【損害論に関する判例】
・東京リーガルマインドソフトウェア複製事件(東京地判平成13年5月16日、判時1749号19頁)
司法試験予備校が、ソフトウェアの違法インストールを行っていた事件につき、東京地裁は、侵害行為によって得た被告の利益額について、「無許諾複製したプログラムの数に正規品1個当たりの小売価格(価格は弁論の全趣旨により認める。)を乗じた額であると解するのが相当である」とし、原告らの受けた損害額は、「被告の得た前記利益額と同額であると推定されるべきである。また、原告らの受けた損害額を許諾料相当額により算定すべきであるとした場合も、許諾料相当額はこれと同額であると解するのが相当である」と判示した。また、被告の違法複製品を全て正規品に置き換え、正規品を購入することによって許諾料全額を支払ったから、原告らの損害は生じていないとの主張に対しては「被告の原告らに対する著作権侵害行為(不法行為)は、被告が本件プログラムをインストールして複製したことによって成立し、これにより上記著作権侵害行為によって、原告らに与えた損害を賠償すべき義務を負う。原告らの受けた損害額は、被告が本件プログラムを違法に複製した時点において、既に確定しているとみるのが相当である。」と判示した。
・ヘルプデスク事件(大阪地判平成15年10月23日)
パソコンスクールが、ソフトウェアの違法インストールを行っていた事件であるが、大阪地裁は、「「受けるべき金銭の額に相当する額」は、侵害行為の対象となった著作物の性質、内容、価値、取引の実情のほか、侵害行為の性質、内容、侵害行為によって侵害者が得た利益、当事者の関係その他の訴訟当事者間の具体的な事情をも参酌して認定すべきものと解される。そして、本件に現れたこれらの事情を勘案すると、本件においては、原告らが請求できる「受けるべき金銭の額に相当する額」は、本件プログラムの正規品購入価格(標準小売価格)と同額であると認めるのが相当である」と判示した。