2020年1月21日

不正アクセスに対する企業・政府の対応

  2020年1月20日付け朝日新聞朝刊のトップ記事によると、三菱電機株式会社が第三者による不正アクセスを受け、機密情報が外部に流出した可能性があるという。そして、同社の社内調査によると、不審な動きに最初に気づいたのは2019年6月28日であり、不正アクセスの形跡は取引先に関する幅広い情報でも見つかっており、防衛省や環境省など10を超える官公庁・政府機関だけでなく、電力や通信、JR、自動車などの大手を中心に少なくとも数十社の民間企業の情報が含まれていたという。
 これは、いわゆる個人情報の漏洩事件に留まらず、わが国有数の先端技術企業が保有する極めて重要な機密情報(営業秘密)に関するものであり、さらには、わが国の安全保障にも関する極めて重大な問題であり、同社は、同日付でようやく「不正アクセスによる個人情報と企業機密の流出可能性について」というプレスリリースを発表しているが、これまで約6ヶ月間何らの自主的な公表等を行って来なかったものであり、隠蔽していたとの批判を受けてもやむを得ない、根本的な企業体質(企業カルチャ)そのものも問われるべき由々しき問題である(内部通報制度も正常に機能していなかったものと思われる)。
 他方、政府も、同日、菅義偉官房長官が同社が大規模なサイバー攻撃を受けていたことを認め、「防衛装備品や電力関係などの機微情報の流出がないという報告を受けている」「政府としても、経済産業省、NISC(内閣サイバーセキュリティセンター)を中心に引き続き注視をしていきたい」と述べているが、果たして、機微情報の流出がないとどうして断言できるのか、むやみに国民の不安を煽るべきではないという意図は理解できるものの、いわゆるハッカー達は侵入した痕跡を可能な限り消去し、その不正に得た情報を用いて暗黙裡・水面下で行動するのが通常であり、すべてのID・パスワードの変更のみならず、セキュリティプログラムの書き換え、新たな防御システムの構築を図るとともに、情報が漏洩していた可能性があることを前提にした有事の行動すべきことは当然のことであり、場合によっては危険に晒される人物や企業がないとは断言できず、このような企業及び政府におけるぬるま湯的な対応に危惧感を持たざるを得ない。
 現在必要なことは、情報漏洩が発生してしまっていること(最悪の事態)を想定した迅速かつ万全な危機対応と危機意識の向上、そして将来的にはこのようなぬるま湯体質からの脱却のための体質改善である。

Category: Author: 近藤 剛史
近藤総合法律事務所
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