2020年3月1日

音楽教室・JASRAC訴訟

 音楽教室を運営する多数の事業者が原告となり、日本音楽著作権協会(JASRAC)を被告とし、音楽教室から著作権使用料を徴収すると決めたのは不当であるとしてJASRACに徴収権限がないことの確認を求める訴訟が提起され、事業者が著作権者の有する演奏権を侵害しているかどうかが争点となってきたようであるが、2020年2月28日、東京地裁は、音楽教室は継続的・組織的にレッスンを行っており生徒数は多いこと、申込を行えば誰でも受講できることから「生徒は不特定多数の『公衆』に当たる」とし、また技術向上のため教師が生徒に演奏を聞かせることは「聞かせることを目的とした演奏に当たる」として、著作権使用料を徴収できるとの判決を下したとの新聞報道があった。
 著作権法第1条は、「著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。」としており、当然、市民側(音楽教室、教師、生徒等)の公正な利用についても十分な配慮がなされるべきであるし、営利を目的としない演奏についての規定(38条)もあることから、音楽の利用に関し、どのような社会的・経済的分析や主張がなされてきたのか、音楽に関する公共財的性質や経済的外部性などについても興味があるところであるが、このような市民生活に最も身近である「音楽」に関する裁判例についても、すぐに判決文の詳細が裁判所のウェブサイトを通じて市民側に公開されない状況は全く変っていない。
 音楽の利用についても、裁判情報の利用についても、やはりユーザー・オリエンテッドな視点・視座が不可欠であると言える。

<参考条文>
著作権法第2条5項
 この法律にいう「公衆」には、特定かつ多数の者を含むものとする。

著作権法第22条(上演権及び演奏権)
 著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。

著作権法第38条(営利を目的としない上演等)
 公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金(いずれの名義をもつてするかを問わず、著作物の提供又は提示につき受ける対価をいう。以下この条において同じ。)を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。ただし、当該上演、演奏、上映又は口述について実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われる場合は、この限りでない。

Category: Author: 近藤 剛史
近藤総合法律事務所
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