【複製権に関する判例】
・スターデジオ事件(東京地判平成12年5月16日、判時1741号128頁)
デジタル衛星放送を利用して音楽を配信することは、レコード製作者が有する複製権等を侵害するか争われた事件であるが、東京地裁は、受信チューナーのRAMにおけるデータ等の蓄積が「複製」に該当するかどうかにつき、著作権法上の「複製」、すなわち「有形的な再製」に当たるというためには、将来反復して使用される可能性のある形態の再製物を作成するものであることが必要であると解すべきところ、RAMにおけるデータ等の蓄積は、一時的・過渡的な性質を有するものであるから、RAM上の蓄積物が将来反復して使用される可能性のある形態の再製物といえないことは、社会通念に照らして明らかというべきであり、したがって、RAMにおけるデータ等の蓄積は、著作権法上の「複製」には当たらないと判示した。
・宣伝カタログ事件(東京高裁平成14年2月18日、判時1786号136頁)
インテリアの広告宣伝用カタログに、たまたま床の間の掛け軸の「書」が写っており、そのことが「書」を複製したかどうかについて争われた事件であるが、東京高裁は、「限定された範囲での再現しかされていない本件各カタログ中の本件各作品部分を一般人が通常の注意力をもって見た場合に、これを通じて、本件各作品が本来有していると考えられる線の美しさと微妙さ、運筆の緩急と抑揚、墨色の冴えと変化、筆の勢いといった美的要素を直接感得することは困難であるといわざるを得ない」とし、「本件各作品の書の著作物としての本質的な特徴、すなわち思想、感情の創作的な表現部分が再現されているということはできず、本件各カタログに本件各作品が写された写真を掲載した被控訴人らの行為が、本件各作品の複製に当たるとはいえない」と判示したものである。