つまり、著作権法第19条に規定する氏名表示権を侵害したかどうかにつき、ツイッター社のシステム・仕様にかかわらず、そのリツイート行為者の単純な操作行為が氏名表示権の侵害となり、その画面表示結果として権利侵害が認められる以上、ツイッター社は、プロバイダ責任制限法に基づき、そのリツイートを行った情報発信者に関する氏名、住所等を開示する責任があると判断したものである。

 

<参照条文>
著作権法第19条(氏名表示権)
 著作者は、その著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有する。その著作物を原著作物とする二次的著作物の公衆への提供又は提示に際しての原著作物の著作者名の表示についても、同様とする。
2 著作物を利用する者は、その著作者の別段の意思表示がない限り、その著作物につきすでに著作者が表示しているところに従つて著作者名を表示することができる。
3 著作者名の表示は、著作物の利用の目的及び態様に照らし著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるときは、公正な慣行に反しない限り、省略することができる。

 

 なお,林景一裁判官による「私は,多数意見と異なり,本件各リツイート者が本件各リツイートによって本件氏名表示権を侵害したとはいえず,原判決のうち本件各リツイート者に係る発信者情報開示請求を認容した部分を破棄すべきであると考える。」「本件各リツイート者は,著作者人格権侵害をした主体であるとは評価することができないと考える。」という(いわば最高裁法理である規範的責任論(カラオケ法理)の応用論とも思える)反対意見が付されており、外形的・形式的な行為を行ったに過ぎないリツイート者の法的責任を厳しく問うべきではないとした価値判断は考慮に値する。

 

 ただ、ツイッター上のリツイート行為に関しては、元大阪府知事がジャーナリストによって他人による名誉毀損記事につきリツイートを行ったことの法的責任を求めた事件につき、「投稿内容に含まれる表現が人の客観的評価を低下させるかについて、相応の慎重さが求められる」としてその損害賠償責任を認めた大阪高裁判決(令和2年6月23日)もあり、(簡単、手軽に行えてしまう行為であるものの)いわば厳しい情報拡散責任が認められていると言えるものであり、今後、安易・軽率なリツイートについては十分な注意が必要であると言える。

Category: Author: 近藤 剛史

2020年07月07日

離婚の際に考慮すべき3つのポイント

 こんにちは、弁護士の前田です。

 この度、事務所内ブログにおいて、執筆を始めさせていただくことになりました。ご覧くださる皆様にとって、少しでも有益な情報を発信できればよいなと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、今回は、離婚の際に考慮すべき3つのポイントをお伝えいたします。

 離婚の際には様々な事柄が問題となりますが、主なものとして、①親権や面会交流等、未成年の子どもに関すること②養育費、婚姻費用に関すること③財産分与、慰謝料に関することの3つが挙げられます。

 

1.親権や面会交流等、未成年の子どもに関することについて

 親権については、父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならないと法律で規定されています(民法819条1項)。

 そして、夫婦間で、どちらを親権者とするかについて争いがあり、協議により親権者を定めることができない場合には、調停などの場で定めることになります。

 また、未成年の子どもに関して、面会交流についても度々問題となります。

 面会交流とは、離婚後又は別居中に、子どもを養育監護していない方の親が、子どもと面会等を行うことをいいます。

 面会交流には、監護親の協力が必要となるため、夫婦間の協議により自主的に実現することが望ましいのですが、自主的に実現しない場合には、家庭裁判所に対し、面会交流に関する家事調停や家事審判を申し立てることができます。

 

2.養育費、婚姻費用について

 養育費については、「子の監護に要する費用」として民法766条1項が夫婦の分担を定め、婚姻費用については、「婚姻から生ずる費用」として民法760条が父母の分担を定めています。

 そして、養育費及び婚姻費用は、いずれも「生活保持義務」、すなわち、自分の生活を保持するのと同程度の生活を被扶養者にも保持させる義務だと解されています。

 これらの金額について、夫婦間で合意ができない場合には、調停を申し立てるなどの方法をとることになります。

 養育費や婚姻費用を算定する際に基準となるのが、家庭裁判所の手続の中で使われている簡易算定表です。子どもの数、年齢構成ごとにまとめられた表を選択して、養育費を支払う義務のある親と、支払を受ける親の年収を当てはめることにより、相当な養育費や婚姻費用の額がわかるようになっています。

 算定表は、令和元年12月23日に更新版が公表され、現在はこちらの表(https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html)が使用されています。

 

3.財産分与、慰謝料について

 離婚に伴う財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に協力して形成した財産を離婚に際して分与することをいいます(民法768条、771条)。

 財産分与は、夫婦財産の清算としての性格の他に、離婚後の扶養としての性格、精神的苦痛に対する慰謝料としての性格を有しています。

 そして、離婚に伴う慰謝料とは、離婚によって精神的苦痛を被った者に対してなす金銭的賠償のことをいいます(民法710条)。

 先に述べたように、財産分与には慰謝料的性格もありますが、財産分与と慰謝料を別々に取り決めたり、請求することもできるとされています。

 財産分与及び慰謝料は、離婚時において重要な財産的取り決めであり、金額について当事者間で合意ができない場合には、調停を申し立てるなどの方法をとることになります。

 

 このように、離婚に際しては大きく分けて上記の3つが問題となり、それぞれについて考慮する必要があります。

 今後は、これらの問題について更に掘り下げてお伝えしていこうと思います。

 

 弊所では離婚や男女問題についてのご相談も受け付けておりますので、お悩みの方は、是非お気軽にご相談ください。

 

Category: Author: 前田彩
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